氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 今回の旅には、マッドは勿論、暫くお世話になった、マッドと同じく中身が女性の傭兵達と、その裏の顔を知る仲間の傭兵達も加わった。

 本来エヴァンス家の使用人は、侍女でも護衛スキルを持つ者もいるし、クルルフォーン家の使用人と違い、殆どが武術の心得がある者達だが、前回、行きたくても行けなかった傭兵の彼女達を連れ出すなら、その傭兵仲間も護衛に加えれば問題無いのでは無いか?とエドワルドがマッドに聞いてみた所、大所帯になるわよぅ?と言われたので、それなら、二つに分けて片方は帰ってくるまでの王都の二家の警備、もう片方は、エヴァンス領への往復護衛に回せばどうだと言われて、それなら多分、大丈夫かしら?と了承を貰えたのでマッドに話を通して貰い、雇う事にしたのだ。

 それと言うのも、前回のエヴァンス領訪問時に、居残った彼女達が、随分と気落ちした様子だったので、来たがっていたから残念ねと、リラが気に掛けていたからだ。

 帰った後も、いつもの女子会でエヴァンス領の話題が出ていた為、リラが何気無い会話で話していた事を、エドワルドが確り記憶していたのだ。

 因みに、エヴァンス領の本宅の近くに有る街は、マッドの内情を知り、リラとも懇意にしている為、街の住人達は、マッドが女言葉を使おうと、全く気にしないまでになっている。

 その上普通に接してくれる人が多いので、女性用の服や化粧品、下着屋すらも、マッド用の大きいサイズを取り入れ、見て行かないかと声を掛ける人もいる程だ。

 そして、マッドがその店に同行出来た彼女達を連れて訪れ、自分と同じ子達なのと紹介をしたので、彼女達も普通に店で女物を買う事が出来、感動していたのだ。

 とは言え、女性を油断させる為に装ってるだけで、嘘だと言う可能性も無い訳では無いので、見知らぬ者達が買い求めて来た場合に限り、念の為エヴァンス家に報告が入るようになっている。


「エヴァンス領のあの街は、皆が皆、偏見を持たない訳じゃないけど、あたし達みたいな者でも客として、女物を売ってくれるから、とっても嬉しいのよねぇ♪」


 マッドは大体リラと共に移動する事が多いので、仕事は王都とエヴァンス領が中心だ。

 その為、エヴァンス領の街の住人にも顔を覚えられているし、仕事が無い時は自警団に顔を出し、教師役として雇って貰うのだ。

 勿論、街にいる時点で、余所者が悪さをすれば、捕縛の手伝いもするし、腕が良い事も知られているので、邪険に扱う住人は少ない。

 マッドはリラがコミュ障になり、暫くしてからの知り合いなので、十年以上の付き合いが有るから、尚更信用される理由の一つになるのだろう。
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