氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 ライラがマッドの所で働き出して数日後の昼、マッドは先約が有るからと、娼館を後にする。

 今日はリラの所でお茶会に呼ばれてる日だ。

 クルルフォーン邸にも、マッドのドレスを置かせて貰える事になっているが、クレアが飾りを付けてくれたりするので、時折エヴァンス邸の方に運ばれていたりするのだ。

 そして、下町からは、エヴァンス邸の方が近い為、新しく飾り付けされたドレスを早く見たいマッドは、エヴァンス邸に行って受け取り、それを自分で運ぶ事にしているのだ。

 そして、一ヶ月程前の出来事だが、たまたまその日に、貴族区画内で珍しく騒いでいたので、野次馬根性で現場に赴いてみると、仕立て屋の青年が貴族女性に、リラのウエディングドレスと同じような物を、と言う無茶振りをされていたので、その青年に手助けして逃げたのだ。

 勿論その後、クルルフォーン邸に向かったマッドは、その話をお茶会で話し、リラだけでなく、アナスタシアまで呆れたようだ。

 それも当然だろう。

 リラのウエディングドレスは、リラをよく知る者が、リラの為に作った渾身の傑作。

 他が真似して作った所で、リラより似合う筈も無い。

 しかも背格好や体形がこれっぽっちも似ていないのだから。


「クレアちゃんが時間を掛けて、リラちゃんだけが一番似合うドレスとして作ったのに、他が真似して作ったってぇ、似合う訳無いじゃない。同じ背格好や体形の娘が着た所で、リラちゃんが一番似合う物になってるんだものぉ」


 そんな事をマッドが言えば、アナスタシアも、当然だとばかりに頷いた。

 そして、クルルフォーンの名前も出してしまったので、公爵様が帰って来たら、一応、報告しといて欲しいのよと、帰り際にサイナスに伝えて置くと、次のお茶会日に、珍しくエドワルドもいて、場所と話を詳しく聞かれ、マッドが知る限りを伝えれば、エドワルドは黒い笑顔でお礼を言い、屋敷内に引っ込んだ。

 どうもその後、王宮主催の茶会で、アナスタシアに挨拶に来たと、エドワルドがジーンと共に顔を出し、本人が近くにいるのを知りながら、その話をアナスタシアとジーンに、話題として提供し、平民にそのような無理難題を持ち掛けるなんて最悪な女性だな。そもそも、あのドレスを私の可愛い妻以外が、妻以上に似合う訳が無い。それすらも解らないなんて、センスが疑われても仕方が無い事だろうと、参加者全員に聴こえるよう、話していたそうだ。

 しかも、王妃であるアナスタシアも同意し、流行る物と流行らない物の区別も付かないなんて、振り回される平民が可哀想だとジーンまで言うのだから、本人以外にも心当たりの有る女性は顔色を悪くしていたらしい。

 そんな会話をした後で、せめて、そんな無理難題を言い出した者には、それ相応の詫びを仕立て屋にさせなければ、貴族として恥ですねとまで言ったそうだ。

(さすが公爵様よねぇ、やる事に抜かりが無いわぁ~)

 その話をアナスタシアから聞いたマッドは、自分はエドワルド側の人間で良かったと、つくづく思ったのだった。
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