氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 クルルフォーン邸に続く道に差し掛かる寸前で、後ろから気配が近付き、声を掛けられる。


「あっ、あのっ!この前の方ですよね?!」


 マッドが振り向けば、そこにいたのは一ヶ月程前に、マッドが助けた、仕立て屋の青年だった。


「ああ、あの時の仕立て屋の青年」


 マッドとしては、何故ここにあの時の青年が?と内心首を傾げるが、マッドの言葉に青年は嬉しそうに微笑む。


「会えて良かったです。どうしても、この前のお礼が言いたかったので……」


(あらぁん♪可愛い事言ってくれるじゃなぁい♪ただ、それが本心なのかどうか、ちょっと掴めないけれどぉ~)

 マッドがそう思うのも無理は無い。

 何せマッドは前回、クルルフォーン公爵の名を出したのだから。

 クルルフォーン家との繋がりが得られるのなら、それこそ藁にでもすがりたくなる筈だ。

 クルルフォーン家は公爵であり、現国王の弟だ。

 繋がりを持てれば強力な後ろ楯になるし、王族御用達になれると言う事だって、夢ではない。

 マッドが口利きすれば、リラは構わないと言う可能性も高いが、何分相手は男だ。エドワルドが良い顔をする筈もないし、下着姿のリラを晒すなんて、あの公爵が許す筈もないだろう。

 周囲に人の気配が無い事を確認して、マッドは本来の口調に戻す。


「あー……。悪いけど、最初に言って置くわ。クルルフォーン家に口利きは出来ないと思うの。あそこは専属の仕立て屋がいるし、何より男の仕立て屋を、奥方に近寄らせる気はこれっぽっちも無いと思うからぁ」


 マッドの勘違いに、青年は慌てて首を振る。


「いえ、確かにクルルフォーン家とお近付きになれるのは、とても魅力的では有りますが、私は恩人である貴女にお礼を言いたかったのです。前は碌なお礼も、お名前すら聞く事が出来ませんでしたので、とても後悔してました。私はコラン。宜しければ、お名前をお聞きしても良いでしょうか?」

「あたしはマッドよ。貴方も随分義理堅いのねぇ。ああ、一応確認したいんだけど、あの貴族女性から、詫び状とか届かなかった?」


 青年は驚いた顔をして、マッドに聞く。


「どうして、それをご存知なんですか?確かにあの令嬢から詫び状が届き、あんな無茶は言わないから、新たに似合う物をと言われましたが……まさか……」

「公爵の名前を使っちゃったから、一応執事に報告しといたら、公爵様から詳しい話をと言われて、見たまんまを報告したら、王宮主催のお茶会で王妃様と組んで、彼女の前で、話題に出して、流行る物と流行らない物の区別も付かないなんてとか、個人で似合う物が万人受けする物とは限らないのにとか、色々言ってくれたそうよ?だから、貴方以外にも無茶振りされた仕立て屋とかはホッとしたんじゃないかしら?しかも、そんな無理難題を言い出した者には、それ相応の詫びを仕立て屋にしないと、貴族の恥とまで言ってくれたそうよぉ」


 マッドは口に手を当ててニンマリと笑った。
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