氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
586 / 805
後日談

2

しおりを挟む
 女傭兵が声を上げようとした際、女傭兵の後方からこちらへと向かって来る、見知った男と目が合い、声を掛けられた。


「ダン?久し振りじゃないか!」

「お前もな」

「何だ?別嬪さん抱え込んで。傭兵仲間か?……ってまさかお前、またダンに粉掛けてんじゃ無いだろな?」


 ダンの険悪な雰囲気に、男が女傭兵を一瞥する。


「選りにも選って、この女が俺の嫁を捕まえて、素人娼婦だと抜かした挙げ句、邪魔だとまで言いやがったんでな」

「嫁?!ダン、お前、結婚したのか?!」

「驚くのも無理はねぇが、ちゃんと結婚してんぞ。俺が心底惚れ込んだ相手だ。間違っても絶対に手ぇ出すんじゃねぇぞ」

「出さない出さない!!」


 ダンは、敵意剥き出しのままで男に忠告すると、男はダンの恐ろしさを理解しているのだろう、即座に返答していた。


「ってか、お前もダンに喧嘩売ってんじゃねぇよ!最初からダンはお前に見向きもしてやしねぇだろうが!何回言えば解るんだ?ダンを怒らすな!今まででスルーしてくれてたのは、こっちの顔を立てる為で、お前の為じゃねぇよ。そもそも、ダンが興味の無い女に手出しするタイプじゃねぇってのは、見てりゃ解んだろ。次問題起こしたら、ウチの団から追放するって言われてただろ!」


 ダンに敵意を向けられた男は、女傭兵を睨み付け、叱り付けると女傭兵は反論する。

「団内では問題起こして無いじゃない!それに、ダンが所帯を持つなんて誰が思うのよ!それに、久し振りに見たから声を掛けたのに、あたしを尻軽だの好き者だの、ダンだって、言いたい放題に言ったのよ!失礼にも程があるわ!」


 その言葉に、ダンはハッキリ言い切ってやる。


「事実だろうが。そもそも初対面で、俺の嫁を貶したのはお前だろが」

「知らなかったし、明らかにダンを引っ張ってたからよ!」

「謝罪すら無く、知らなかったで済むと思ってんのか?そもそも俺が嫌なら、自分で振りほどけるっつうの。実際お前がすり寄って来たりした時は、悉く振りほどいてただろが」


 ダンにとって嫌いなタイプの彼女に、優しくする気は無いし、構う気も無いのだから、当然だろう。


「謝罪ですって?!あたしの方が酷い事を言われたのに、そっちが謝りなさいよ!」

「まだ立場が解ってねぇようだな?喧嘩売って来やがったのはてめぇの方だろうが。俺ぁ現在、貴族の下で働いてんだ。それも上位貴族のな。この国で貴族を敵に回して、仕事が出来ると思うなよ?」

「選りにも選って……。悪かったな。こいつは後々団で処罰する。行くぞ!」

「ちょっ?!何であたしが処罰されなきゃなんないのよ!」

「煩い!!ダン相手に喧嘩なんぞ吹っ掛けやがって!団内で問題起こすより、よっぽど質が悪いわ!」


 男は女傭兵を連れて、団に戻っていった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...