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後日談

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「興味のねぇ相手に勘違いさせるよりかは良いかと思ってたんだよ。そんな中、俺にとって、ライだけは特別だったってだけだ。だから、必要以上に仲良くしようとすんなよ?」


 マッドは笑顔で威圧を掛ける。


「僕はマッドさん一筋ですから、マッドさんから離れたりしませんよ。それに、他の男になんて、興味も湧きませんから。それより、ダンさんだけでなく、マッドさんにも言い寄っていた身体が軽い女はどこですか?」

「身体が軽い?」

「ああ、済みません。この国の貴族の言い回しで、マッドさんの言う、馬鹿女と同じ意味合いです。僕は元貴族の一員だったので」

「きっ……貴族……」


 因みに、身体が軽いと言うのは、頭も口も尻も軽いと言った意味で、性にだらしの無い男女を指している。


「あくまで『元』と言うだけですので、お気になさらず。今は平民で、マッドさんの伴侶ですから。それで、会わせて頂けますよね?人の伴侶に言い寄ろうとした迷惑な女に。でないと、マッドさん共々、態々ここまで足を運んだ意味が有りませんから」


 売られた喧嘩は買うとばかりに、ライラは作り笑顔を浮かべてキッパリと言い切り、女傭兵との面会を願い出る。

 元は貴族と言うだけあって、拒否出来るような雰囲気は無い。


「勿論、お会いになって結構です。ただし、不快な言葉を言い散らかすと思うので、そこはご理解の程を宜しくお願いします」

「ええ。こちらと連帯責任だなんて言いませんから安心して下さい」


 ライラの言葉に一先ずホッとし、マッドを促し部屋に向かう団長。


「マッド、お前の嫁さん凄いな。尻に敷かれてんじゃねぇか?」


 団長がこっそりとマッドに言うが、マッドは平然と返答する。


「格好良いだろう。俺ぁライの尻になら、喜んで敷かれてやらぁな。俺自身、ライの全てに心底惚れてるんでな」

「まさか、マッドの口からそんな言葉が聞けるとはな……。幸せそうで何よりだ」

「当然だ。そうでなきゃ、結婚したいと思ってねぇよ」

「ははっ、そりゃあそうか。取り敢えず、おめでとうと言って置く。あの馬鹿女が、迷惑掛けて済まん。ダンにも俺が謝って居たと、伝えといてくれ」

「本当になぁ。既に振られてるってのに、しつこ過ぎんだよ。ダンや俺なんぞ構ってる暇が有るんなら、余所にいきゃあ良かったんだよ」


 そんな事を喋っていると、一室の前で、女傭兵を見張って居るのだろう男と出会した。


「マッドじゃないか!お前もこの国に居たのか?!」


 マッドは何度目かになる挨拶を、また繰り返すのだった。
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