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後日談

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 晩餐は、時折会話の合間を見計らい、仕事の話や報告が入るが、そんな会話にすらも、アシュリーは目を輝かせているので、ジーンはアシュリーに意見を聞いたり、話を振ったりして、会話に参加させるものだから、最初は戸惑い吃驚していたが、自分の意見を素直に言えば、よく出来ましたとばかりに微笑んでくれる。

 しかもジーンはアシュリーの言葉を吟味して、それに対する助言や考えを教えてくれるので、勉強にもなるのだ。

 実母が死んだ後に気付いた、疑問に感じた仕事の疑問点も、ジーンに聞けば、解り易く説明してくれるので、色々と質問をしてしまうが、ジーンは嫌な顔一つ見せずに、丁寧に質問に答えてくれる為、嬉しくて仕方無い。

 アシュリーにとって、エヴァンス家の晩餐はとても楽しくて、沢山の話を聞いて貰える事に、心底喜びが込み上がって来たのだった。

 そして、アシュリーがエヴァンス家に来た翌日は、ジーンが休暇を取り、自ら屋敷内を案内してくれたのだ。

 それから数日が経ったある日、ジーンは妹のいる屋敷を訪ねると言い、翌日アシュリーに外出の準備をさせて、リラの住むクルルフォーン公爵邸へと向かう。

 アシュリーは、その屋敷の規模に心底驚く。

 因みにアシュリーは、クルルフォーン公爵、エドワルドが王弟だと言う事には気付いていない。

 王都で出回る貴族名鑑は、当主夫妻とその息子のみの肖像画で、娘は名前だけが記載されているが、とても値の張る物で、一家に一冊持つのが好ましいが、その値段故に、持てない家も多々有り、そういった家では、名前だけが記載された貴族名鑑を所有している事が多い。

 その為、王都勤めや王都に家が有る者で、肖像画入りの貴族名鑑を持たない者は、王立図書館で閲覧するか、王宮内に有る資料閲覧室や、王宮職の長の執務室等に、厳重に保管されている貴族名鑑を閲覧するのが基本だろう。

 王都に来る事の少ない辺境の領主や、家位の低い地方の貴族の場合は特に、名前だけが記載されている貴族名鑑を購入している。

 そんな訳で、アシュリーの家にも貴族名鑑は有るものの、名前だけが載っている物で、普通の本よりは値の張る物だが、名前だけの物でも、貴族として持っていない方が恥だと言われる貴族名鑑は、辺境だと数年から十数年に一度の頻度で買い替えるのだが、アシュリーが初めて見た貴族名鑑では、エドワルドがクルルフォーン公爵になった後ので、その前の王子時代の物は見ていなかった。

 その為、アシュリーはクルルフォーン公爵家を昔から有る公爵家と勘違いしているようだったが、卒倒されても困るので、エヴァンス家の者達は態々、アシュリーに訂正をしなかったようだ。

 そして、緊張しながらジーンの妹夫婦、クルルフォーン夫妻に会うのだが、ジーンの妹であるリラは、ジーンの髪と瞳の色合いが逆転した、ジーンと同様の美麗な美貌を持ち、その隣にいるクルルフォーン公爵は、その二人を上回る美貌の持ち主で、吃驚を通り越して、現実逃避をしたくなったが、何とか挨拶だけは済ませる事が出来たのだった。
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