氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
657 / 806
後日談

58

しおりを挟む
 ジーンが長い行列の中から、とある人物を遠くに見付けると、アシュリーにニッコリと微笑みを向ける。


「アーシュに会わせたい者が来てくれているようだ。陛下への挨拶が先だから、もう少し時間が掛かるだろうけど、楽しみにしていなさい」

「???どなたなのでしょうか?」

「それは会ってからのお楽しみ。まぁ、貴族なのに植物学者をしてると言う変わり者では有るけどね」

「植物学者、ですか???」


 ジーンは楽しみにしていなさいと言うが、アシュリーには何が何だか解らない。

 アシュリーはそれ程植物に詳しいと言う訳でも、詳しく調べたい訳でも無いからだ。


「ああ、彼と会うのは久し振りになるかな。彼は子供の頃に、エヴァンス領には植物学者その手の専門家達が平民の通う学校の教師をしていると聞いたらしく、学院を退学するからそっちの学校に通わせて下さいと言って来るわ、そこは貴族の通う所では無いからと断れば、それなら貴族を辞めますと言って来て、そのまま父親に離縁を迫り、困り果てた父親が私の所に来て、どうか息子を説得して下さいと泣き付いて来た事も有ったなぁ」


 ジルギリスの言葉に、アシュリーは吃驚するしか無い。

(平民の通う学校に通いたいからと、貴族を辞めようとした方がいらっしゃるなんて!!)

 普通、貴族になりたがる者は数多く居るが、その逆は殆どいない。

 それはそうだろう。

 平民の場合、生活の保証はその領主の考え方次第で左右されるし、一般的な平民は身の回りの事を全て自身で行い、人を雇う側では無く、人に雇われる側となるのだから。

 貴族が平民になるのは簡単だが、平民が貴族になるのはとても難しく、簡単に戻る事は出来ない。

 例外として唯一あるのは養子縁組ぐらいだろうが、貴族から平民になった者の大半は、何かしらの厄介事を抱えている為、殆どの貴族が縁組みをしたがらないのが普通だ。

 本来ならばアシュリーもそうなる筈だったが、あのジーンが、アシュリーを平民のままにして置く訳が無い。

 そんな事をすれば、他家がアシュリーを愛人として扱うのは目に見えているからだ。


「エヴァンス領の場合、完全実力主義だから、貴族でもたまにいるんだよ。虐げられた者や能力を正しく評価されない環境で育った者が、エヴァンス領は能力で評価されると聞き付け、雇ってくれと言い出す者達が。でも、他家の貴族を領内で住まわせて、今まで通り貴族として振る舞われても問題が起きるだけだから、貴族位を捨てる覚悟すら無い者に、平民の中で生活するなんて無理が有るから、貴族位を捨ててエヴァンス領に住まいを置くのは勿論、他の平民達と競い、その平民達よりも腕が上にならなければエヴァンス家では雇えない事を条件にする事が多いんだよ。そうまでしないとトラブルの元にしかならないだろうからねぇ」


 ジルギリスの説明に、アシュリーは王都に来る前にステラが言っていた、喩え若君が、結婚に乗り気なされなかった場合でも、エヴァンス領で預からせて頂きますと言っていた言葉を思い出し、その言葉の意味を理解した。
しおりを挟む
感想 2,443

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...