氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
661 / 805
後日談

エヴァンス領へのご挨拶 1

しおりを挟む
 アシュリーとの顔合わせと、年越しのパーティーに参加する為に、エヴァンス家の両親が隣国から一時帰国し、再び隣国へと出発するのを、クルルフォーン一家とセイル一家もエヴァンス邸に顔を出して見送った後、従兄のデュークがジーンに聞く。


「エヴァンス領には、いつ帰るつもりだ?」

「早い方が良いので、シーズンオフ中に帰ろうかなとは思っています」

「それならば一緒に帰ろう。騒がしくはなるだろうが、安全性は高いし、セイル家の家族との交流にもなるだろう」


 妊婦がいるとは言え、セイル家の血を引く男が二人とその配下の護衛も居るのだ。


「そうだそうだ!それが良い!何なら私が王都に戻る時に、護衛として王都まで送ろう。それならばアーシュちゃんの身の安全は、保証されたような物だからな」


 勿論口だけでは無く、事実では有る。


「ジーンが居れば、アーシュ一人を守るのに問題は無いだろうが、世の中には不測の事態と言うのが時折有るからな。過剰防衛だろうが、無いよりは良い。それに、アーシュはエレの良い話し相手になるだろうから、私としても男ばかりに囲まれているよりは安心だ」


 セイル家の護衛は脳筋の男だらけなので、エレーナが妊婦だと言う事をたまに忘れて、速度を速めようとしたりする為、デュークがエレーナの傍に居てやれない時が多々有るのだ。

 一応侍女も居るには居るのだが、元々エレーナはあまり人を傍に置きたがらない。

 その為、最低限の信用出来る者に限られているのだが、その侍女は、息子の世話に回る事も多い。

 安定期だから平気だとエレーナは言うが、デュークとしては、前回が初産で悪阻つわりも相当酷く、お産も難産に近かった事も有るので、一人で居られる方が怖いのだ。

 エヴァンス家から学んだ教訓は、念には念を。

 ジーンならば、デュークの言いたい事にも気付いてくれるだろう。

 そんな訳で、多少王都に居る期間が長引こうとも、エレーナを一人にしなくても済む、と言う安心を得る方が良いと思ったデュークは、産み月もまだ当分先だから、一月や二月ぐらいは待てるとまで言う。

 兄と慕うデュークの言葉を無下にする気は全く無いジーンは、エドワルドに、そう言う事になるから、暫くの間、王宮の方は宜しくと頼んで置いた。

(あの、数々の伝記を持つセイル家の皆様や、お綺麗なお義姉様との旅……。わたくし、失態せずに済むのでしょうか……)

 ジーンとの旅でも相当な緊張感を抱いたと言うのに、ジーン以外の美男美女が加わり、長時間を共にする事に、今から自身の失態を心配するアシュリーだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

処理中です...