氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

後日談

2

　ジェフは最初の数日、周囲にはいつも通り仕事をしなさいと言うだけ言って、他には何の指示も出さなかった。

　戸惑う他の使用人達をただ眺めるだけで、レオンには厳しく接する。

　早朝、日が昇る頃にレオンを起こし、着替えたレオンを近衛隊長に引き渡して、前国王陛下で有るマーウィンの居る訓練場へと送り出す。

　レオンがやらかした翌日から、レオンの一日のスケジュールが大きく変わり、近衛隊長かマーウィンが、その時間帯にレオンを迎えに来ていたので、ジェフが来る前には何とか慣れて来ていた頃だが、入って早々マウンティングを見せ付けたジェフの存在が気にならない訳が無い。

　そこで仕事中にも拘わらず、こっそり外部の者に連絡を取ろうとしたり、職場を離れたりとした者達は、潜入組のエヴァンス家の者達に逐一監視報告され、後に職務怠慢や職場放棄といった理由で、解雇処分や左遷にされるのだ。

　勿論、休憩時間や休日の行動に付いては今の所問題視しない。

　真面目に仕事をしている者達は、どこの者だろうと利用するのがエヴァンス流だ。

　当然そこで働いている者全ての素性はきっちりと調べられ、把握されてはいるのだが。

　そうして最初の数日以外は、レオンの世話をしながらも、細々とした雑務や指示を出していく。

　幸いと言うべきか時期的にも長期休暇中だったので、その間はレオンが早朝の訓練から戻って来ると、殆どレオンに付きっきりで、長期休暇が終わってレオンの学院寮に新たな従者としても入り、その上レオンが学院で過ごしている時間帯は、王宮のレオンの居住区に戻り、使用人達の指導や指示を行う。

　相手の得手不得手を見極め、得意分野に磨きを掛け、効率の良い仕事の仕方も助言する。

　口は悪いが頗る有能。その上指導は解り易い。

　仕事を増やされる事も有るが、頑張れば頑張った分、給金を加算するよう交渉してやると言われ、使用人達は俄然やる気が増していく。

　今まで、仕事は出来るがある程度上手く手を抜いていた者達も、精度やスピードが上がれば給金アップに繋がるので、手を抜く事無く仕事に励むようになっていった。

　その間にレオンを唆していた者達が、一人、また一人と網に掛かり、国賊として、罪人の流刑地が有る辺境の地へと送られる。

　年越しのパーティーで、リラとアナスタシアの仲の良さや、王命だと聞かされて、不安になったのだろうが、王太子に余計の事を吹き込んだり唆したりと、浅はかな行動をした時点でアウトだろう。

　噂話をしたぐらいで罰せられる事は殆ど無いが、冤罪に繋がるような虚偽ならば、罰せられても仕方無い。

　使用人達の中には、そんな彼等と繋がりの有る者も居るだろうが、使用人達がどちらを選ぶかは、その使用人達の行動次第、と言えよう。