氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

後日談

ジェフとレオン 1

　王太子のレオンが子供と呼べる学院生の頃、レオンの憧れの叔父に当たるエドワルドと婚約を結んだ、当時の侯爵令嬢だったリラに、とんでもない手紙を送り付けた為、リラを溺愛していた身内の一人、従兄のジェフがレオンの侍従として派遣された。

　勿論、レオンと周囲の見張りと再教育や、レオンの周囲に居る使用人達の指導監督者としてだ。

　ジェフはアレクシスがジルギリスに頼り、学院生時代の優秀者で、当時の王太子で有るアレクシスにも特別視せずに接したエヴァンス家の血縁者で有るジェフを、現王太子のレオンの従者として雇う事にしたとの決定を、レオンの居住区内の使用人達を集めて紹介した。

　時期を同じくして、王宮の違う部署に潜入していたエヴァンス家の使用人達を中心に、レオンの身近に居た侍従や侍女達を解雇する為の入れ替え要員として、王宮に勤める者達のリストの中から選び、アレクシスに人事異動を促し、その者達もその場に集つどっているが、誰がエヴァンス家の使用人かは知らせていないし、教える気は毛頭無い。

　アレクシスが把握しているエヴァンス家の使用人達も多少は居るだろうが、全てを把握する必要は無いからだ。

　そして、レオンがやらかした事に対する職務怠慢の責任を取らされ、解雇された者達は不運では有るものの、解雇で済まされただけなら幸いの事だろう。

　中にはその後、エヴァンス家の者達に依る見張りが付いている事にも気付かずに、王宮内の情報を売り、買い手の依頼主共々、罪人の流刑の地へと送られる者も居たのだから。


「国王陛下の依頼に依り、王太子レオン殿下の教育と、周囲の皆様の指導監督者して雇われたジェフ＝エヴァンスです。レオン殿下や皆様には、厳しい教育と指導を、との依頼を請けましたので、私の遣り方に少しでも文句の有る方々は、私を選んだ国王陛下にでも、直接直訴じきそして下さって結構ですよ」


　その場でジェフのブリザードが猛威を奮い、それを食らった一同が凍り付いたのは言うまでもない。

　因みに、その余波を食らったアレクシスはこう思った。さすがあのエヴァンス家の身内にして、ジルギリスの甥だ、と。

　当然国王陛下で有るアレクシスに文句を言えるような使用人は存在せず、レオンも自身がジェフの監視対象だと知っている為、文句も言えない。

　否、言える立場では無いと理解しているし、被害者側の身内で有るジェフに、冷たくされるのは当然の事だと、ここに連れて来られる前にジェフと対面していたレオンは充分に理解していた。

　そうしてレオンの、長く厳しい再教育生活が始まったのだった。