氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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「いっ……嫌よ!わたくしは病人じゃないわ!ヘンリー、貴方も否定なさい!!」


 病人では無いと否定するが、正気なら勿論処罰対象になるだろう。

 他領の街に出入りするだけなら未だしも、他領の領主邸に、訪問許可を貰う事無く押し入り、暴れた上にその邸の主の客にまで無礼な振る舞いをした挙げ句、国王陛下に対する不敬な言動となれば、当然見過ごす事は出来ない。

 しかも相手は謁見の手続き等をせずとも、陛下と直接話し合う事が出来る重職者。

 私的な場で親しき者同士と言った、酒の席での戯言とは違うのだ。


「愚かだな。精神を患った病人で無いなら、慰謝料を増額した上での牢屋行きだが、お前はそれを望むと言う事か。お前がここに乗り込まなければ、ウォール伯爵家は破産する事も反逆罪に問われる事も無く、国の重役を担う家から敵視される事も無かっただろうな。ウォール家が取れる選択手段は二つの内一つ。連座で家を潰すか、高位貴族を敵に回した病人を施設に入れるか。後者の場合、前伯爵は離縁するも良し、離縁せずに施設へと付き添うも良し。どちらを取っても構わないが、前伯爵は社交の場に出る事を認めない。精神を病んだ妻を野放しにする事自体が問題だからな。ああ、一つ言い忘れていた。お前の入る施設だが、お前にとって悪い事ばかりでは無い筈だ。何せお前が会いたがっている息子が時折仕事として入る場所らしいからな。精々親子の再会を楽しむが良い」


 現在マディソンは、犯罪者を収容する施設の中で、職員の雑用、大方書類の作成や整理と言った事務系の仕事や、隣接する病院、囚人の中でも手に負えない者達や、精神疾患で手の付けられない、要は家族に見放された者達の世話をする職員達の雑用や助手をさせられている。

 その中に、投薬された者達の途中経過を観察記録したり、被験者……元い、患者に投薬する際、押さえ付けたりする仕事も含まれている。

 勿論職員と言う立場では無く、平民落ちした罪人としてだが、ここの領主は使える者は罪人でも使えと言う主義なので、ある程度の能力が有れば、能力に応じた仕事が割り振られる。

 因みにサラは職員監視下で、清掃作業や繕い物、洗濯等を担当させられ、ダミアンは畑を耕したり、家畜の世話をさせられたりしている。

 当然ノルマが存在し、ノルマが終わるまで飯抜きにされたり、彼等の住まいで有る牢に戻れず、与えられた仕事を熟すまでは休息すら取らせて貰えなくなる上、罰が上乗せされる。

 しかも、そのノルマの配分は、必死にやれば何とか出来るギリギリの配分だ。

 罰はその時その時に依って変わるが、凶悪な他の囚人達や、職員達からのストレス発散の玩具として相手にさせられたり、怪我や投薬等で亡くなった遺体の解剖を含む、遺体の処理を手伝わされたりする事が多い。

 ただ、それに当て嵌まる性癖の持ち主の場合は、性癖とは真逆の仕事をさせられ、本来の性癖に当て嵌まる仕事を暫くお預けにされたりするが。

 そんな場所に送り込まれるとは考えてもいない前伯爵夫人は、他の領地でマディソンは、強制的な奉仕活動をさせられているのだろうかと勘違いをした。

 最悪がそれならそれで、悪くないと。

 実際は犯罪者がウジャウジャ居る病院で、薬品の掛け合わせで出る作用や副作用の薬の働きを調べる為の投薬、未知の新薬を試す為の実験台モルモットとしての数合わせ要員で、死のうが生きようが廃人になろうが、世の為他人の為の尊い犠牲と問題視されない施設で、表向きには精神異常者の治療院だが、そこに運ばれるのは罪人か、それに準ずる者。一度入れば二度と出られない、罪人達でも患者としては絶対に入りたくない場所だったのだ。

 当然ながら、他領の者達はそれを知らない。

 その実態を知るのはそこに運ばれた者達か、エヴァンス家と深い関わりを持つ一部の者達のみなのだから。
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