英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~フィルゼン領域~

休止状態からの目覚め

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 意識がゆっくり浮上する。僕の身体の下には、手触りの良いシーツ……?どこだここ?
 僕がゆっくり目を開くと、近くにある力場となった人が僕の目覚めを感知したのだろう、僕を労る声が掛けられる。

「災難でしたね、ラル。もう起きても大丈夫なのですか?」
「アル兄、おはよう。取り敢えず休止状態は脱したかな。ここは……本部?」
「ええ、ここならラルに危害を加える輩は殆どいませんし、交替でラルの様子を見れますから」
「ごめんね、迷惑掛けて……」
「いえ、元はといえば全てウボールが仕出かした事ですから。勿論ラファスにも報告済みです」

 そっか、ラファス兄にも報告いったんだ。僕もしようと思ってたんだけど、まぁいいか。ウル兄ざまぁ。僕にした事を思えば当然だよね♪あっ、そうだ。

「僕も後でウル兄の腹に一発入れさせて」

 被害を被ったのは僕だから、僕にもその権利はあると思う。

「ええ、勿論です」

 アル兄がいつもの笑顔で了承してくれた。うし。同意を得たり。

「それはそうと、後でラルを追い掛け回していた団員達と、会っていただけますか?元凶は勿論ウボールですが、ラルをこんな状況に追いやった者達にも、謝罪はきちんとさせないと」
「あー、了解。それはそうと、僕が寝込んで何日目?僕、連れがいるから連絡しなきゃ」
「今日で3デェフィル(※3日)です。私からも説明しに同行しましょうか?」

 アル兄が同行を申し出てくれる。

「ううん、大丈夫だよ。僕を追い掛け回してた騎士の人達に頼むから。それぐらいはして貰わなきゃ、連れの兄さんやあの街の人達に僕が犯罪者だと勘違いされたままなんて嫌だからね」

 あの兄さんの事だ。僕の説明だけより騎士の人達に説明させた方が絶対納得すると思う。

「連れの兄さん?」

 アル兄が首を傾げるから、僕が同行者の兄さんについての説明をする。

「ファジスタ出身らしいけど、常識知らずな甘い考えのお兄さん。アル兄と同い年でアル兄が憧れの人だって。イファデラで知り合ったんだけど、色々やらかしてくれてるから、目を離すと危ない感じ。旅を始めて2ティファルで、腕も一般評価で中の中」
「ああ、成程。確かに相当やらかしていますね」
「でしょ?挙げ句、僕を子供扱いしたがるんだけど、僕が言い負かしてる」
「ラルやラファスにとって、嫌いなタイプですよね?ファジスタ出身なら、早々切り捨てても良いのでは?」

 アル兄が僕を気遣ってくれる。切り捨てるなんてと言うなかれ。この世界では実力に見合った行動をしなければ、死に至る事なんて多々あるのだから。

「僕もそうしたいけど、今の状態で放置したら、多分後々面倒になる気がするんだよね」
「そうですか。ああ、レヴァーノ隊長が来ましたよ」

 アル兄が言った直後にノックの音が響く。僕が起きたら報せが行くようにしてたんだろう。

「どうぞ」

 アル兄の声で扉が開く。

「入るぞ」

 アル兄の言葉通り、レノ兄が顔を出す。

「レノ兄久しぶり~」
「ラル、大変だったな。すまない、ウボールが迷惑を掛けた。あいつは暫くアーヴェルの監視下に置いておく。といっても、どうせまたやらかすだろうがな」
「レノ兄も大変だね。ウル兄は能力が高い分、質が悪いから」

 ウル兄との最初の出会いは、ウル兄が僕に声を掛けて来た事なんだけど、他の特部の兄さん達との違いは、ウル兄が僕をナンパの道具にでもしようとした事かな。僕がラファス兄を待ってた時で、一人でいたからか、飯でも飲み物でも奢ってやるから一緒に来いよと、誘拐犯かと突っ込みたくなるような台詞をウル兄が言い出したんだよね~。僕が断ってもしつこくて、どうしようかと思ったら、ラファス兄が来てくれたんだけど、今度はラファス兄までも巻き込もうとして、ラファス兄を不機嫌にさせた張本人だ。
 その為、ラファス兄はウル兄に対して通常よりも口が悪く手厳しい。
 因みに他の皆もだけど、出会った当初、僕の事を男の子だと思ってたらしい。
 だからか、ウル兄はたまに騙されたって言うけど、人聞き悪いよね。僕は騙した覚えはないし、勝手に勘違いして思い込んだのはウル兄なんだから、僕の所為じゃない。

「ラルを追い掛け回していた騎士達と新米には、ウボールの言葉を鵜呑みにするなと言って置いたが、ウボールの事だ。懲りずにまた似たような事をやるだろうな」

 頭が痛いとばかりに溜め息を吐くレノ兄。

「ラファス兄もたまに被害受けてるもんね。でもさすがに今回の犯罪者扱いはやり過ぎだから、存分に説教しといてね。途中、追い掛け回して来る騎士達を、何度もやり返してやろうかと思う程にはイラッと来たから。あれ、ラファス兄なら問答無用で赤の由来を見せ付けてるからね?ラファス兄の場合、それを脱退理由にしちゃうからね?」
「まだ脱退を狙っているのか、あいつは」
「当然だよ。ラファス兄は組織とか権力者とか嫌いだもん。特部の兄さん達は別として、組織とか権力者とかって自分達は別格だと傲る奴の方が多いでしょ?そういう人達は大概僕達も思い通りになるって思い込んでるからね」

 僕達精霊人からすれば、王族だろうが平民だろうが、人間という一括りの種族としてしか見ないからね。
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