英雄王の末裔 ~赤のラルファンス~

カザハナ

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聖騎士団特殊部隊隊長レヴァーノとの再会 (前編)

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  ~ラファスがアーヴェルと出会い、その後本部へと連れて行かれた時~



「ここが聖騎士団特殊部隊の小会議室兼休憩室です」

 ノックをしてからガチャッと扉を開けるアーヴェル。中にはアーヴェルが探そうと思っていた人がいた。

「ハイレス隊長!丁度良かった、貴方を探しに行こうと思っていたんです。紹介します、彼はラルファンス=フォーゼ。任務中に知り合いましたが、あの・・“赤のラルファンス”本人です。立会人の元、勝負を挑みましたが負けてしまいましたので、入隊していただきました!」
「……」

 ラファスを見たレヴァーノは、ラファスをジッと見たまま動かない。

「……隊長?」
「……何でもない」

 アーヴェルの問いに首を横に振るレヴァーノ。

「……分かった。証を作るよう、指示しておこう」

 ラファスに向き直り、レヴァーノが自己紹介する。

「聖騎士団特殊部隊隊長、レヴァーノ=ハイレスだ。神殿最神官の位を持つ」
「……ラルファンス=フォーゼ。吟遊詩人だ」

 さすがのレヴァーノも聞き違いかと眉を寄せ、ここに来る途中、その腕前を知ったアーヴェルは本業だったんだと納得する。

「始めに言っておくが、俺は俺のやりたい様にやる。文句があろうと知った事か。俺は入りたくて入った訳じゃない。そこの所をよく頭に叩き込んでおけ」

 ラファスが扉を開け放った状態で、中に入らず宣言する。
 それをたまたま通り掛かった団員達が目撃し、慌てふためく。特に年長な年寄り連中が。ラファスにとって年長者や年寄りは、様々な経験談を持ち、尊敬する相手となるのだが、こういった組織的な場所にいる場合の大半は、地位や権力に目がない者も多いので、対象外になることが多い。
 ラファスは元々組織や権力といったものを嫌う。接するならば、個人として接する事を選ぶからだ。その所為で、王族や身分の高い者に好かれる傾向にあるのだが、それはまた別の話。
 そのラファスが対象外とする地位や権力に目がない年寄りが駆け寄って来てラファスに怒鳴り散らす。

「おい!貴様、何様の積もりだ!!このハイレス殿は国王と同等の地位で、場合によってはその国王をも裁けるというあの・・神殿最神官なのだぞ!身の程を弁えろ!!」

 大激怒の年寄りじじい相手に、ラファス本人は涼しい顔で逆に反撃。

「喧しい。王だろうが最神官だろうが、領主だろうが一般人だろうが、俺にとっては大差無い。その中の誰であろうと態度を変える気はない。それが嫌なら辞めさせろ」

 その言葉に衝撃を受けるレヴァーノ。そしてラファスに詰め寄っていた年寄り連中は顔を真っ青にし、始めは口をパクパクさせていたが、徐々に顔を赤くさせ遂には大声を上げる。

「出ていけーーー!!!貴様なんぞここにいる資格もないわーー!!今直ぐにでも辞めさせてやるーーー!!!」

 そう怒鳴り付けた時、静かな、感情を微塵も出していない声が響く。

「ここの隊長は貴方方ではなく俺だ。貴方方に彼を辞めさせる権利はない」

 無表情で淡々と言い切り、ラファスに向き直る。

「……赤のラルファンス」

 さらっと言ったレヴァーノの言葉に、集まった者達全員がギョッとする。皆が皆、あの悪名名高き!!?とか思いつつ、脳裏に様々な噂が過り、後退りしまくる人々。

「アーヴェル=デフォルトをも負かした者ならば、辞めさせる訳にはいかない」

 その言葉に固まる人々。だが、本人のラファスは不満顔だ。

「そんな下らん決まりは取り止めろ。腕が良いだけのクズが入る事になったらどうする気だ」
「貴方に敵う者が、そういるとは思えませんが。それに一応貴方の言うような……例えばあのベルクスとかいう男のような者ならば、相手わたしは生きていませんし、それに何よりも、瞳の輝きを見れば分かりますよ。貴方の瞳の輝きは澄んでいる」

 にっこり笑むアーヴェルに、ラファスはスパッと即答で言い聞かせる。

「そういう口説き文句セリフは女にしやがれ」

 キョトンとするアーヴェルを放ってレヴァーノに話し掛けるラファス。

「で?手続きってのはこれで終わりか?」
「……終わりじゃないが、出来る事はやっておく。後は連絡先と一応書類に目を通しておけ。手続きには2~3ディフェル(※2~3日)要するが、その間デ・マーム内にさえ居ればいい」
「あっ、じゃあその間、私が御一緒しても良いですか?」
「断る」

 アーヴェルの言葉を一刀両断するラファスに、文句を言いたいが相手があの“赤”と知って、さすがに死にたくはないので大人しく歯噛みしている年寄り連中。
 ラファスの言葉にさすがにショックを受けたアーヴェルがかなり凹んだ気配を漂わせながら、ラファスに理由を訊ねる。

「……理由を聞いても良いですか?」
「目立つからだ」

 スパッと即答するラファス。ある程度自覚をしてる分、何も言い返す事の出来ないアーヴェルが更に落ち込むので、見ていて鬱陶しくなったラファスが妥協案を出す。

「……外見を変えるなら構わん。好きにしろ」
「本当ですか?!」

 途端にパァッと明るくなるアーヴェルだが。

「あっ、でもどうしよう、姿変えの魔法はまだ出来ないんだ……」

 さすがにこんな事に騎士団の貴重な姿変えの薬を使う訳にはいかないし、と悩んだ挙げ句、結局は無理なのかとアーヴェルが諦めようとしたその時に、ラファスにでっかい溜め息を吐かれ、アーヴェルが呆れられてる?!と思ったら、ラファスが意外な事を言い出した。

「……分かった。材料はある、調合してやるからそのツラ止めろ」

 ラファスの言葉にその場に居合わせた者全員が驚きレヴァーノとアーヴェルが声を上げる。

「調合出来るのか?!」
「調合出来るんですか?!」

 何せ姿変えの薬はかなり腕の立つ薬剤師でないと作る事の出来ない代物。材料もかなり貴重な物が多く、作るのに手間も掛かる為、殆ど裏ルートでも出回らず、年に一、二回出回れば良い方だからだ。

「一応はな」
「……他には何が作れる?」

 思わずレヴァーノが勢い込んでラファスに聞く。

「一通り」

 元々ラファスは気に入った相手だろうと、通常は口数が少ない。通常でもラファスの口数が多くなるのは妹のラルが絡む時だけだ。ただ、初対面やラファスの通常を知らない者からしたら、機嫌が悪いとしか思えなかったりする。
 だからか、段々空気が冷たくなっていくような雰囲気にしか見えず、気が合わないというか、埒が明かないというか……一触即発?!相性悪いんじゃ……と思われてしまったようだ。
 ラファスは普通の態度だし、レヴァーノは、特別視せず普通に接するラファスに驚き、一個人として扱うラファスに好感や敬意を抱くが、それをどう表せたら良いのかが分からず、眉を寄せたり変に間が開いて喋ってしまう為、周りから勘違いされまくっている。
 因みにラファスだが、どう表せば良いのか分からない為だという事に気付いている。
 実はこの二人、レヴァーノが神官として神殿に入る前に出会っている。
 父親同士が友人関係にあり、ラファスの父が健在の時に、レヴァーノの住むクヴェア大陸で会っているのだが、レヴァーノはとある事件で記憶があやふやな為、気付いていない。一方ラファスは気付いてはいるが自分から名乗る気は更々なかったりする。
 ラファスからすれば、忘れている者に一々思い出せと詰め寄る気はないといった所だ。
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