奇跡の確率

カザハナ

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「えっと、クリスって呼んでもいい?」

 アンバーの言葉にクリスが頷く。

「ああ、構わない。済まない、紹介が遅れた。私はクリス=アズラル。クリスでいい。今後コーディーの傍にいる事が多いが、宜しく頼む」


 クリスの言葉に、まだいてくれてたジェイとノゼも応じてくれる。


「集まるのを待ってただけだろう?謝る必要はないさ」

「こっちこそ、宜しく」

「ノゼが喋った!珍しい~♪もっと喋れ~!」

「エル……そんなこと言ってると近くにいるアンバーに……」


 僕が忠告しようとするけど遅かった。

 ゴンッ!と、エルの頭に拳骨が降る。


「いっったぁあああ~!!」


 頭を抱えるエルにアンバーが冷たく言い放つ。


「自業自得。寡黙なノゼをからかうな。ノゼは喋りたい時だけ喋れば良いんだから。ごめんねクリス、煩〈うるさ〉くて。ノゼは元々寡黙だからあんまり喋らないけど、表情を見ても分かるように、君の事を歓迎してるよ」

「概〈おおむ〉ねいつもこんな感じだから、気にしないでね?」


 一応僕もフォローしてみる。フォローになったかな、これ……。


「クリス君も嗜む程度に槍や長剣を扱うって言っていたね。この場所で良ければ使っても良いよ。ここなら翼を広げても誰も文句は言わないし、他で言い触〈ふ〉らす者もいないから。……いないよね?エル」

「言いません!ってか、何で名指し?!」

「そんなの決まってる。お前が一番言いそうだからだよ。他の皆は口が固い」

「言わないよ!翼は見たいって言うけど!」


 そう言った瞬間、またアンバーの拳骨が落ちる。今度は更に力が入った模様。でも、自業自得だからね。


「いっっ~~~!!!!」

「強要すんな、言うな!翼が有ろうと無かろうと、コーディーの恋人には代わり無いんだよ。そもそも翼人って、恋人に執着するって聞いたけど、本当?」


 アンバーの勢いに呑まれたのか、クリスが躊躇う。


「あ、ああ」

「なら、コーディーが死なない限り、クリスとはちょくちょく顔を合わせるからね」

「勝手に僕を殺さないでよ」

「うん。コーディーはちょっとやそっとで死なないから大丈夫。それに、ルーがいるからクリスがコーディーを連れ去る事も無さそうだし。問題は他の人間って事」


 ああ、クリスとお付き合いする前に、ルー兄が言ってたことか。


「僕も、情報集めは得意だよ。ただし、本が中心の知識集めが得意だけどね。家〈うち〉の子、って言っても弟妹だけど、あれ何?これ何?何で?どうして?ばっか言われて、答えられないのが悔しくて、様々な本を読み漁ったからね。史実も含めて。それで、翼人の本も読んだ事があってね、結論から言うと、最悪だったよ」

「まぁ、そうだろうな。私達翼人に残る史実も似たような物だろう」
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