奇跡の確率

カザハナ

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 ここ、ヴェネックと呼ばれる街は、中心部に地霊族の宿る巨大な大木があり、その地霊族に許可をもらって人々が街を作ったとされる場所。彼等は生き神として崇められることも多いが人と関わりを持たない者の方が圧倒的に多いと聞く。そんな中、ここの地霊族は配達業を設立し、今ではあちこちに支部のある大きな配達業を営んでいるのだが、その姿を間近で拝める者は少なく、よっぽどのことがない限り、本部内の彼の部屋以外では見かけることは殆どないとまで言われる程だ。

 そんな彼会いたさに、配達人になりたがる人は多いが受かる者は少ない。実際配達人になれたからといっても地霊族の彼に会えるわけでもなく、その姿を見るのに何年もかかる人だっている。

 彼に間近で会える一番の近道は、毎年開かれる武術大会で高成績を上げ、金の腕輪の持ち主である特級相手に勝つか気に入られるか。

 もちろん特級相手に勝つのは難しいが、試合で筋が良いと気に入られたならその金の腕輪の持ち主と行動を共にすることが許されるため、地霊族の彼に会える確率が非常に高くなる。特級とは、地霊族の彼に認められた数少ない配達人だからだ。

 配達人には等級があり、特級は金、上級は銀、中級は銅で下級は鉄(黒)、そして新米の見習いは木、それぞれ自身の等級と同じ腕輪をもらうんだけど、金以外は取り外し可能。金だけは地霊族の彼が直々に装着してくれるため、繋ぎ目のない取れない腕輪が贈られる。それを外すには、それこそ送り主の地霊族か、腕もしくは腕輪を切るかぐらいで、簡単には外せない。

 そのため、金は信用度が格段に高く、通行証や身分証にもなり、どこへでも行けるのだ。

 中にはそれを悪用しようと金の腕輪の持ち主を狙うバカもいるけど、見付かれば重罪。配達人の振りをしたとしても、腕輪に繋ぎ目ができるため、調べられたら終わりだと知らない浅はかな連中だったりする。

 そもそも腕輪は普段、手袋や服の中に隠れてるから金を見付けること自体簡単じゃないけどね。金=腕っぷしも強いし。

 金の腕輪の持ち主は、僕、コーディエ=コーズを含めて現在十二名。大体十人前後で多い時でも二十人弱だと聞いたことがある。

 金は他と違い仕事の選り好みもできるけど、僕はもっぱら普通の配達人と同じ仕事をしている。金のみが扱える仕事もあるにはあるんだけど、僕はしない。なぜなら必ずといっていい程不快な目にあうから。


「一般の仕事ちょうだい!とりあえず中距離で。片道四~五日ぐらいの場所でいい。あと、いつもより多く回して!!」


 仕事の受け渡し所へと顔を出す。


「コーディー君!おはよう、どうかした?何だかご機嫌斜めね?」


 仕分け作業専門でよく世間話をする茶髪の女性が寄ってくる。彼女、ルビーはここの責任者。金は金専門の受け渡し人が数名いるのだ。


「おはよう~。ちょっと嫌なことがあって自己嫌悪中なの」

「自己嫌悪?」

「たいしたことじゃないから。ごめんね、心配かけて」


 僕が締まらないほえほえ~っとした笑みを見せると、彼女もそれ以上聞かずにいてくれる。


「いいのよ。わたしが心配したいだけ。コーディー君の足の速さなら……この辺かしら?」

「大きな荷物とかもあれば持ってくよ?なければ、同じ方面のを多めによろしくです」

「了解」
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