奇跡の確率

カザハナ

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 思わず僕が遠い目をしていると、ルー兄が僕に話を振る。


「そういえば、一つ聞きたかったんだけど、コーディーはカーネルの何に惹かれたの?傷を抉る気はないけど、ずっと不思議に思っていたんだ。特別何かに秀でている訳でもなく、極々普通の人達と変わらないのになって」 


 ルー兄酷い。まあ事実だけど。


「あー……。笑わない?」


 僕の言葉にルー兄が首を傾げる。


「笑われるようなことなの?」


 人によってはバカにする。と思うけど、ルー兄にそれはないか。人間じゃないから理解できるか分かんないけど。


「声がね、すっごく似てたんだ。亡くなったお父さんに」

「……亡くなった?」


 クリスが僕に問う。

 ああ、そっか。さっきは言ってなかったもんねぇ。


「僕、子供の頃に両親を火事で亡くしちゃってるんだ。だからカーネルの声を初めて聞いた時、思わず瞳で追っちゃって、仲良くなりたいなぁって思っちゃったんだよ」


 あの頃はカーネルがあんな奴だなんて知りもしなかったからなぁ……。

 思わず遠い目になっていると、ルー兄が口を開く。


「……言われてみれば、確かに似てるね。喋り方や雰囲気は全然似てないけど。僕の場合、声よりも匂いの方が記憶と深く強く結び付いちゃってるから気付かなかったな」


 ルー兄の言葉にクリスが変な顔をする。

 ルー兄は獣姿が本来の姿で本体だ。だから匂いに敏感なのは分かるけど、それを知らない人が聞いたら変に思うかも知れない。


「僕のお父さん、お医者さんだったから。それで匂いと強く結び付いたんじゃないかな?僕も配達先で、病院やお医者さんの家に当たると懐かしく思うから」


 僕が懐かしみながらクリスに説明すると、クリスがそっと溜め息を吐く。


「済まない。余計なことを言った。辛いことを思い出させてしまったな」


 そんなに辛そうな顔に見えたのだろうか?自分ではよく分からないし、そもそもクリスが先に話題に出したわけじゃないのに。

 けど、これだけは言える。


「確かに両親が死んだことは辛い出来事だったけど、二人を思い出すのは辛くはないよ?そりゃあ二人が死んですぐは悲しくて辛かったけど、僕には父様がいたし」

「父様?」

「うん。両親の親友で僕の名付け親。両親亡き後は父様がずっと僕を娘として面倒を見てくれてたんだ」


 といっても、僕が父様の元にいたのは五年程だけど。その父様は、今は深い眠りに付いている。

 僕が十二の時、近くの村の人間が魔物に唆されて、時折見掛ける余所者っぽい僕を拐〈さら〉い、生け贄にしようとしたのが原因だ。その村人の誤算は僕の育て親である父様が地霊族だったこと。

 普通の人間相手なら、知らぬ存ぜぬで通っただろうが、魔物が僕を襲おうとした所に僕の叫び声を聞いた父様が忽然と姿を現し、僕を守りながら魔物を撃退した。

 だけど、その魔物は桁外れな魔力を持っていたため、父様もかなりの力を消耗したらしい。父様は力を蓄えるために自ら深い眠りに付いたが、その間僕が一人でいるのは危険だろうと、僕をケイド様に託すことを決めた。

 あれから九年もの月日が流れたが、未だ父様は目覚めていない。


「コーディー?」


 思わず黙り込んでしまった僕をクリスが心配そうに声を掛けてくる。

 ダメダメ!近くにいる人を心配させるなんて僕らしくない!


「ごめんねクリス。父様に会いたいなぁって思っちゃっただけだから!あっ、誤解しないでね?父様はちゃんと生きてるし、強くて優しくて、すっごく格好良い、僕にはもったいないぐらいの大好きな養父だし、父様も僕をすっごく大事に思っていてくれてる人だから!」


 段々捲し立てるように言ってしまう僕に少し驚いた顔をするクリス。


「ただ、その、ちょっと事情があってね、ルー兄に預けられてる状態なんだよ」
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