奇跡の確率

カザハナ

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 クリスが無駄のない動作で立ち上がり、僕に手を貸してくれる。けど、その切り替えの早さに僕はちょっと憮然とする。

 いや……ちょっと待て、僕。ここはルー兄が来て安堵するとこだよね?あの至近距離であんな体勢、どう考えても危ないよね?!しかも僕、あの状況でクリスに何言う気だったの?!うわ~ん!考えるな僕ぅぅぅ~~!!


「ちょっとクリス君、コーディーが百面相してるんだけど。あれはあれで可愛いけど、良いの?これから試合だよ?」

「コーディー……」


 クリスが僕に振り向いて、あの色気たっぷりの声で耳元に囁く。


「あまり他の男に可愛い姿を晒していると、襲〈おそ〉うぞ」


 ひっやぁぁぁ~~!?襲っ、おおお、襲うって!?!ちょっ、しかもクリス、耳!唇当たってるし!!ルー兄もいるぅ~~!

 角度的にルー兄からは見えないということにも気付かず、必死でクリスに抗議する。


「るっ、ルー兄の前ルー兄の前~~!ってか、ルー兄は異性じゃないから!家族なんだってば!」

「まぁ、クリス君のいる所なら良いんだけどね?コーディーは女の子だって自覚が足りなさ過ぎるから、見てて心配なんだよね。今までは、相手も居なかったからか、子供や男の子でも通ったけれど、これからは無理だからね?現にさっきもコーディーが周りの男に見られていたの、気付いていた?」

「僕が?」


 さっきって、姉様がいた時かなぁ?なら、僕じゃなくて姉様だよね?姉様は綺麗だからいつも見られてるし。


「言って置くけど、ローズリィー様じゃないからね?確かに最初はローズリィー様を見ていたけれど、クリス君に微笑んだ時とか、明らかにコーディーが見られていたよ。クリス君は気付いていたよね?」

「勿論だ。私は前に言ったぞコーディー。私を見るコーディーは子供では出せない女の顔だと。ナイツ殿は常に人目を惹〈ひ〉くが、コーディーは時々目を離す事が出来ない程の魅力的な顔を見せる」

「まさに恋する女性って感じだよね?無防備過ぎて危ないったらないよ……」


 いやいや、それ、絶対僕に対する特別なフィルター掛かってるから。他の人はそんな物掛かってないからね?やっぱりクリスも地霊族寄りの考え方してるよね?


「でも、それってクリスが近くにいなければ、僕は女に見えないってことでしょ?」

「そうは言うけど、クリス君が近くにいない時にクリス君の事を全く考えずにいられるの?あと、クリス君に見せる顔を向けさせたいって思う男にはどう対処する気?」

「ええっと……クリスと離れててもすっぱり忘れるなんて無理。あと、そんな男に興味はないし、僕を女?にするのはクリスだけで充分だよ」

「……」

「それ、クリス君に襲えって言っているような物だよ?コーディー自覚ある?」


 ちょっ、何でそうな……る……?え?……ええっと?


「……もしかして僕、クリスに口説いてるような発言、してる?」

「もしかしなくても充分しているね。やっぱり無自覚か。ごめんねクリス君。コーディーは僕達一族〈家族〉に対して常にこんな感じで、どうもそれが無意識に出ちゃってるみたいだ」

「……襲われたくなければ、少しは控えてくれ」

「ごっ、ごめんなさい……」


 僕はルー兄が散々クリスに謝ったことの意味を、やっとのことで理解した。
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