神なのか?

モモん

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第一章

第13話 メロンの余韻に浸っていたら全部よこせという男が現れた

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 彼はふと考えた。
 自分がこの体から去ったらどうなってしまうのか?
 ……ロビンの意識が感じられない以上、死ぬのだろうと思う。
 確信は持てないが、多分そうなのだろう。

 まあ、どうせ50年程度の命なら、このまま楽しめばいいだろうと思っている。
 彼には、この世界が滅びるまで、無限の時間があるのだ。
 
 今は、人間が存在するから暇つぶしになっているが、もし人類が滅んだりしたらどうすればいいのだろう……。


 リズは料理と裁縫の感性が優れていた。
 マリーと二人で、どんどん料理をアレンジして、新しい味を作り出すのだ。
 生クリームとスポンジの焼き方を教えてもらい、ケーキ作り等も楽しんでいる。
 性格も穏やかで、マナーも身についており、いずれ嫁に出す時には……、お父さん泣いちゃうぞとか彼は考えている。

 4人には小遣いが与えられているのだが、必要な衣類は買ってもアクセサリー等は買おうとしない。
 まあ、彼が本物の宝石を加工して与えているのだが、ペンダントはしているのに指輪やブローチ等はつけた事がない。

 そして、4人にはウエストポーチ型のマジックバッグが与えられている。
 あの中には、色々と入っていそうな気がするのだが……

 マリーは化粧をしない。
 ここの風呂には保湿と美白効果のあるオイルが入っているので、肌は白く艶々ではあるのだが……

「あれっ、マリーさん、髪切ったんですね。」

「はい。少し長かったので、思い切って切ってしまいました。変ですか?」

「い、いえ、ショートボブがお似合いですよ。」

 茶色の髪をかきあげた時の、うなじの白さにドキッとしてしまう。
 毎日見ていると僅かな変化には気付かないが、少し若くなっているように見える。
 ひとつには胸元が以前よりも露出されており、そっちに目がいってしまう事が影響しているのだが彼は気付かない。
 とはいえ、30代で通用しそうな若々しさだ。
 これは、マリーが自分を女性として意識しはじめた効果でもある。

「そういえば、毎日お風呂に入っているせいか、肌の調子がいいんですよね。」

「あはは、確かに健康そうだし30代に見えますよ。」

「あら、こんなオバさん口説くんですか?」

「やった!そしたら、私たちのパパとママになってくれるんだ!」

「やめろ、お前たちと5才しか違わないんだぞ。」

 まあ、現実的には父親的な見方をしているのは間違いない。
 そして、その日から、子供たちが彼とマリーをパパ・ママと呼ぶようになってしまった。
 その変化に、マリーは内心喜んでいた……


 彼らは揃ってランクレで出かける事も多くなっていた。
 これはリズとマリーの射撃訓練を兼ねている。
 二人の右手には、細めのリストバンドにダイヤルとボタンをつけたものが装着されており、針・矢・槍の切り替えと火・氷が選択できるようになっている。
 連射可能で、音も反動もない。
 基本的に針は対人用であり、魔物用には矢か槍を使用する。

 ミケとポチにも渡されており、一応装着しているのだが、二人は使った事がない。
 右手を前に出して左手で手首を操作する感じは、ちょっとカッコいい。
 普段はブレスレットになっており、そこを軽くたたくとリストバンド仕様に変化するのも使い勝手が良い。
 こんなものが冒険者に知られたら、間違いなく大騒ぎになるだろう。
 基本的に魔法というのは、個人の属性に応じたものしか使えず、多くの魔法師は矢まで覚えるのがやっとなのだ。
 槍になると、詠唱が複雑になり、省略可された”短唱”は誰も成功していないのだ。
 しかも、槍を取得したごく一部の魔法師は、自分たちの希少性を守るため、他人には教えない。

 そんなものが魔法陣で、誰でも3属性の上級魔法を簡単な操作で発動できるとなったら、どんな手を使っても獲得しようとするだろう。
 槍1本発射するにも、長く複雑な詠唱が必要なのに、それを無視して数百発でも簡単に発射できるのだ。
 本来なら、槍を1本発射するのに、膨大な魔力量を必要とするのだが、魔法陣は微量の魔力を流して魔法陣自体を活性化するだけで発動する。
 魔法陣は大気中の魔力を集めて発動するのだ。
 恐ろしいものである。
 そして、魔道具も起動時に少量の魔力で魔法陣を活性化する理屈は同じである。
 だから、長時間稼働が可能なのだ。

 このドライブの目的は、何か所かに作った果樹園の収穫と肉の確保だ。
 それぞれの果樹園にはアンドロイドを3体配備してあり、収穫や木の世話は必要ないのだが、実った果実は目の保養にもなる。
 まあ、果樹園といっても、半分は畑になっており、メロン・イチゴ・スイカも作っていた。
 アンドロイドが収穫した果実は、彼のマジックバッグに送られるため、彼は時々マリーのマジックバッグに移している。

 彼の家で食べきれないフルーツは、定期的に商業ギルドに卸しているのだが、当然種が出るためそのうちに栽培が始まるだろう。
 今は割高なのだが、数が増えれば価格は落ち着くだろう。

 彼は、週に一度帝都に顔を出しているが、城に行く時にはフルーツを木箱に2箱入れて用意していく。
 
「「ロビン!」」

 城に入るなり、金色の縦ロールをピョンピョンさせながら駆け寄る二人。
 皇女アリステアとナターシャの双子だ。
 どうも、この二人に懐かれているようだ。

 3度目の訪問の際、会議メンバーへの手土産にフルーツを持って行ったのだが、たまたま顔を出したナターシャ皇女にも一切れおすそ分けした。
 それを知ったアリステア皇女が来た時には残っていなかった。
 次の機会にと約束したのがきっかけで、4度目の訪問の際にモモを持参したら、次から城に来たら二人の部屋に顔を出すよう約束させられてしまった。

 彼が城を訪問するのは水曜の午後と決まっており、どこかでそれを知った二人が待ち構えるようになってしまった。

「お二人とも元気ですね。」

「昨日誕生日でしたので、10才になりましたのよ。」

「私もですの。」

 双子なんだから当然だろうとは突っ込めなかったようだ。

「存じております。手土産もありますので、お部屋の方にまいりましょうか。」

「ええ。」

 皇家の居住区は、2階の奥まった位置にあり、貴族ですら簡単に立ち入る事はできない。
 普段は居住区の入口に立つ警備兵に説明し侍女を呼んでもらうのだ。
 今回は二人が一緒なので当然スルーだ。

 部屋に入ったタイミングで、侍女が紅茶を淹れる。
 最高級茶葉の優しい香りが部屋を満たしていく。

「今日は何をお持ちいただいたのかしら?」

「お二人の誕生日ですから、フルーツの王様をお持ちしたんですよ。」

「王様?」 「フルーツの?」

 彼がマジックバッグからメロンを取り出すと、既に切り分けて乗せられた皿から香りが溢れてくる。

「こ、これは……」

「なんて、甘く優しい香り……」

「どうぞ、お召し上がりください。」

 二人の前に、ガラス皿に乗せたメロンが出される。
 
「こちらは、陛下と皇妃様にお持ちください。」

 二人だけ食べるのはズルいと、皇妃からクレームが入っていたらしい。
 それを耳にしていた彼は、今回は余分に持参したのだ。

「こちらは、侍女の皆さんでどうぞ。」

「わ、わたくし達もよろしいんですか!」

「遠慮なさらずにどうぞ。食べごろに冷やしてありますから。」

 二人が幸せそうに味を楽しんでいるのがよく分かる。
 目を閉じて蕩けるような表情になっているからだ。

 彼は座って紅茶を飲んでいる。
 冷たいうちに食べるよう侍女に言ったので、この部屋は無言の空間になっている。
 本当に美味しいメロンを食べると、みんな無口になる。
 口を開いて、香りが逃げていくのが惜しいからだと思う。

 時々フォークを置くカチャッという音が部屋に響く。

 その静寂を破るようにタタタッと駆けこんでくる足音。
 それを予見していたのか、彼は椅子から降りて片膝をついた。
 足音の主は入ってくるなり叫んだ。

「これを持ち込んだのはお前か!」

「はい。」

「妃が気に入ったようだ。保有しているものを全て献上するように。」

「残念ながら、今期はもう終わりです。」

「なにぃ!」

「はい。元々家族用に少量作っているだけですので。」

「くっ……」

「それに、失礼ながら、これは皇女様お二人のお祝いにお持ちしたものです。」

「そうですわ。せっかく味を楽しんでいたものを、お父様のせいで台無しですわ。」

「ホント。せっかく余韻を楽しんでいたところを邪魔するなんて、最低ですわ。」

「ロビンが私たちに持ってきてくださいましたの。それを分けて差し上げたのに、全部寄越せだなんて横暴です!」

「くっ……」

「まあまあ、次はまた、美味しいものをお持ちしますよ。」

「だって、フルーツの王様なんでしょ。これより美味しいものなんて……」

「フルーツ以外にも、娘の作るスイーツは絶品なんですよ。」

「待て、ロビンと言ったな。」

「はい。」

「まさか、お前が鉄道の企画をした……」

「さようでございます。」

「くっ……なぜ技術者がこのようなものを?」

「いえ、俺はただの冒険者ですから。」

「バカを言うな!冒険者がなぜあのようなものを考えられるというのだ。」


【あとがき】
 皇帝登場。イメージはサリーちゃんのパパです。


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