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第二章

ハンバーガー

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「アルコールを作るだけなら、サトウダイコンの搾りかすが使えるんじゃないでしょうか?」

萌にいわれて気が付いた。

早速、サトウダイコンを一本すりおろし、汁を絞って残りかすで発酵させてみる。
5日、毎日シェイクしてみたら、うまいことアルコールにできたようだ。

さらに、その搾りかすを水に溶かして紙を作ることができた。

「すげえなサトウダイコン!」

「ああ、ここまで無駄なく使えるとはな。
ポットスチルもできたんだが、どうやって温度を調節するかだな」

「アルコールの沸点って確か80度くらいだったよな」

「俺も詳しい数値は覚えてないが、80度を少し下回るくらいだったと思う」

「温度計なんてないしな……」

「沸騰させないように注意しながら、蒸留した量で判断するしかないだろう」

「やっぱ、それしかないか」

原液のアルコールが10%前後だとして、水を沸騰させないようにして100リットルの原液を蒸留すれば10リットルのアルコールがとれる。
余分にみて、20リットル。これを繰り返していけば高濃度のアルコールになる。

「どっちにしても、サトウダイコンがそれなりの量収穫できてからだな」



俺はショウガも見つけ、無事ショウガ焼きを食べることが出来た。

「うめえよ、何でこんなにウメエンだ」

「うん、おいしい」

ウシもそれなりに確保できたので、いよいよアレに手を出し事にした。

「ハンバーガー作りをやってみるか」

「ええ、そろそろ頃合いですよね」

「足りないモノは?」

「全部揃ってますよ」

ハンバーガーを作り、メイド達に試食してもらう。

「美味しいです。こんなパンがあるなんて」
「ソースが絶妙ですね」
「レタスのシャキシャキ感がすごいです」

メイドも増員してある。
何しろ、売り子だけでなく、仕込みもやってもらっているし、恭介や萌専属のスタッフもいる。



全てが順調にいくかと思われた矢先に事件が起こった。

「仁さん、智代梨さんが」

「どうした」

「治療中に倒れました」

俺は治療室に駆け込んだ。
智代梨はベッドに寝かされていた。

「何があった」

「患者が出ていったと思ったら、中で智代梨さんが倒れていたんです」

「患者は?」

「兵士ですが、記録はとっていません」

「智代梨……」

智代梨は夕方になって目を覚ました。

「何があったんだ?」

「えっ、……あっ……、治療が終わったら……、急に抱きついてきて……」

「患者がか?」

「胸とか触られて……、体が硬直してしまって……、キスされたら……なんだかわからなくなって」

俺はオオカミの姿になって智代梨についた匂いを確認した。
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