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第三章 冒険者

風呂を作れ……やなこった

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「ふう、何とか終わった。
みんなお疲れさん」

「無事、終わりましたね」

「今日の分、特別手当支給しますから、楽しみにしていてくださいね」

「「「ヤッターッ!」」」

「お取込み中のところ失礼いたします」

「なんだ、もう用はすんだはずだが」

王様の使いだった……

「そ、それが、城に風呂を作るようにとの勅命がございまして……」

「断る」

「国王陛下からの指示でございますので……」

「そう何度も、無理が通ると思ったのか?」

「しかし、貴族は国のために……」

「だから、こうして国民の生活が豊かになるよう、寝る間も惜しんで働いている。
ほかの暇な貴族にやらせればよかろう」

「全員が尻込みをしてしまいまして……」

「それじゃあナニか、魔王相手に死に物狂いで戦って、これだけ国民のために尽くしているのに、まだ、足りないというのだな」

「いえ、決してそのようなことは……」

「俺にやらせればいいといったのは誰だ」

「それは……」

「ともかく、俺たちは自分のことで手一杯だ。他をあたってくれ」

「そんな……」

ところが、後日、宰相から呼び出しを受けた。


「城の風呂づくりを断ったそうだが」

「ええ」

「貴族たるものが王家の要請を断るとは、どういうつもりなのだ」

「これを受けることにより、国民の声に応えることができなくなってしまいます。
国民の暮らしを守ってこその貴族だと俺は考えていますので」

「うぐ……」

「おれなんかよりも、もっと時間のある人が大勢いますよね」

「うぐぐぐぐぅ」

「あっ、宰相が受ければいいじゃないですか。
建築局を総動員してやりましょうよ。
相談役程度なら喜んでお手伝いさせていただきますよ」

「調子に乗りおって」

「調子に乗ってんのはどっちだ。
人んちの風呂に、ぞろぞろと入りに来ておいて。
それが気に入ったから城にも作れ……
冗談じゃない。ノウハウは提供しますから、自分たちで作ったらどうなんです」

「お前らは、国の支援金で食べているのだろう」

「支援金なんて、とっくに断ってますよ。
今は、あの家を借りてるだけ。
それも出て行けというなら出ていきますよ。
その代わり、魔王が現れても俺たちは関知しない。
それでいきましょう」

「何をいうか!」

「魔王は、城ごと吹き飛ばしましたが、あの程度で死んだとは思えない。
だからこそ、兵士たちとも連携をとってるんだ。
城が俺たちと縁を切るというなら喜んで出ていきますよ。
さあ、どうするのか返事を聞かせてもらいましょうか」

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