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第三章 冒険者

財政改革

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「それから、俺たちの恩給辞退がなぜ公表されていないのか」

「財務局長は誠実な男だ。
知っていれば必ず報告するはず……」

「とりあえず財務局長に確認しましょう」

宰相と一緒に財務局を訪れる。


個室に通してもらい、確認する。

「財務局長、俺たち四人は、今年の始めから恩給を辞退しているんですけど、ご存じですか?」

「えっ!そのような報告は受けていませんが……」

追求した」ところ、担当の主任・係長・課長による横領が発覚した。
三人はその場で捕縛され拘留された。

「申し訳ない。私の管理が悪かったようだ……」

当然だが、この件は王まで報告され、同時に俺たちの恩給辞退も公のこととなった。

「仁よ、何か不服があるのか?」

「いえ。俺たちは平民です。
貴族なんて分不相応なんですよ。
幸いなことに商売もうまくいっていますので、これまで通り爵位は受けておきますが恩給は結構です。
その代わり、言いたいことはいわせてもらいますから」

「うっ、何やら言いたいことがあるのだな……」

「風呂は気持ちよかったですか」

「あ、ああ、最高じゃったぞ……」

「だったら、城になんて作らずに、中央広場に国民用のでかい風呂を作ればいい」

「なんと!」

「男用の風呂と、女用の風呂を作って、無料で開放するんですよ。
当然、風呂に入りたいときは陛下も一人の国民として入ればいい」

「王妃もか……」

「当然です。
風呂の中では、着ているものは全部脱いでいただきます。
国王という服を脱いで、ただの男になってください」

「となると、結構な建築費用が必要だな」

「俺たちの恩給と、賛同していただく貴族には一定期間、一割の減給を申し出ていただく。
余計なイベントや無駄遣いを廃止すれば捻出可能だと思いますが、いかがでしょう財務局長」

「もし、許されるのでしたら、今回の不始末の責任をとって私は五割減給でお願いしたい。
それに、余計な支出を減らそうという案は、局内からも出ております。
ただ、慣例をやめるとなるとそれなりの理由付けが必要なので今まで言い出せなかったのが事実。
やってよければ、徹底的に削減して、その建設費用を捻出させていただきます」

「ほう、財務局ができるというのならばやらせてみようではないか」

「では、私は貴族連中を集めて、希望者を募りましょう」

こうして財政改革が進められ、浴場施設の建築費用が確保された。
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