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第十三章
第252話 神なき世界
「さて、稲荷神。次に”悪意”と遭遇した場合、どのような事が想定されるのですか?」
「悪意が高濃度の魔力という前提でお話しさせてください。実はヒトの社会において、残酷ですが実験結果があります。魔力を持たない奴隷に対し、魔力を強制的に送り込んだ時に半数は発狂し、半数は死にいたりました。それの高い濃度の魔力ですから、あの日以降殆どの生物は耐えきれず死んだものと考えられます。現状ではヒトの約3分の2が魔力を保有していますので被害は少ないと思いますし、ひょっとすると結界で防げるかもしれません。」
「ワタシの伝えた、”悪意”の無力化はどうでしょう?」
「”悪意”の大きさが分かりませんよね。仮に、地球くらいのサイズなら空間を切り取って消滅させられるでしょうが、太陽系規模だとどうにもならないですよね。前回の時、皆さまが結界の中に入られたのは、現象がかくにんされてからどれくらいのきかんでしたか?」
「多分、10日程は経っていたと思いますが。」
「……地球の公転速度は時速10万kmほど。つまり、その期間だけを考えても240万km。そんなものをどうしろと言われるのですか?」
「うっ、それは……」
「ワタシ個人の見解としては、まあ1万人くらいは前回と同じように未来へ避難させて、残りは運命として受け入れていいんじゃないかと思っています。」
「そ、そんな残酷な選択ができる訳ないでしょ!」
「洪水に比べたら、遥かに生存確率は高いと思いますよ。」
「だが、そこまで残酷な事は……」
「そうだ!そんな事はできん!」
「あら?前回の時、稲荷神と時空神に避難された皆さんは、何かされたんですか?」
「なにぃ!」
「ああ、別に皆さんを否定している訳じゃないんですよ。」
「では、どういう事だ!」
「神道のありかたって、神が見守っていてくださる。だから神様に日ごろから感謝を捧げるっていうスタンスですよね。」
「だが、ヒトは神に願いをたてるではないか。」
「それって、神社とかができて、個人がお参りするようになってからですよね。元々は豊作を感謝するお祭りとかお酒ができたから奉納とかですよね。」
「そうね。以前は感謝だけだったものが、願いに変わっていったわ。」
「でも、日本人の願いって、例えば交通安全のお守りを持っていて事故にあっても神様を恨むような事はしませんよね。」
「だが、奴らは特定の神を祀って、御利益を求めるではないか。」
「その願いに応じた事なんてあるんですか?」
「いや、それは……」
「ほら、やっぱり見てるだけじゃないですか。それでいいんですよ。お天道様が見ているって自戒するのが日本人なんですから。見ているというか、そこに在るだけの存在でいいんです。それで気が済まないのでしたら、ワタシのようにヒトと暮らせばいいんですよ。」
「ヒトと暮らす……」
「ああ、レイミの元には色々な願いが届くものなぁ。」
「私はヒトとして暮らしていますから、気に入らない願いには応じません。そういえば、今の世界で人々の中に信仰が存在しないのって、一つには神のチカラにも等しい魔法が存在するのと、自然現象が解明されてしまったからだと思うんですよね。」
「どういう事?」
「例えば、雨が降るのは、水蒸気が冷やされて水として降ってくる。そこに神の技なんて含まれていないって知っちゃったからで、川の反乱を防ぐには治水工事をすればいい。神に祈る必要はないんですよね。病気だってそう。原因追及と対策を行えば予防も治療もできてしまう。」
「世知辛い世の中になったものよ……」
「そうですね。このなかの多くの方は、存在意義を失っています。では、これから神はどう在ればいいのか?」
レイミの話はまだまだ続いた。
【あとがき】
神の在り方とは……
「悪意が高濃度の魔力という前提でお話しさせてください。実はヒトの社会において、残酷ですが実験結果があります。魔力を持たない奴隷に対し、魔力を強制的に送り込んだ時に半数は発狂し、半数は死にいたりました。それの高い濃度の魔力ですから、あの日以降殆どの生物は耐えきれず死んだものと考えられます。現状ではヒトの約3分の2が魔力を保有していますので被害は少ないと思いますし、ひょっとすると結界で防げるかもしれません。」
「ワタシの伝えた、”悪意”の無力化はどうでしょう?」
「”悪意”の大きさが分かりませんよね。仮に、地球くらいのサイズなら空間を切り取って消滅させられるでしょうが、太陽系規模だとどうにもならないですよね。前回の時、皆さまが結界の中に入られたのは、現象がかくにんされてからどれくらいのきかんでしたか?」
「多分、10日程は経っていたと思いますが。」
「……地球の公転速度は時速10万kmほど。つまり、その期間だけを考えても240万km。そんなものをどうしろと言われるのですか?」
「うっ、それは……」
「ワタシ個人の見解としては、まあ1万人くらいは前回と同じように未来へ避難させて、残りは運命として受け入れていいんじゃないかと思っています。」
「そ、そんな残酷な選択ができる訳ないでしょ!」
「洪水に比べたら、遥かに生存確率は高いと思いますよ。」
「だが、そこまで残酷な事は……」
「そうだ!そんな事はできん!」
「あら?前回の時、稲荷神と時空神に避難された皆さんは、何かされたんですか?」
「なにぃ!」
「ああ、別に皆さんを否定している訳じゃないんですよ。」
「では、どういう事だ!」
「神道のありかたって、神が見守っていてくださる。だから神様に日ごろから感謝を捧げるっていうスタンスですよね。」
「だが、ヒトは神に願いをたてるではないか。」
「それって、神社とかができて、個人がお参りするようになってからですよね。元々は豊作を感謝するお祭りとかお酒ができたから奉納とかですよね。」
「そうね。以前は感謝だけだったものが、願いに変わっていったわ。」
「でも、日本人の願いって、例えば交通安全のお守りを持っていて事故にあっても神様を恨むような事はしませんよね。」
「だが、奴らは特定の神を祀って、御利益を求めるではないか。」
「その願いに応じた事なんてあるんですか?」
「いや、それは……」
「ほら、やっぱり見てるだけじゃないですか。それでいいんですよ。お天道様が見ているって自戒するのが日本人なんですから。見ているというか、そこに在るだけの存在でいいんです。それで気が済まないのでしたら、ワタシのようにヒトと暮らせばいいんですよ。」
「ヒトと暮らす……」
「ああ、レイミの元には色々な願いが届くものなぁ。」
「私はヒトとして暮らしていますから、気に入らない願いには応じません。そういえば、今の世界で人々の中に信仰が存在しないのって、一つには神のチカラにも等しい魔法が存在するのと、自然現象が解明されてしまったからだと思うんですよね。」
「どういう事?」
「例えば、雨が降るのは、水蒸気が冷やされて水として降ってくる。そこに神の技なんて含まれていないって知っちゃったからで、川の反乱を防ぐには治水工事をすればいい。神に祈る必要はないんですよね。病気だってそう。原因追及と対策を行えば予防も治療もできてしまう。」
「世知辛い世の中になったものよ……」
「そうですね。このなかの多くの方は、存在意義を失っています。では、これから神はどう在ればいいのか?」
レイミの話はまだまだ続いた。
【あとがき】
神の在り方とは……
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