魔導師の記憶

モモん

文字の大きさ
3 / 23
第一章

第3話 キング家

しおりを挟む
「秘密にしたい内容も理由も分かりました。では、担当窓口となる者を呼んでまいりますので少しお待ちください。」

 そういうと、ギルド長はなぜか嬉しそうに応接室を出て行った。
 少しして戻ったギルド長の後ろに、背中までの銀髪をポニテに結んだ女性がついてきた。
 女性にしては身長が高く、170cmくらいだろうか。
 スレンダーな体形に、白のブラウスと黒のパンツがカッコいい。
 そして……。

「坊や。エルフが珍しいのかも知れないが、女性を凝視するのはマナー違反だぞ。」
「あっ、大変失礼いたしました。」
「うん。素直な坊やは好ましいものだな。」

 局長に促されて座ろうとした女性だが、テーブルに置かれた3点の魔道具に気づくと中腰のまま固まった。

「ギ……ギルド長……まさか……これは……。」
「シルビア君、こちらはキング男爵家の……。」

 そこまで聞いて、シルビアと呼ばれた女性はエリーの横に片膝をついて叫んだ。

「キング家の方とは知らず、失礼いたしました!この魔道具、是非わたくしにお任せください!」
「おいおい、シルビア君違うよ。」
「私が間違っていると言われるのですか。キング家、そして魔道具。どう考えても……。」
「君が間違えたのは、頭を下げる相手の方だよ。」
「えっ?」

 シルビアと呼ばれた女性はエリーを見て、次に俺に視線を向けた……。

「ま……さか……。」
「リコ・フォン・キングです。よろしく、シルビアさん。」

 シルビアさんは俺に向かって土下座する姿勢になり、必死に謝罪の言葉を述べている。
 それを見て、クックッと笑いを堪えきれないギルド長。
 二人の関係性が見えた気がする。

「こちらで想定する販売価格は、一律金貨10枚です。」
「それって、高くないですか?」
「これほどの魔道具は王都でも見たことがありません。つまり販売先は全国になります。」
「いや、国内でこの程度の魔道具が存在しないという事はないでしょう。」
「……大魔導士マーリン様の時代には、昼間ほどの明るさをした魔道具が存在したと記録されています。」
「それはどうなったんですか?」
「魔道具は、魔法石の魔力が尽きれば作動しなくなります。」
「はい。」
「その当時の魔道具は、100年ほどで寿命を迎えています。」
「100年ですか。」
「マーリン様の残された魔導書には、魔道具の情報がなく。その後の研究でも、魔道具に関する解明がほとんどできていない状況なのです。」
「……マーリンは魔道具製作は苦手だったし、中級の元素魔法くらいしか使えなかったもんな……」
「「えっ?」」
「えっ?何?」
「今、マーリン様が苦手とか……。」
「き、気のせいだよ。」
「安く販売して普及させるとなると、圧倒的に商品が不足します。それに伴い、買占めと不正価格による転売が始まります。ですから、最初から高額で販売し、それらを抑止するのです。」
「まあ、商品価値を考えると、妥当な金額だと思いますよ。」

 ギルド長も適正価格だという。

「というわけで、これだけの魔道具を作れる魔道具職人は存在しませんし、これだけ純度の高いミスリル銀も作れないでしょう。」

 ああ、ミスリル銀の製錬も伝わっていないのか……。

「金貨10枚のうち、ギルドの手数料が一割で、販売店・輸送者が五分。税金が一割となりますので、キング様には七割が支払われます。」
「すごい金額ですね。」
「週にどれくらい製作可能でしょうか?」
「そうですね。全部で100作りましょうか。内訳は任せます。」
「100あれば、半分は王都に回せるでしょう。」
「今日は、全部10台づつ持ってきましたけど、これはデモ用に使ってもらっていいですから。」
「それは嬉しいですけど、10台は多すぎですね。半分はデモで使わせていただくとして、半分の15台は納品分として販売に回しましょう。」

 こうして、俺は初回分として金貨105枚を入手した。
 この金貨で、俺は母や使用人の服を買い、鉄と食材、革袋や布も入手した。
 たまには贅沢もいいだろう。

「毎週100台なんて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。ただ、母上に言って、出かける頻度は増やしてもらうけどね。」
「それにしても、週に金貨700枚だなんて、創造できないんですけど。」
「それなんだけど、少し気になるんだ。」
「何が?」
「俺の父親は、俺が生まれてから一度も顔を出したことがないよね。」
「それは……。」
「放置してくれるなら、それでいいんだけどさ……。」
「お金が絡むと……ですか。」
「そういうことだね。まあ、今後、資金的な援助は不要だと連絡して、後は相手の出方次第かな。」
「まさか、子供のお金を取ろうとかしないと思いますけど……。」
「子供がそんなお金を持つのはいけないっていうかもよ。」
「……考えたくありません。」

 その夜は、少しだけ買い込んだお酒をふるまい、全員に服を贈った。
 美味しいものをいただき、全員で幸せを祝った。

 俺は、敷地の四隅に魔道具を設置し、敷地を覆う結解を張った。
 指定の魔道具を持った者でないと敷地に入れない。
 そのため、門の入口に、呼び出し用の鐘を設置した。

 俺は夜毎に黒い布をかぶって空へ飛び上がり、魔物とミスリル銀の確保に励んだ。
 母から父へ、収入の目途が立ったので、今後の支援は不要であるとの連絡を入れさせてある。
 魔道具買取のお金は、ギルドに開設した口座に積み立てられていく。
 これは、本人以外出し入れできない口座とのことだった。


 そんな中で、父親であるリチャード・フォン・キング男爵から、収入源とか所有している金額とか問い合わせてきたが、そこは正直に回答してもらった。
 つまり、収入源は俺の開発した魔道具の販売代金で、家として所有する金銭は生活費程度。リコの所有する財産は、リコが商業ギルドで管理しているため不明であると。
 そんなやり取りが何度か続いたある日、キング男爵家財務担当キガネという男がやってきた。

「当家に関する収支は、すべてこのキガネを通じて行われています。ですので、現在所有している財産はすべてキガネにお預けいただき、今後の収入も家に入るようにしてください。」
「なんで?」
「それが、ご当主様からの指示でございます。」
「僕は、商業ギルドの特別会員として、独立した財務管理と納税を行っています。ですから、キング家の介入は不要だとお伝えください。」
「いえ、それでは男爵家としての管理ができません。」
「ですから、リコ・フォン・キングは男爵家とは別の法人となっています。そもそも、リチャードなんて人、一度も会ったことないですしね。」
「そういわれ、あしても、3才の子供が、独立した法人を立てるなど聞いたことがありませんよ。」
「でも、王都の商業ギルドが認めているんですよ。きちんと納税も行っておりますので、必要があればそちらに確認してください。」
「そんな馬鹿なことを!」
「僕は王都に住居も持っていますし、王都での住民登録もしてあります。つまり、男爵家とは別の、独立したキング家当主になっているわけです。」
「3才の子供に、そのようなことが認められるはずはない!」
「あっ、ちなみに僕の後見人はジェラルド公爵家ですから、確認してもらってもいいですけど、失礼のないようにしてくださいね。」

 これらは、すべてシルビアが手配してくれたことだ。
 世の中は、金さえあればたいてい何とかできてしまう。
 ジェラルド侯爵家については、家じゅうの照明を取り替えたので、快適に過ごしてくれているらしい。
 品薄の魔導照明50灯は十分すぎたみたいだ。

「それから、何かあったら、母さんは俺の家に移しますから、よろしくお伝えください。」

 一切の反論ができず、キガネ氏は帰っていった。
 まあ、公的処理に不備はないはずである。


【あとがき】
 3才にして独立した当主に……。あれっ、こんな展開じゃなかったんだけど……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...