魔導師の記憶

モモん

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第一章

第5話 魔剣は訓練に最適だな

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 翌日、ラングーン副隊長に面会にいくと、今日は休んでいるとのことで、自宅に来てほしいと伝言があった。

「自宅……ですか?」
「はい。あちらに見える赤い風見鶏もお屋敷です。」
「なんか大きくないですか?」
「それに、城の隣ってことは……。」
「はい。ラングーン副隊長は、公爵家のご子息ですから。」
「公爵家えぇ!」

 公爵というのは、貴族の爵位で最上級の位で、記憶によれば国王の兄弟から戦功をあげた家に与えられた称号だったはず。
 つまり、国王の一味なのだ。
 というか、俺の後見人になってくれたのがジェラルド公爵家だったか……。まさかね。

 公爵家へは簡単に到着した。
 何しろ、城の門を出てすぐなのだから迷いようがなかった。
 門番に声をかけると、そのまま応接に誘導された。
 門にはかがり火の籠がなく、室内には魔導照明がこれでもかと設置されている。

「ライムさん、ここは……。」
「えっ、ジェラルド公爵家よ。」
「知っていたんですね……。」
「気づいたのは公爵家の子息だって聞いた時よ。」

 その時、副隊長がやってきた。

「やあ、昨日は情けない姿を見せちゃったね。」
「体力を限界まで使ったんですから仕方ないですよ。」
「ああ、ここまで体を追い込んだのは久しぶりだね。」
「魔導師の魔力切れみたいなものですね。」
「ああ、魔導師にもあるみたいだね。まあ、俺の場合は、剣がダメになるから、最近はここまでにはならないんだが。」
「刀身も強化してありますからね。」
「最後まで切れ味は落ちず、さっき確認したが刃こぼれもなかった。」
「魔剣の評価は?」
「俺には最適だが、他の兵士に使わせるわけにはいかない。」
「やっぱり、人を選びますか……。」
「それで、あれは買い取ればいいのか?」
「いえ、お金は要りません。」
「何でだ?」
「あれは、趣味で作っただけですからね。」
「まあ、そういうなら今回は甘えるとしよう。」
「はい。何といっても、ジェラルド公爵家は、僕の後見人ですからね。」
「?……そうなのか?」

 副隊長は、後ろに立っている執事みたいな人に確認をした。

「私もお目にかかるのは初めてなのですが、こちらのお方がリコ・フォン・キング様でしたら間違いございません。」
「ああ、そうか。そういえば、魔導照明を設置した時に、父上がそんなことを言っていたな。」
「はい。さようでございます。」
「リコさあ。」
「はい。」
「この屋敷って、城から丸見えだろ。」
「そうみたいですね。」
「城の中は薄暗いのに、この家は昼間のように光ってるんだよね。」
「そうでしょうね。」
「父上は自慢して回ってるんだけど、その分俺への風当たりが強くてさ。」
「大丈夫ですよ。今月の末から城へも魔導照明の設置が始まりますから。」
「ああ、やっとかよ。」

「じゃあ、今後は何かあったら俺の名前を使っていいからな。」
「はい。ありがとうございます。」
「この魔剣と携帯コンロの対価だと思えば安いもんだよ。」
「あははっ。」
「ところで、相談なんだが……。」
「はい。」
「私には婚約者がいる。」
「それは、おめでとうございます。」
「現時点で、彼女は私の補佐官を務めており、当然遠征にも同行する。」
「……それは……。」
「魔物と遭遇しても、隠れるどころか、私の盾になろうとする。」
「……。」
「何度言ってきかせても、それをやめようとしないのだ。戦場で言い争ったりしたら、それこそ死を招いてしまう。」
「もしかして、緑の髪でショートカットの……。」
「ああ。あれが死なないように、防御力を高めるような魔道具は作れないものだろうか?」
「簡単ですが……。」

「何か問題があるのか?」
「僕の記憶が確かなら、装飾品はつけていなかったようですが。」
「ああ、確かに。」
「そうなると、鎧に仕込むとか。」
「だが、日によって革鎧や胸当て、スケイルメイルなど様々だぞ。」

 そうだろう。
 男性と違って、女性は清潔な状態を好む。
 下着と同じように、鎧も替えていることだろう。
 それならば……。

「このペンダントはミスリル銀でできています。」
「ほう。この赤い石が魔法石なのだな。」
「はい。装着することで、魔法・物理・ブレスに対するシールド効果を発揮します。」
「防御力はどの程度なんだ。」
「ダンジョンでの試験では、Bクラスの魔物の攻撃は無効化できました。それ以上は未確認です。」
「ふむ。兵士全員に持たせたいところだな。」
「とりあえず、副隊長と二人分作ってきました。」
「私も……つけるのか?」
「お揃いだといえば、彼女も抵抗なくつけると思いますが。」
「くっ、わかった。肌着の内側にして、見えないようにしておこう……。」

 セザルの町に戻って、龍の次元の倉庫にアクセスしたのだが、普通に使えたし、更に王都で入れた料理が温かいまま出てきた。
 この見かけのばっぐではなく、実際には倉庫に置いてあるため、汁物がこぼれることもない。
 こちらの出し入れ口は、別にバッグにする必要もないのだが、俺は革を加工してベルトに装備できる小さめのバッグを制作し、そこにこの機能を付与した。

 もうすぐ4才になるとはいえ、子供がオークの死体を持ち歩けるわけもなく、ミスリル銀の運搬には特に重宝した。
 制作した魔道具もどんどん収納し、金貨も3割ほどは入れておいた。

「リコ様。」
「はい。」
「最近、子供が空を飛んでいるのを見たという噂がたっております。」
「き、気のせいじゃないかな……。」
「黒や紫のワンピースのような服を着ていたと。」
「お、女の子なのかな?」
「大体が、王都へ向かうか、山に向かっているそうです。」
「そ、そう?」
「やっぱり、生身で飛ぶのは避けたほうが良いと思うんですよね。」
「シ、シルビアさん……。」
「例えば、馬車とかなら、まだ新型の魔道具とか言い訳できると思うんですけどね。」
「な、なるほど。空を飛ぶ馬車の魔道具ですか……。」

 飛行馬車の試作1号は、空気抵抗が大きく、風切り音と振動が大きかった。
 特に王都へ向かう時は時速600kmなので分解しそうになった。

「早く飛ぶといえば、鳥ですよね。その中でもタカやアジサシが早いみたいですよ。」 

 試作2号は鳥の形にしたのだが、翼を広げると狭い場所で着陸ができない。
 仕方ないので、羽を取り払った鳥型にして、腹ばいで制御する試作3号を作ったが、長時間この姿勢で操縦するのは避けたい。
 結局、球体にして上半分を透明なガラス製にし、ボディーを強化してシールドで保護した。
 上下左右、加速と減速はボタンで操作するスカイボール1号が完成した。

「いいですよね。空飛ぶボールなら、王都までもあっという間なんでしょうね。私も乗ってみたいな……。」

 二人乗りのスカイボール2号の完成だ。
 操作性向上のため、上下左右の操作は竿を使った操縦桿方式にしてみた。
 そして、ギルド長も乗ってみたいと言い出したので、楕円形の6人乗りにし荷物を積むスペースも確保した。
 乗り降りは、中央部にスライド式の乗降口を作ってある。
 更に、セザルと王都の商業ギルドにマーカーを設置して、ボタン一つで自動航行できるように改良した。これがスカイボール3号となる。
 いずれも、下半分はスカイブルーに塗装して、地上から目撃されにくくなっている。

「信じられん。王都まで1時間で行ける日が来るとは!」
「ギルド長、これには私のアイデアも入っているんですから、お給料のアップお願いしますね。」
「馬鹿者、これ以上あげたら俺の給料を超えちまうだろうが!」


【あとがき】
 スカイボール。定番の飛空艇というやつですね。
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