魔導師の記憶

モモん

文字の大きさ
5 / 23
第一章

第5話 魔剣は訓練に最適だな

しおりを挟む
 翌日、ラングーン副隊長に面会にいくと、今日は休んでいるとのことで、自宅に来てほしいと伝言があった。

「自宅……ですか?」
「はい。あちらに見える赤い風見鶏もお屋敷です。」
「なんか大きくないですか?」
「それに、城の隣ってことは……。」
「はい。ラングーン副隊長は、公爵家のご子息ですから。」
「公爵家えぇ!」

 公爵というのは、貴族の爵位で最上級の位で、記憶によれば国王の兄弟から戦功をあげた家に与えられた称号だったはず。
 つまり、国王の一味なのだ。
 というか、俺の後見人になってくれたのがジェラルド公爵家だったか……。まさかね。

 公爵家へは簡単に到着した。
 何しろ、城の門を出てすぐなのだから迷いようがなかった。
 門番に声をかけると、そのまま応接に誘導された。
 門にはかがり火の籠がなく、室内には魔導照明がこれでもかと設置されている。

「ライムさん、ここは……。」
「えっ、ジェラルド公爵家よ。」
「知っていたんですね……。」
「気づいたのは公爵家の子息だって聞いた時よ。」

 その時、副隊長がやってきた。

「やあ、昨日は情けない姿を見せちゃったね。」
「体力を限界まで使ったんですから仕方ないですよ。」
「ああ、ここまで体を追い込んだのは久しぶりだね。」
「魔導師の魔力切れみたいなものですね。」
「ああ、魔導師にもあるみたいだね。まあ、俺の場合は、剣がダメになるから、最近はここまでにはならないんだが。」
「刀身も強化してありますからね。」
「最後まで切れ味は落ちず、さっき確認したが刃こぼれもなかった。」
「魔剣の評価は?」
「俺には最適だが、他の兵士に使わせるわけにはいかない。」
「やっぱり、人を選びますか……。」
「それで、あれは買い取ればいいのか?」
「いえ、お金は要りません。」
「何でだ?」
「あれは、趣味で作っただけですからね。」
「まあ、そういうなら今回は甘えるとしよう。」
「はい。何といっても、ジェラルド公爵家は、僕の後見人ですからね。」
「?……そうなのか?」

 副隊長は、後ろに立っている執事みたいな人に確認をした。

「私もお目にかかるのは初めてなのですが、こちらのお方がリコ・フォン・キング様でしたら間違いございません。」
「ああ、そうか。そういえば、魔導照明を設置した時に、父上がそんなことを言っていたな。」
「はい。さようでございます。」
「リコさあ。」
「はい。」
「この屋敷って、城から丸見えだろ。」
「そうみたいですね。」
「城の中は薄暗いのに、この家は昼間のように光ってるんだよね。」
「そうでしょうね。」
「父上は自慢して回ってるんだけど、その分俺への風当たりが強くてさ。」
「大丈夫ですよ。今月の末から城へも魔導照明の設置が始まりますから。」
「ああ、やっとかよ。」

「じゃあ、今後は何かあったら俺の名前を使っていいからな。」
「はい。ありがとうございます。」
「この魔剣と携帯コンロの対価だと思えば安いもんだよ。」
「あははっ。」
「ところで、相談なんだが……。」
「はい。」
「私には婚約者がいる。」
「それは、おめでとうございます。」
「現時点で、彼女は私の補佐官を務めており、当然遠征にも同行する。」
「……それは……。」
「魔物と遭遇しても、隠れるどころか、私の盾になろうとする。」
「……。」
「何度言ってきかせても、それをやめようとしないのだ。戦場で言い争ったりしたら、それこそ死を招いてしまう。」
「もしかして、緑の髪でショートカットの……。」
「ああ。あれが死なないように、防御力を高めるような魔道具は作れないものだろうか?」
「簡単ですが……。」

「何か問題があるのか?」
「僕の記憶が確かなら、装飾品はつけていなかったようですが。」
「ああ、確かに。」
「そうなると、鎧に仕込むとか。」
「だが、日によって革鎧や胸当て、スケイルメイルなど様々だぞ。」

 そうだろう。
 男性と違って、女性は清潔な状態を好む。
 下着と同じように、鎧も替えていることだろう。
 それならば……。

「このペンダントはミスリル銀でできています。」
「ほう。この赤い石が魔法石なのだな。」
「はい。装着することで、魔法・物理・ブレスに対するシールド効果を発揮します。」
「防御力はどの程度なんだ。」
「ダンジョンでの試験では、Bクラスの魔物の攻撃は無効化できました。それ以上は未確認です。」
「ふむ。兵士全員に持たせたいところだな。」
「とりあえず、副隊長と二人分作ってきました。」
「私も……つけるのか?」
「お揃いだといえば、彼女も抵抗なくつけると思いますが。」
「くっ、わかった。肌着の内側にして、見えないようにしておこう……。」

 セザルの町に戻って、龍の次元の倉庫にアクセスしたのだが、普通に使えたし、更に王都で入れた料理が温かいまま出てきた。
 この見かけのばっぐではなく、実際には倉庫に置いてあるため、汁物がこぼれることもない。
 こちらの出し入れ口は、別にバッグにする必要もないのだが、俺は革を加工してベルトに装備できる小さめのバッグを制作し、そこにこの機能を付与した。

 もうすぐ4才になるとはいえ、子供がオークの死体を持ち歩けるわけもなく、ミスリル銀の運搬には特に重宝した。
 制作した魔道具もどんどん収納し、金貨も3割ほどは入れておいた。

「リコ様。」
「はい。」
「最近、子供が空を飛んでいるのを見たという噂がたっております。」
「き、気のせいじゃないかな……。」
「黒や紫のワンピースのような服を着ていたと。」
「お、女の子なのかな?」
「大体が、王都へ向かうか、山に向かっているそうです。」
「そ、そう?」
「やっぱり、生身で飛ぶのは避けたほうが良いと思うんですよね。」
「シ、シルビアさん……。」
「例えば、馬車とかなら、まだ新型の魔道具とか言い訳できると思うんですけどね。」
「な、なるほど。空を飛ぶ馬車の魔道具ですか……。」

 飛行馬車の試作1号は、空気抵抗が大きく、風切り音と振動が大きかった。
 特に王都へ向かう時は時速600kmなので分解しそうになった。

「早く飛ぶといえば、鳥ですよね。その中でもタカやアジサシが早いみたいですよ。」 

 試作2号は鳥の形にしたのだが、翼を広げると狭い場所で着陸ができない。
 仕方ないので、羽を取り払った鳥型にして、腹ばいで制御する試作3号を作ったが、長時間この姿勢で操縦するのは避けたい。
 結局、球体にして上半分を透明なガラス製にし、ボディーを強化してシールドで保護した。
 上下左右、加速と減速はボタンで操作するスカイボール1号が完成した。

「いいですよね。空飛ぶボールなら、王都までもあっという間なんでしょうね。私も乗ってみたいな……。」

 二人乗りのスカイボール2号の完成だ。
 操作性向上のため、上下左右の操作は竿を使った操縦桿方式にしてみた。
 そして、ギルド長も乗ってみたいと言い出したので、楕円形の6人乗りにし荷物を積むスペースも確保した。
 乗り降りは、中央部にスライド式の乗降口を作ってある。
 更に、セザルと王都の商業ギルドにマーカーを設置して、ボタン一つで自動航行できるように改良した。これがスカイボール3号となる。
 いずれも、下半分はスカイブルーに塗装して、地上から目撃されにくくなっている。

「信じられん。王都まで1時間で行ける日が来るとは!」
「ギルド長、これには私のアイデアも入っているんですから、お給料のアップお願いしますね。」
「馬鹿者、これ以上あげたら俺の給料を超えちまうだろうが!」


【あとがき】
 スカイボール。定番の飛空艇というやつですね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...