魔導師の記憶

モモん

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第一章

第6話 国王の視察

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「なあリコ。」
「はい。」
「今度、陛下の国内視察が予定されているんだ。」
「ラングーンさんも同行されるんですか?」
「ああ。30人の騎馬隊を引き連れて五つの町を回るんだ。」
「大変そうですね。でも、町は全部で10ありますよね。」
「一年おきに、南方面と北方面に分けていくんだ。」
「辺境のセザルまで600キロで、馬車だと10日くらいかかりますよね。」
「5か所を一か月で回るんだ。町の滞在は半日程度なんだが、やめるとなると国民の不満が溜まってしまうからな。」
「お疲れ様です。」

「お前のスカイボールなら、あっという間だよな。」
「まさか、あれに陛下をお乗せしろとか言いませんよね。」
「一か月、毎日馬車で揺られるのは、体にも相当な負担なんだよ。陛下だけじゃなく、王妃様と今回はサラ王女様も同行されるんだ。気の毒だと思わんか。」
「気の毒だと思いますけど、僕には関係のない話ですよね。」
「お前の後見人が困っているんだぞ。助けてやりたいと思わないのか?そうか、お前はそんな薄情な男だったんだな。」
「4才の子供に薄情とか言わないでください。それに6人乗りなんですよ。」
「そこなんだよな。限界まで絞って20人。何とかしてくれ!」

 大型にするとなると、抵抗も大きくなるからせいぜい時速300kmくらいだろう。
 障害物の探知と自動回避を組み入れて……。
 やっぱり箱型にせざるを得ないか。4人掛けの5列と操縦席。
 着陸する場所の確認も必要だし、自動航行用マーカーも設置しておきたい。
 移動に半日かけるとして、午後は視察で、そのまま宿泊。このパターンなら6日で帰って来られるな。

 俺が作成したのは、鉄製で幅5m、長さ8mの箱で、座席数は操縦者を入れて23席の飛行艇だ。
 十分な大きさの窓はつけてあるので室内は明るいのだが、自動点灯の照明がつき、中央部にスライド式の乗降口を配置した。
 王都を含めて、11箇所への自動飛行機能付き。
 障害物回避システムと大口径氷槍発射機能を備えた。

「なあ、ホントにこれが飛ぶのかよ。」
「その検証のための試験飛行でしょ。」

 満席の状態でチェックしたいため、ラングーンさんと総務局から総務局から二人。
 王都とセザルのギルド長に局長級の管理職が乗っている。
 マーカーは城と各町の領事館にセット済みなので、ボタンを押すだけで目的地に向かうことができる。
 予定したコースは東西南北の最遠方地である4箇所の町だ。

「じゃ、出発します。飛行中は絶対に席を立たないでください。」

 何で子供が……とか、ホントに飛ぶのかなどの声が聞こえたが無視だ。
 特に、局長級の貴族からは、侮蔑したような視線を浴びせられたが、飛び始めてからは外の景色に夢中になっていた。

「すまんな。」

 貴族の態度についての謝罪だろう。

「慣れてますから大丈夫ですよ。」
「もし、これに値段をつけるとしたら、いくら位なんだ?」
「そうですね、ドラゴンの魔法石10個と、最高品質のミスリル銀を50kg使ってますから、最低でも金貨2万枚ってとこです。」
「20年使うって考えれば、年に金貨1000枚か。安いな。」

 20分もすると空からの眺めにも飽きてしまったようだ。
 通常運航は高度150mで飛行している。

「すまん。用を足したいんだが……。」
「ああ、一番後ろに簡易トイレがありますからご自由にどうぞ。」
 
 ラングーンさんが案内してくれる。

「外の音がまったく聞こえないんだな。」
「遮音シールドを展開してありますからね。」

 約2時間で西の町セレスティアに到着した。
 出迎えてくれた領主に挨拶して北の町セザルに向かう。

「もう少しクッションを良くしないと、陛下に失礼じゃないかね。」
「別に王族専用に作ってないですからね。まあ、陛下には俺から伝えておきますよ。」
「いえ、総務局から事前にお伝えしてありますから問題ございません。それよりも、10日かかっていた行程が2時間に短縮できたんですよ。それこそ、賞賛に値する発明だと思います。」

 同乗している総務局の女性がフォローしてくれた。

「これほど高速で飛んでいるにも関わらず、風の音がしないし、大きな揺れもない。馬車の旅に比べたら快適すぎるでしょ。それとも、法務局長は辺境への視察は初めてでしたか?」
「魔法局長、こういう魔法と魔道具の開発が、魔法局でできないのは何故ですか?」
「そうですね。大魔導士といわれたマーリン様ですが、書物で残された魔法のレベルが、実は高度なものではなかったことと、魔道具に関する書物がほとんどございませんでした。これにより魔法というのは、この程度のものだと信じ込んでいたのだと推測できます。」
「では、この飛行艇の開発者は、なぜこのような魔法の知識と技術を持っているのですかな?」
「私も、直接話した訳ではありませんが……天才としか言いようがありませんわ。」

 魔法局長マリア・フォン・デパードは、マーリンの子孫にあたるらしい。
 子孫だからこそ、マーリンを否定できるのだろう。

「だったら、そこの子供に、魔法や魔道具の秘密を公開させて、国の発展に役立てるべきではないのかね。」
「ほう、これは驚いた。法務局長は魔道具に書き込む魔法式の秘匿権をご存じないらしい。」
「ぐっ、それは……。だが、個人の利権よりも国家の発展の方が優先されると私は考える。」
「残念ですが、我々魔法師は、魔導照明に使われている魔法すら再現できていません。知識の十分でない者が魔法式だけをコピーして魔道具を作るのは事故につながる恐れがあります。国としては、もっと人材と予算を増やして研究していく必要があると考えます。」
「俺もその考えに賛同しますよ。わがジェラルド公爵家は開発者であるリコ・フォン・キングお後見人ですからね。彼の協力を得ながら、魔法レベルの底上げを考えていきましょうよ。」

 ラングーンさんは俺を見てニヤッと笑った。

 試験飛行は順調に終わった。
 自動飛行も問題はなく、トラブルさえ起きなければ誰でも飛ばせることが可能だとも思えた。
 そして飛行を終えた俺は魔法局長の挨拶を受けた。

「魔法局長のマリア・フォン・デパードです。今日は貴重な体験をさせていただきました。ありがとうございます。」
「ご協力いただきありがとうございました。」
「ところで、我が家は魔導士マーリンの直径なのですが……。」
「はい。」
「初代の残した遺産がございますの。」
「遺産……ですか。」
「はい。フリード・キングという天才魔導士に心あたりはございませんか?」
「……うちの祖先みたいな名前ですね。」
「マーリンが足元にも及ばなかった超がつくほどの天才だったそうです。」
「そんな記録が?」
「興味がおありでしたら、一度当家にお越しいただけないでしょうか。」
「おいおい局長、こんな子供を誘惑ですかい?」
「次期宰相にも同席いただいた方が良いかもしれませんわね。」
「分かりました。いつお邪魔すればいいですか?」

 こうして俺は、次の休日に訪問することを約束した。

「魔法局長のマリアさんっておいくつなんですか?」
「確か俺よりも3才年上だから、35才だな。」
「へえ、その若さで局長なんて凄いですね。」
「まあ、局長のポジションはデパード家の世襲制だからな。」
「マーリンの血筋ということなんですね。」
「ああ。先代が急な事故で他界し、今の当主が18才で若かったから、先代の妹であるマリアが暫定的に局長になったって訳だ。」

 俺とラングーンさんは、手土産を携えてマリアさんの家を訪れた。


【あとがき】
 うん、ここをどう表現するか、難関です。
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