魔導師の記憶

モモん

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第二章

第22話 奴隷商と孤児

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 私は正攻法でいくことにしました。
 前回と同じようにカラータの城に直接乗りつけ、宰相との面会を希望します。

「宰相のゾマドフだ。ティアランドの破壊姫が、このような弱小国に何の用かね。」
「この王都の外周部には、飢えた農民が多数おられるようですが、何か対策はされないのでしょうか。」
「その原因を作ったのはどなたかな?城の修復や兵士の治療。勇者の捜索。いったい、どれだけの費用がかかっているかご存じかな。」
「優先度が高いのは国民の救済ではないのですか?城の修復や、役立たずの勇者など後回しでも問題ないと存じますが。」
「価値観の相違だな。城はこの国の象徴。国民の意識を下げないためには最優先で復旧する。まあ、どちらにしてもティアランドには関係のないことだ。」
「無関係などあり得ません。国は違えど同じ人間が苦しむ姿は見ていられません。」
「クククッ、我々のような優れた人間と、役立たずの屑共を同じ考える方が異常だとは思わんかね。」
「どこが優れているというのですか。その昔、この国を制圧したという歴史があるだけで、その時の強い勢力だっただけではないですか。」
「話にならんな。ティアランドが我が国に対して行った破壊活動に対して、何かしてくれるのかと思ったが、とんだ無駄だったようだ。」
「国が何もしないというのなら、わが国で勝手に救済を行いましょう。異論はありませんね。」
「ああ。民へ支援してくれるのを拒む理由などないぞ。」
「その言葉、お忘れになりませんように。」

「お嬢さま、これからどうなさるおつもりですか?」
「そうね、村長たちと話して、住民の受け入れをお願いしようと思うの。木を切って村を広げ、開墾して農地も増やしていく。」
「ですが、住民とトラブルになりませんか?」
「うーん、どうしようかな……。じゃあ、暮らせそうな島を探して、そこを開発してもらいましょう。領地も増えるし、一石二鳥よ。」
「そんな都合のいい島がありますかね。」

 ドラゴンアイランドの東側にそれはあった。
 ヒーズルの倍くらいの広さがあり、山も川も存在する。
 ドラゴンなどの大型生物は存在せず、中型小型の獣はは豊富だった。

「とりあえず、生活できそうな西側の入り江を開発してみましょう。」

 川沿いの土地を整地し、木を切って開墾していく。
 土魔法で簡単な住居を作って、5組の農民に声をかけ希望者を連れていく。
 
「ゾマドフ宰相の許可はとってあるし、住居や農具も持っていけるわよ。」
「それなら……。」

 
 4軒の農家が住民になった。
 当面の食料はこちらで提供する。
 ティアランド南部で栽培されている作物の種を購入し、農家の人にお金を払って指導もしてもらった。
 毎日、1組から4組程度の人たちを引き抜き、人数が増えるにしたがって、住民に組織ができてくる。

 それらが軌道に乗ってくると、スカウト役や買い出しの人が決まってきて、私たちの役目は送り迎えだけになってきた。
 住民の希望により、猟師や薬師も加わり、徐々に集落として機能するようになってきた。

 私はこの島をヘラ島と名づけ、正式にヒーズル領地として母の了解をとった。
 人が増えてきたので、漁業を導入する。
 ヒーズルの港で移住希望者を募り、船を購入して魔導船に改造し、漁に出てもらう。
 人口が500人を超えた頃には、農作物の収穫も始まり、自給自足が定着してきた。
 多少、余裕も出てきたので、住民の了解を得て、孤児たちを受け入れてもらう。
 
 こうして、徐々にではあるが、カラータの貧民区から人が減ってきた。
 特に、孤児が減ったことで、奴隷商の打撃は大きいようだ。
 商品となる奴隷が確保できないのだから当然である。

「お嬢さま、奴隷商人たちは、周辺の町や村へ出るようになってきましたが、どういたしましょう。」
「当然、町からも孤児を連れ出すわよ。さあ、頑張りましょうね。」

 ヘラ島では、仕事はいくらでもある。
 農業だけでなく、網の手入れや貝類や薬草の採集。
 家畜の世話などだ。
 こうなってくると、奴隷商人との争奪戦になってくる。

「おい、島の方はどうなってるんだ?」
「カラータ国内の周辺の町で孤児を集めてます。」
「子供か……、軍で手は出せないが、訓練で飛行艇を出すくらいはできるぞ。」
「おじ様……。」
「勘違いするなよ。お前たちが集めた子供を運ぶだけだからな。間違っても、人さらいの片棒は担げないからな。」

 こうして、輸送量は倍になった。
 更に、私とミーシャが別の機体を操縦することで、一度に60人の輸送が可能となった。

「何だお前たちは!」
「ゾマドフ宰相の許可をいただいて、孤児を保護しています。」
「バカな。宰相がそのような許可を出すことなどありえん!」
「あら、宰相ははっきりと”民を支援してくれるのを拒む理由などない”と明言されましたわ。」
「くっ、これのどこが支援だというのだ。」
「カラータで十分な対策ができていないので、子供を保護しておりますのよ。子供たちは、十分な環境で暮らしてもらうのでご心配なく。」
「だが、我らの商売を邪魔するのは妨害行為だず。」
「邪魔などしていませんわ。そちらが先に保護した孤児はそちらで面倒をみてくださいな。」
「ただ、誘拐はこの国でも犯罪ですわよね。全員から聞き取りさせていただいてもいいんですよ。」

 カラータでは人身売買は違法ではない。
 つまり、奴隷商人も職業として成立するのだ。
 それが孤児もしくは親からの買い付けならば問題ないが、誘拐は犯罪行為となる。
 問答無用で子供たちを確保する彼らには、後ろめたいことが山のようにあるし、確認のためにとられる時間的余裕もないはずだ。
 ここを問いただせば、彼らは引き下がらずを得ない。

 私たちは子供を保護し、貧しい農民を勧誘して町を広げていった。
 町に礼拝所を作り、ヘラが時々姿を見せるようになると、子供たちは礼拝所の周辺に花を植えるようになった。
 花卉栽培も立派な産業になりうる。
 それは町に任せることにした。

 1か月半後のこと。私はゾマドフ宰相から書簡を受け取った。
 内容は苦情だった。
 奴隷商から、事業の妨害を受けていると申し立てがあったそうだ。
 国民への支援は許可したが、奴隷商の妨害は許可していないという趣旨だった。
 翌日、私はミーシャを伴ってカラータ城を訪れた。

「さて、何故奴隷商の事業を妨害している。そのような許可を出した覚えはないぞ。」
「心外ですわ。妨害などした覚えはございません。」
「だが、現に奴隷の確保が困難になっており、高騰しているのだぞ。」
「私が行っているのは、孤児の保護だけですわ。奴隷商の捉えた子供を横取りしたり、意図的に邪魔したことはございません。」
「だが、現に確保できる子供がほとんどいなくなっているというではないか。」
「見つけた孤児は保護しておりますので、数は減っていると思いますわ。」
「それが妨害だというのだ!」
「孤児が減れば、治安はよくなっているのでは?盗みも減りますし、その他の犯罪も減少。廃屋は問題なく処分できますし、例えば孤児院などの運営も楽になっていると思いますが。」
「この国に、孤児院など存在しない。」
「まあ、そうでしたの。そうであれば、子供は貧しい農家から買い取れば良いではないですか。」
「その、貧しい農家が減っているというのだ。」
「それは、国が豊かになってきた証拠ではありませんか?」


【あとがき】
 カラータへの内政干渉じゃないですか。勇者がどうなったのか気になる。
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