人生ゲーム

第弐拾章

Replay

　「皆様お疲れ様でした。4週目に移る前にこれまでの振り返りを致しましょう。」

　カオスはこれまでの振り返りを始めた。

　「3週目ゼウス様が7マス進まれました。その後、メーティス様が4マス進まれたことで運命イベントが発生致しました。続いてハデス様が4マス進み、次にアマテラス様が10マス進まれました。ポセイドン様が1マス、ガイア様が4マスと進まれましたが、特に大きな変化は無く、お二人共順調に駒を進められておられます。」

　カオスが話を続ける。

　「そして、最後のウラヌス様がサイコロをふられましたが、見事運に救われ5マス進まれたことで現状トップに踊り出られました。しかしながら、こちらのマスでは意外な展開になりました。」

　カオスが少し驚いた表情で言った。

　「ゼウス様とアマテラス様のコマは同じ学校に通う同級生。こちらの御二方に関しては繋がりを持たれていてもおかしくはありませんでしたが、ハデス様とポセイドン様を除く全員が間接的ではありますが、ゼウス様のコマである学生大山和真と繋がりがあろうとは･･･。このメンバーが選ばれたことは運命だったのかもしれませんね。」

　カオスは話終えると不敵な笑みを浮かべた。

　「しかしながら、ハデス様のコマは未だ正体すら分からず、全てが謎に包まれており、掴みどころが無くハデス様そのものを見ているようですね。今後どのようになられるのか楽しみでなりませぬ。」

　カオスがハデスを見て言った。その、何かを訴えるような目にハデスが軽く口元をニヤリとさせて返す。

　「カオスよ、貴様きさまの発言はゲームのスパイスにも毒にもなりうるぞ？軽口をあまり言わないことをお勧めしよう。」

　ハデスの言葉にカオスがお辞儀をして言った。

　「失礼いたしました。ハデス様に対する非礼ひれいをお詫び致します。」

　すると、今まで黙っていたゼウスが口を開いた。

　「すまないなハデス。カオスも悪気があっての事ではないのだ。許してやってはくれぬか？それに、このゲームにはもうひとつの楽しみもあるやもしれぬぞ？」

　ハデスがゼウスの言葉に興味を示した。

　「もうひとつの楽しみとな？それはそれは、少しばかり興味をそそられますな。して最高神殿？その楽しみの内容をお聞かせ願えますかな？」

　ハデスがゼウスに問いかける。しかし、ゼウスは何も打ち明けることはなかった。

　「このゲームにルールの説明は不要だったのでは無いか？私の単独の判断ではあるが、これはルールのひとつとし皆で身をもって体験してもらいたい。」

　ゼウスの言葉にハデスが何かを悟ったように笑う。

　「さすがは最高神殿だ。ゲームの楽しみ方をわかっておられる。いいでしょう、では自らでその楽しみを味わうとしましょう。楽しみは多い方がゲームも楽しいですからな。」

　そういうと、ハデスが静かに盤上に目を向けた。しかし、納得の行かない者もいた。

　「お待ち下さい！最高神様の意向とは言え私わたくしは納得できかねます。皆みなの命がかかっている以上は説明をして頂かねば、それが運命イベント同様に命を脅かすものやもしれませぬ。」

　ウラヌスが立ち上がりゼウスに言った。しかし、ウラヌスの申し出がゼウスに届くことはなかった。

　「ウラヌスよ、言いたいことも分かる。しかし、このゲームが開始される以前、ルールの説明は不要と判断された。これはルールのひとつだ。今更進行を変更することは出来ん。皆も納得の元ゲームを開始したはずだが？」

　ゼウスの言葉にウラヌスはぐうの音も出なかった。確かに自分もこのルールで始めることを認めていた。ウラヌスはそう思うしかないのだと悟った。

　「そう･･･でしたな。無礼な意見お許し下さい。」

　ウラヌスがゼウスに謝罪の意を示す。

　「よい、頭を上げよウラヌス。しかしながら不安要素は消しておこう。少なくとも運命イベントのように命を脅かすものでは無い。」

　ゼウスの言葉にハデスを除く全員が肩を撫で下ろす。

　「しかしながら、下手をすれば命を脅かすものになりうるかもしれぬ。彼ら下界の民の手によって･･･。」

　これにはアマテラスも疑問を隠しきれなかった。

　「どういうことですか？我ら神々が愚かなる人類の手によって滅ぼされるということですか？彼らにはなんの能力ちからもないのですよ？」

　しかし、ゼウスの言葉は意外なものだった。

　「その人類にも危険視せざるを得ない者もいるということだ。」

　ゼウスの意味深な発言に一同がザワつく。しかし、約1名そんな中でも冷静な者がいた。

　「それ以上はやぼってものですな。せっかくの楽しみがなくなってしまうではありませぬか？気になるのであれば自身で体感すれば良いだけの話。違いますかな？」

　ハデスが笑みを浮かべて言った。

　「最高神殿も口が過ぎますぞ？これ以上は何も言わないで頂きたいものですな。」

　ハデスの言葉にハデスが応える。

　「確かに、ハデスの言う通りだ。少し話しすぎてしまったようだ。これ以上は各々おのおので身をもって体験して貰うこととする。」

　ゼウスの言葉に一同は再び緊張を取り戻した。

　「皆の身が締まったところでゲーム再開とする。待たせたなカオスよ。ゲームを再開してくれ。」

　ゼウスの言葉にカオスがお辞儀をした。

　「それでは改めましてゼウス様よりゲーム再開と致します。皆様のご武運をお祈り致しております。それでは、ゲームスタートです！」