市霊狩り

美味しい肉まん

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作戦会議

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 私は彼女達に名前を告げた、二人とも驚いている。
「あの時の渡辺茉希さんなの? 本当に?」
私は免許証を見せる。
「どうして貴女が……」
「硬っ苦しいのはここまでで良いかな?」
「これからはキョーコさんとオッサンと呼ばせて貰うよ!」
「アタシの事は気軽にマキって呼んでいいよ」
「おいおい! そんな簡単に言うけどよ、一体今迄どうしてやがった? それにお前の力は何なんだ?」
「質問が多いよオッサン」
「貴女そんな娘だったかしら、とてもというか随分と雰囲気が違う様な?」
「色々あってね、今は一応大学生だよ。」
「これ見てみて」
槍を見せる。そうこれは三角槍。呪いや悪霊の類を穿き斬り捨てる。退魔の槍
「あんときゃ暗くて良く見えねぇし、普段は白い布で隠してたが……」
「まさか、貴女!」
「マキって呼んでキョーコさん、じゃ無いと答えないよ」
「それじゃマキ教えて」
「あいよ!」
 そこからアタシはあの事件以来、何かが吹っ切れた事。『師匠』と出会った事、戦う術を学ぶ為に、薙刀と弓道を習った事。そして白山にて霊力を高め、この三角槍を作り上げた事を二人に話した。
「おいおい何なんだお前はよ? 師匠だ? どういう事だ!」
「まぁまぁ師匠ってのは、人間じゃない。アタシにもある日、声が聴こえてきてね」
「こんな時の為に、アタシに正しい霊力の使い方を教えてくれた。高一の時だったかなぁ?」
良く言われたっけ『慌てず急がず正確にな』って
「じゃあ予見していたと言うの?」
「そうなるね。アタシも苦労したよ単位も取らなきゃ行けない……」
「じゃあ無くって! 何で早く私達に教えてくれなかったの」
「五年前の事件の当事者が語って信じてくれる?」
そう言うと静かになった。
 五年前私は、人をこの世を恨み憎んだ。沢山の人に迷惑をかけた。ただ一人だけアタシを救ってくれた人がいた。最も憎くて愛している人だ。そしてこの能力を上手く使いこなせるのに三年かかった。今度はアタシの番だ!
「そういう訳でこれからヨロシク!」
「あとさぁこれ何だけど」
アタシは自分の鞄からいくつか取り出すと、二人に放り投げた。
「アタシからのプレゼント」
キョーコさんには大量の剣先が四方を向いている小さな三角剣と御守りを渡す
「それ、ちゃんと身に付けておいて。大抵の幽鬼なら軽く弾き飛ばすから」
御守りは小さな三角剣が、三つ連なった物で出来た首飾りだ。キョーコさんは急いで首にかける。
「オッサンにはこれね」
小さな三角剣が四つ付いた腕輪を渡す
「それで取り憑いた人を、ちゃんと霊気を込めて殴れば人間の身体じゃなくて。取り憑いた幽鬼だけを殴り飛ばせるから」
「最初は、物凄く抵抗感を感じるかもだけど。しっかり霊気を込めれば、人間は無事幽鬼だけをぶっ飛ばす事ができるよ! でも霊気を込めないと、普通に人間をぶっ飛ばす事になるからね! 要注意!」
ついでに首飾りも渡す。
「キョーコさんにあげたそれは、今まで以上の結界が張れるように作ったんだ! 剣先が四方を向いてるでしょ?」
「これなら三角剣の剣先を、多少雑においても剣先同士で線が結ばれて。今より強力な結界が張れるようになるよ!」
「試しにこの家の結界を作っている物を置き換えてみ?」
頷くとキョーコさんは置き換えに行った。
「でよ、何で今頃マキはやって来たんだ?」
「さっき言ったじゃん、修行不足だったからだよ。準備が良いのは悪い事じゃないでしょ? 中途半端に降りてきて犯されたくないし」
 其処まで話すと家の中の空気が変わる
「ん!? 気付いたオッサン?」
「おう何か背筋がピンとするような感じがする」
「終わりました」
キョーコさんが戻ってくる、家の中に入り込んでいたであろう雑魚幽鬼の気配が消える。
キョーコさんの顔色もだいぶ良くなって居る。
「マキこれは、あなたが作った物なの?」
「そうだよ~! 結構苦労したんだから!」
「きっと物凄く苦労したでしょう?」
「いや別に? 師匠との約束だからね。迷惑かけた分この街と自分を守れって!」
「アタシにとって師匠の教えは大切なんだ! だから此処まで準備を進めてきた!」
「師匠師匠って言うがマキよ、お前の家族は何も言わなかったのかよ?」
「ああもう死んじまった、ジジイもオヤジも。まぁ、お母さんは家を捨てて。二人で別の街で暮らそうって。そんな時だった、師匠の声が聞こえたのは……」
「ちょっと待って! 師匠って人間じゃ無いの?」
「さっき言ったじゃん!?」
「そっそうだったかしら……」
「しっかりしてよキョーコさん!」
「まっそういう訳だから。これからヨロシクね!」
「京子ちゃんは大丈夫かい?」
「もう不覚は取りません!」
その目には光が宿っていた。
「じゃあ今日は解散!一日休んで鋭気を養い、明日から本格的に行動開始ね! はい!解散!!」
「何処に集まるんだよ?」
「そうねぇ~アタシのアパートに来て」
住所を書いて手渡す
「じゃあ今度こそ解散!」

 鷲尾さんが去り、私がバイクに跨るとキョーコさんが話しかけて来た。
「ありがとう!マキのおかげで殺る気が出てきたわ」
何か物騒な言い回しだけど、気のせいよね?
「いいからいいからまた明日ね!」
そう言ってバイクを走らせた。


◇ ◇ ◇

 マキと鷲尾さんが帰って行った。家に入る身体を襲う甘い疼きはもう無い。何よりも闘志が湧いてきた。許せない……許せるはずがない幽鬼共は全て消し去る。私を辱めた事を後悔させてやる。
 リビングに着くと窓ガラスが割れていた事を思い出す。あの女への怒りも思い出す、よくも私を……其処まで思い出して顔が真っ赤になる。
「とにかく覚えてなさいよ!!」
リビングで叫んだ。

◆ ◆ ◆

 「ぶえっくし!!」
 やっぱ冷えるなぁこのアパート、ストーブに火を点ける。アタシが住んでるアパートは狭いが、大事な場所だ。この部屋が空いてると聞いて。すぐにお母さんに頼み込んで一人暮らしをさせてもらった。
 さてどうするか……御守りと手持ちの道具を確認する。ちょっと減ってるな、不安だ白山のジジイに電話するか。
 
 電話を切る、文句ばっかり垂れるんだよなぁあのジイさん。まぁ補充はこれでどうにかなるとして。
 
 三角槍を見る、師匠見ていてください。この街は私達で守ります、どうかお守りください。いつもの祈りだ、届いているだろうか? いや、きっと届いて見守ってくれている。
 
 師匠は、私に霊力の使い方と何か武道を覚えるように言ってたっけ……槍にしたのは、そうしろって言われたからだった。師匠と白山のジイさんと四苦八苦して作った物だ、初めて手に持った時。しっくりと馴染んだ重さも感じなかった。腕に嵌めている腕輪そして首飾りその他の道具は、その時の副産物である。
 そういえば神木何本切ったっけ……遠い目をする……其れよりも日課のトレーニングだ! これだけは毎日欠かさない。
 トレーニングしながらほくそ笑む、あの二人ビックリするかな?

 翌日眠っているとドアをノックされる。この安アパートには呼び鈴もインターホンもない。時計を見るともう昼近くだった。
「どなた~?」
「俺だ鷲尾だ、京子ちゃんも居る」
 ドアを開けて中へと案内する
「お前がまさかココに住んでるとは思わなかったよ」
冷えてしまった缶コーヒーを二人に配る
「そうかなぁ~しょうがないじゃん」
「鷲尾さん御存知何ですか?」
「この部屋にはアイツが住んでいたんですよ……」
「彼が!? じゃあ何でマキが……」
「今の主はアタシだ文句ある?」
「マキ、貴女少し彼にも拘り過ぎてない?」
「運命の巡り合わせってあるよね~アタシあの人の事を、憎んでもいるし愛してもいる。不思議な感情」
「まぁ? あの人とは色々あったんだよ」
「そっそう? それよりも貴女ねぇ! 窓ガラス弁償しなさいよ!」
「しょうがないじゃん、それともあのままで良かったの? きっと狂い死んでいたろうね」
「ぐっ!」
「そんな事よりこの部屋にある物は何だ?」
ナイスオッサン! 話が逸れた
「これは幽鬼共に、いやそれ以上の存在とぶつかった時の為の道具」
「役に立つのかねぇ……ってか多過ぎないか?」
「何が役に立つのかわからいでしょ? 作っておいて損はない、むしろ足りないぐらいさ」
「わかったよ、そんじゃ今後の事だ! どう動く?」
キョーコさんが不貞腐れているが気にしない
「三人で行動するのは基本ね、とにかくお互いの背中を預けて行動する」
「絶対に夜の街では一人にならない事……あっ!」
「何だよ?」
「オッサンは別にどうでもいいや」
「んだっと!」
「だって幽鬼は女は犯すけど、男は殺すだけでしょう? オッサンなら問題無し!」
「ほんっとお前なぁ!」
「夜警をする時は、まずアタシがオッサンと合流。最後にキョーコさんを迎えに行く」
「異論は?」
「まぁ安全に行くに越したことはないな」
「私にも異論はありません」
「よっし! 決まりだな」
オッサンがそう言うと、三人で頷く。するとキョーコさんが部屋の中を見渡して『それ』を見つけて指差しながら聞いてきた
「そこに飾られてる三角剣は?」
「『師匠』が作った、最後の二振りの云うなれば『真三角剣』だよ」
「あれは、慈光寺に奉納したはず! 師匠ってまさか……」


そうアタシの師匠の名前はヤガミタケシ
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