黎明が紡ぐ夜の物語

のどか

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焦がれ続けた夜明けを恐れる

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すぐに戦力外だと送り帰すつもりだった。
死なせないうちに、あいつが醜いものを見てしまう前にお袋たちのところへ帰してやるつもりだったのに。
それなのに、覚悟のしるしに切り捨てた髪が元の長さまで伸びた今でもあいつはまだ俺の側にいる。
あのころよりずっと、俺の近くにいる。
人の気も知らないで俺が背中を預けてしまえるほどに強くなりやがった。
あいつが、もっとずっと弱くて、守ってやらないとすぐに死んでしまうような普通の女だったら、足手纏いだと切り捨てられるほどにか弱い女だったなら、あいつが泣こうが喚こうが安全なところに置き去りにできたのに。
遠ざけようとすればするほどに、似合いもしねぇ剣を振り回しては武勲を立てて俺を困らせる。
ドヤ顔で勝ち気に笑って見せる姿に安心して、胸が痛んで、苦しくなって。
どんなに否定してもあいつが俺の側にいることに安心している。
側に置いておくことができるのなら、このわがままを正当化できる理由が作れるのなら、この悪夢がずっと続けばいいと願いそうになるほどに俺は―――…。



「本当に、どうかしている」

手を放さなくてはならない。
どんなに心が痛んでも。必ず。
誓ったはずだ。見てきたはずだ。理解したはずだ。
あの笑顔を守ると。
泣きそうな顔で剣をとる姿を。
戦場(俺の側)になどあいつの幸福はないことを。

「わかって、いるさ」

甘い夢を見ているだけだ。
これから先の絶望に負けてしまわないように、思い出だけで夜の闇の中を照らして歩いていけるように、最後の施しを受けているだけだ。
この肩の重みも、あどけない無防備な寝顔も、あと少しすれば終ってしまう儚い夢だ。
すぐにこの手から零れ落ちて届かなくなる幻だ。
だから、あんな顔してあんなこと言うな。
後悔してないなんて、望んで俺の側にいるんだなんて、言うな。
偽りが欠片も見つからないような顔でそんなこと言うな。
揺らぐ。
この炎のように。
固めたはずの覚悟が、決意が、誓いが、揺らぐ。
爆ぜそうになる。
抑えつけた心が、目をそらし続けてきた感情が、激しい主張と共に弾けそうになる。

「……あたしが、まもるんだ。」

小さく零された言葉にハッとして視線を落とせば、くぅくぅと寝息を立てる女の顔がある。
考えを読まれた訳じゃないことに安心して、寝ているくせに無意識に俺の心を掬いあげることに腹が立って、小さな身体と共に寄せられる心に泣きたくなる。

「誰が、お前なんかに守られてやるか。
 ……夢の中くらいそんなもん持たずに大人しくしてろ。」

こんな場所でそんなに、幸せそうに笑うなよ。
頼むから、泣いて、怯えて、拒んでくれ。
じゃないと俺は本当に――――。

望めば望むほどに思い知らされる。
手を伸ばすことさえ許されない存在があることを。
夜が明ければこの手は離さなくてはならない。

夜明けが近づく。

次の城を落とせばこの国の長い長い夜が明ける。
その時俺はこの手をちゃんと離してやれるだろうか。




焦がれ続けた夜明けを恐れる
(“平穏”を与えてやれない俺に)
(お前を繋ぎ止める資格などない)
(夢の終わりが近づく)
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