黎明が紡ぐ夜の物語

のどか

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なんとなくそれまであたしの視線から逃げていた瞳が真っ直ぐに向けられる。
なにを言われた訳でもないのにズキンと心臓が痛んでじわりと嫌な予感が胸を覆った。

「選択肢…?」

声が震える。
逃げ出したいくらいに頭の中で警鐘が響くのにアンタの真剣な目から逃げる術をあたしは持ってない。

「兄上――新王がお前を寄こせと言って来た」

静かな声だった。
あぁ、絶望は忍び足で近寄って気付いた時にはもう遅いって本当なんだ。
そんなことをぼんやりと考えながらも言葉は勝手に喉を上って音になった。

「……あたし?」
「お前だ」
「……剣士、として?」
「なにも聞いちゃいねぇが、……普通に考えればそうだろう」
「笑えねェよ。なんだよそれ……!」

小さな沈黙が痛かった。
躊躇うように、誤魔化すように、自分に言い聞かせるように溜められた間がいやに生々しくて、渇いた笑いさえ漏れなかった。
痛かった。
あの柔らかな拒絶なんて比べ物にならないくらいに痛くて悲しくて苦しくて、死にそうだった。

「なにが不満だ。
 国が機能するまでは、落ち着くまでは、警護が固められている王宮が一番安全だ。
 おおよその見通しが立つまで安全な場所で」
「……ない」
「ディアナ?」
「アンタが、いない!!」

涙で揺らぐ視界で捕えたアンタの顔はぼやけてた。
それでも目を見開いて表情をこわばらせたのは分かった。
だけど、止まらなった。

「あたしは、あたしは、そんなの欲しくない!
 安心も安全も平和も平穏も、あんたが側にいないなら、そんなのなんの価値もない!!」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!!
 ……冷静に考えろ!」

「あたしは冷静だ!!言ったはずだ望んでここにいるって。
 国とか民とか、革命とかそんなもんの為に剣を取った訳じゃない!!そんなのどうでもいい!!
 あたしは、あんたの側にいるために剣を取ったんだ!!」

アンタが、父さんやおじさんに連れられて怖いところに行くのが嫌だった。
アンタの背中を見送るしかない自分が嫌だった。
だから、剣を取った。
アンタの側にいるために、ずっとずっとアンタの近くにいられるように、強くなろうと思った。
泣きそうな顔であたしに触れなくなったアンタの手を自分で引き寄せたように。
あたしを抱きしめることを躊躇うようになったアンタに自分から抱きついたように。
アンタを追いかけるために取った剣だ。
それを振るうのも手放すのも全部、アンタが理由だ。

「他のなにかの為には振らない。
 アンタに最前線を押し付けて、安全なとこで偉そうにふんぞりかえってただけのヤツの為なんかにあたしは動かない!!」

だから、お願い。
置いて行かないで。
アンタが離すならあたしが掴むから、あたしを置いてひとりで遠くに行かないで。
あたしの手が届かないところに行かないで。


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(あたしの、声は、涙は、心は、)
(どうすればアンタの心に届きますか?)
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