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壱
安心
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父親たちが自分の歩く道を選んだ日を回想しながら物思いに耽っているなど思いもしない紫月は雅冬の私室で眠る雅冬に付き添っていた。
すべてを諦めた目をした弟より2つ年下の幼子。
どうしてと思わずにいられなかった。
こんなに可愛らしいのに。
どうしてもっと――――――……。
自分がどれほど考えても詮無きことだと理解しながらも考えずにはいられない。
「……しづき」
「目が覚めましたか?」
「ゆめ、じゃなかった……?」
「ふふ、夢ではございません。紫月は雅冬様のお側におりますよ」
「っほんとうか?」
「はい」
「ずっとか?」
「もうおひとりになどして差し上げませんので覚悟なさってくださいね」
「~~~っうわぁああああんん!!!」
また声を上げて泣き出した雅冬を優しく抱きしめ背中を撫でてやる。
そんなことされたことのない雅冬はますます涙が止まらなくなって必死に自分を包み込むぬくもりにしがみついた。
途中、泣き声を聞きつけてこっそりと様子を見に来た雪雅たちに気付かないふりをしながら紫月はこの我慢強く哀しい幼子に心を尽くすことを改めて誓った。
「落ち着かれましたか?」
雅冬の涙が落ち着くのを見計らって声をかけ、目尻にたまっている涙をそっと拭ってやる。
紫月の手が離れると同時にうつむいてしまった雅冬に紫月は首をかしげる。
「雅冬様?」
「ごめん、なさい」
「どうして謝られるのですか?」
小さな小さな、蚊の鳴くような声で謝る雅冬に優しく声をかける。
謝られるようなことなどなにもされていない。
「だって、こまらせた。
きものも……
ごめんなさい」
うつむいたままぎゅっと小さな手のひらを握りしめる雅冬に改めて、彼がどれだけ我慢をしてきたのかを知った気がした。
「失礼します」
何かに怯えるように体を小さくしている雅冬を膝の上に抱き上げる。
「雅冬様はお優しいですね。
だけど、こんなの全然たいしたことないですよ。
着物なんてそのうち乾きます。
だから、もっともっと、私を困らせてください。
たくさんわがままを言って、たくさんたくさん」
それでもまだ、体を縮こまらせて固くしている雅冬に紫月は言葉を紡ぎ続ける。
少しでも雅冬が安心を感じられるように、その孤独が薄まるように。
「そして、いっぱいお話しましょう。
お勉強も剣術の稽古も遊びも一緒に色々なことをしましょう」
「……きらいにならない?」
おずおずとかけられた声にもちろんですと微笑む。
それでも雅冬は不安なようで強く紫月の羽織を握りしめ、瞳を揺らしながら言葉を続ける。
「やっぱり、いらないっていわないか?」
「はい」
「ずっといっしょにいてくれる?」
「雅冬様が望むままに」
にっこりと笑った紫月に雅冬はようやく安心したように紫月の羽織を握る手をゆるめた。
すべてを諦めた目をした弟より2つ年下の幼子。
どうしてと思わずにいられなかった。
こんなに可愛らしいのに。
どうしてもっと――――――……。
自分がどれほど考えても詮無きことだと理解しながらも考えずにはいられない。
「……しづき」
「目が覚めましたか?」
「ゆめ、じゃなかった……?」
「ふふ、夢ではございません。紫月は雅冬様のお側におりますよ」
「っほんとうか?」
「はい」
「ずっとか?」
「もうおひとりになどして差し上げませんので覚悟なさってくださいね」
「~~~っうわぁああああんん!!!」
また声を上げて泣き出した雅冬を優しく抱きしめ背中を撫でてやる。
そんなことされたことのない雅冬はますます涙が止まらなくなって必死に自分を包み込むぬくもりにしがみついた。
途中、泣き声を聞きつけてこっそりと様子を見に来た雪雅たちに気付かないふりをしながら紫月はこの我慢強く哀しい幼子に心を尽くすことを改めて誓った。
「落ち着かれましたか?」
雅冬の涙が落ち着くのを見計らって声をかけ、目尻にたまっている涙をそっと拭ってやる。
紫月の手が離れると同時にうつむいてしまった雅冬に紫月は首をかしげる。
「雅冬様?」
「ごめん、なさい」
「どうして謝られるのですか?」
小さな小さな、蚊の鳴くような声で謝る雅冬に優しく声をかける。
謝られるようなことなどなにもされていない。
「だって、こまらせた。
きものも……
ごめんなさい」
うつむいたままぎゅっと小さな手のひらを握りしめる雅冬に改めて、彼がどれだけ我慢をしてきたのかを知った気がした。
「失礼します」
何かに怯えるように体を小さくしている雅冬を膝の上に抱き上げる。
「雅冬様はお優しいですね。
だけど、こんなの全然たいしたことないですよ。
着物なんてそのうち乾きます。
だから、もっともっと、私を困らせてください。
たくさんわがままを言って、たくさんたくさん」
それでもまだ、体を縮こまらせて固くしている雅冬に紫月は言葉を紡ぎ続ける。
少しでも雅冬が安心を感じられるように、その孤独が薄まるように。
「そして、いっぱいお話しましょう。
お勉強も剣術の稽古も遊びも一緒に色々なことをしましょう」
「……きらいにならない?」
おずおずとかけられた声にもちろんですと微笑む。
それでも雅冬は不安なようで強く紫月の羽織を握りしめ、瞳を揺らしながら言葉を続ける。
「やっぱり、いらないっていわないか?」
「はい」
「ずっといっしょにいてくれる?」
「雅冬様が望むままに」
にっこりと笑った紫月に雅冬はようやく安心したように紫月の羽織を握る手をゆるめた。
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