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序章~愛する我が家に帰ってきました~
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私たちの世界はずっとふたりっきりだった。
パパもママもジオたちも大好きだけど、望めば側にいてくれたけど、手を伸ばせば届く距離にいつもいてくれたけれど、だけど、私たちの世界はずっと私と片割れ(弟)だけで構成されてたの。
Licht(ひかり)を見つけるまでずっと。
「姉さん、今日兄さん帰ってくるって」
「本当ッ!?どどどどうしよう!服!服―――っ!!あああ髪の毛も!!
どうしてこんなギリギリに言うの!バカ――――ッ!!」
双子の弟であるアルバの言葉にセイラは作りかけの報告書を放り投げてクローゼットに駆けこんだ。
あれでもない、これでもないとポイポイ放り投げられて行く服を回収してはきちんとハンガーに掛け直して行くアルバは本当によくできた弟だと思う。
最近少しだけ自分たちが本当に双子かどうかを疑う時さえあるくらいだ。
だってヤツのほうがずっと器用で、いつも余裕で、本当に顔以外で似ているところはほとんどないと思う。
まぁ、そんなことを言っても信じてくれるのなんて両親とジオ一家、それから兄様くらいだろうけれど。
「どうしようっ!!こんなことならもっと雑誌とか見て勉強しとくんだった!!
とゆーか私徹夜明け!顔酷い!死んでる!
うわぁああんパパのバカーーー!!」
「はぁ…。姉さん、それは?そのふんわりしたやつ」
「ダメ!だって兄様に買って貰ったやつだもん!絶対に汚せないの!永久保存なの!!」
「……。兄さん、喜ぶと思うけどな」
「!?」
「姉さんがそれを着てるとこが見たくて買ってくれたんだと思うけど」
「!!」
「さっさと着替えなよ。髪と片付けは俺がやってあげるから」
……私、お姉ちゃんだよね?双子だけど、たった数十秒の差だけど、でも、私が年上だよね?なにこの年下の駄々を捏ねる妹を宥めてます、みたいな顔。
イラッとしたセイラはアルバの頭を軽く叩いて大事にワンピースを抱えて着替え始めた。
背後で呆れたような疲れたような溜息と理不尽だという小さな呟きが聞こえたのは気の所為だということにしておく。
お姉ちゃんからの愛の鞭だよ!弟。
ソワソワと落ち着かない様子で座っている姉に微苦笑を零しながらアルバは丁寧に艶やかな髪を梳く。
「ねぇアルバ。兄様はまだよね?お出迎えには間に合うわよね?」
「さっきジオが迎えに出たとこだから大丈夫だよ」
「はやく!はやく可愛くしてね!!」
「はいはい。分かったからじっとしてて」
完全に乙女モードに突入したセイラを呆れ顔で宥めながら手は作業を続ける。
鏡に映る期待と不安を綯交ぜにしたような顔には、下心丸出しで父の後を継ぐといいきった傲慢さや、『目的の為なら手段は選ばない。全部まとめて引き継いでやるからさっさとその椅子を寄こせ』と父相手に喧嘩を売った凛々しさは欠片も見当たらない。
そこにいるのはただの恋する女の子だ。
今、そんなセイラの心を一杯にしているのは間違いなく、物心がつくころには寄宿舎のある学校に入って長期休暇にしか帰って来ない兄だろう。
血の繋がりのない兄は一緒にいられる時間が少なくてもアルバにとって誰よりも頼りになって、尊敬している兄さんだし、セイラにとっては自分とふたりだけだった世界を広げていつの間にかその心の大半を占めるようになった存在だ。
アルバは恋だの愛だのというのはまだイマイチよく分からないけれど、それでもセイラがこんな顔をして健気(?)に待ち続けている相手をする相手はリヒトだけだから、片割れである自分くらいは協力してやってもいいと思う。
まぁ、あの難攻不落な鈍感兄がセイラに完全攻略される時まではひとり占めは認めないけど。
「はい。できたよ」
「変じゃない?可愛い?大丈夫?」
「可愛い可愛い」
扱いが格段に面倒になった姉を適当にあしらいながらアルバはさっさと足を動かして玄関ホールへと向かう。
その後を普段からは考えられないくらいにソワソワしながら付いてくるセイラは確かにちょっと可愛いのかもしれない。
そんなことを思いながらアルバもまた大好きな兄に甘える為にネコを被り始めるのだった。
パパもママもジオたちも大好きだけど、望めば側にいてくれたけど、手を伸ばせば届く距離にいつもいてくれたけれど、だけど、私たちの世界はずっと私と片割れ(弟)だけで構成されてたの。
Licht(ひかり)を見つけるまでずっと。
「姉さん、今日兄さん帰ってくるって」
「本当ッ!?どどどどうしよう!服!服―――っ!!あああ髪の毛も!!
どうしてこんなギリギリに言うの!バカ――――ッ!!」
双子の弟であるアルバの言葉にセイラは作りかけの報告書を放り投げてクローゼットに駆けこんだ。
あれでもない、これでもないとポイポイ放り投げられて行く服を回収してはきちんとハンガーに掛け直して行くアルバは本当によくできた弟だと思う。
最近少しだけ自分たちが本当に双子かどうかを疑う時さえあるくらいだ。
だってヤツのほうがずっと器用で、いつも余裕で、本当に顔以外で似ているところはほとんどないと思う。
まぁ、そんなことを言っても信じてくれるのなんて両親とジオ一家、それから兄様くらいだろうけれど。
「どうしようっ!!こんなことならもっと雑誌とか見て勉強しとくんだった!!
とゆーか私徹夜明け!顔酷い!死んでる!
うわぁああんパパのバカーーー!!」
「はぁ…。姉さん、それは?そのふんわりしたやつ」
「ダメ!だって兄様に買って貰ったやつだもん!絶対に汚せないの!永久保存なの!!」
「……。兄さん、喜ぶと思うけどな」
「!?」
「姉さんがそれを着てるとこが見たくて買ってくれたんだと思うけど」
「!!」
「さっさと着替えなよ。髪と片付けは俺がやってあげるから」
……私、お姉ちゃんだよね?双子だけど、たった数十秒の差だけど、でも、私が年上だよね?なにこの年下の駄々を捏ねる妹を宥めてます、みたいな顔。
イラッとしたセイラはアルバの頭を軽く叩いて大事にワンピースを抱えて着替え始めた。
背後で呆れたような疲れたような溜息と理不尽だという小さな呟きが聞こえたのは気の所為だということにしておく。
お姉ちゃんからの愛の鞭だよ!弟。
ソワソワと落ち着かない様子で座っている姉に微苦笑を零しながらアルバは丁寧に艶やかな髪を梳く。
「ねぇアルバ。兄様はまだよね?お出迎えには間に合うわよね?」
「さっきジオが迎えに出たとこだから大丈夫だよ」
「はやく!はやく可愛くしてね!!」
「はいはい。分かったからじっとしてて」
完全に乙女モードに突入したセイラを呆れ顔で宥めながら手は作業を続ける。
鏡に映る期待と不安を綯交ぜにしたような顔には、下心丸出しで父の後を継ぐといいきった傲慢さや、『目的の為なら手段は選ばない。全部まとめて引き継いでやるからさっさとその椅子を寄こせ』と父相手に喧嘩を売った凛々しさは欠片も見当たらない。
そこにいるのはただの恋する女の子だ。
今、そんなセイラの心を一杯にしているのは間違いなく、物心がつくころには寄宿舎のある学校に入って長期休暇にしか帰って来ない兄だろう。
血の繋がりのない兄は一緒にいられる時間が少なくてもアルバにとって誰よりも頼りになって、尊敬している兄さんだし、セイラにとっては自分とふたりだけだった世界を広げていつの間にかその心の大半を占めるようになった存在だ。
アルバは恋だの愛だのというのはまだイマイチよく分からないけれど、それでもセイラがこんな顔をして健気(?)に待ち続けている相手をする相手はリヒトだけだから、片割れである自分くらいは協力してやってもいいと思う。
まぁ、あの難攻不落な鈍感兄がセイラに完全攻略される時まではひとり占めは認めないけど。
「はい。できたよ」
「変じゃない?可愛い?大丈夫?」
「可愛い可愛い」
扱いが格段に面倒になった姉を適当にあしらいながらアルバはさっさと足を動かして玄関ホールへと向かう。
その後を普段からは考えられないくらいにソワソワしながら付いてくるセイラは確かにちょっと可愛いのかもしれない。
そんなことを思いながらアルバもまた大好きな兄に甘える為にネコを被り始めるのだった。
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