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~番外編~
雪の果てに消えるー2ー
しおりを挟む抱き上げてもらえない不満からそれちがう!ぎゅーしてほしいの!だっこ!!と必死に主張する双子をリヒトは困った顔で見下ろした。
大事な、可愛い、妹と弟だ。
双子が産まれたときは本当に嬉しかった。
すごく嬉しくて、幸せで、いいお兄ちゃんになろうって、そう思ったのは嘘じゃない。
だけど、双子に嬉しそうに構う姉ちゃんやボスを見て、双子の世話を焼くジオやニナを見て、ジオが消してくれたモヤモヤがまた顔を出したのも本当のことだった。
大好きで、可愛くて、守ってやりたいと思うのに、その心の隅っこで真黒なモヤモヤが息を殺してそれを睨みつけている。
あったかくて優しくてふわふわのそれと取って代わろうと、じっと様子を伺っている。
それが苦しくて、悲しくて、不安で、いつか、本当に大事な妹と弟を傷つけてしまいそうで怖くて堪らなくなるのに、それなのに、セイラとアルバはそんなリヒトの気持ちなんて気付かずにふにゃふにゃの笑顔で手を伸ばす。
今だって、親であるノクトとルナ、なにかと世話を焼いているジオがいるのに迷わずにリヒトのところにきてリヒトに手を伸ばす。
「「にぃー!!」」
双子に居場所をとられたような気がして不安になってる自分に、双子に大好きな人たちをとられたような気がして拗ねている自分に、真っ直ぐに伸ばされる小さな手。
なんの疑いもなく向けられる双子からの信頼と愛情の証。
「親よりも兄貴か」
「切なすぎて泣きそうなんだけど」
「ボスも姫も俺もまるで眼中になしだな」
呆れた声が頭の上から降ってきてハッとしてリヒトは顔をあげる。
珍しく口元を引き攣らせたノクトとあからさまに拗ねるルナ、呆れた顔のジオと目が合った。
向けられる視線はどれも柔らかくて、温かくて、優しく包みこまれるようなそんな安心感があってその瞳に見つめられるだけで泣きそうになるくらいに幸せな気持ちになれる。
リヒトが今までひとり占めしていたもので、双子が産まれてからは取られてしまったと思ったもので、だけど、今その視線が双子とリヒトどちらにも向けられているのがわかって、心の中で張り詰めていたものが弾けた。
「えぇええ!?りりりリヒト!?どうしたの!?
まさか、ちびちゃんたちになにかされたの!?お兄ちゃん困らせたらだめでしょ!めっ!!」
「んなわけねぇだろ!どっか痛いのか?まさか、姫の落したカップで怪我したのか!?
医者!医者―――!!」
「うるせぇ!……リヒト、」
「ごめ、だいじょ、ぶ」
「どこが大丈夫だ。いいから来い」
問答無用で抱きあげられてその際に上がった双子の劈く様な泣き声も無視して、ずんずん歩くノクトに連れてこられたのは双子が産まれるまではよく潜り込んでいたノクトの自室だった。
ポスンとソファーに落されて、状況が理解できない上に涙も止められないままノクトの後ろ姿を見つめ続けた。
「……なにを、考えている?」
トンとココアの淹れられたリヒト専用のカップを机に置きながらかけられた声にリヒトは無言でふるふると首を振る。
そうするしか今を守る方法をリヒトは知らない。
何か一言でも口にすれば、ほんの一欠片でも心を言葉にしてしまえば一緒になってなにかトンデモナイものまで出てきてしまう気がして、取り返しのつかないことになる気がした。
だから、ぐっと寄せられた眉が刻まれた皺を深めても、心配そうに細められた目が原因を探るようにじっとリヒトを見つめていても、なにも言わなかった。言えなかった。
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