完全幸福論

のどか

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序章~愛する我が家に帰ってきました~

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大好きなリヒトにぎゅうっと抱きついて幸せに浸りながら抱きしめ返してもらえるのを待っていたセイラを悲劇が襲った。
突然なんの前触れもなく第三者の手によってベリッとリヒトから引きかがされたのだ。

私と兄様の邪魔をするなんて……!!
絶対に許さないんだから!!

ギロリと自分の首根っこを引っ掴んで引き離した相手を睨みつけるとそれ以上の鋭い眼光が返ってくる。

「仕事は如何した仕事は。報告書が未だ上がってきてねぇぞ」
「あ、」

ヤバイ。忘れてた。
ヒクリと頬を引き攣らせて視線をそらすセイラにノクトはただでさえ怖い顔を更に怖くする。完全に悪人ヅラだ。

あぁ、どうして私は可愛らしいママじゃなくてこんな怖い顔のパパに似たんだろう。
将来パパみたいな怖い顔になって、眉間から皺が取れなくなったらどうしよう。
それで兄様に嫌われる……ことはなくても本当にこのまま妹から抜け出せなくなったらどうしよう!?
そうなったら全部パパのせいだ!絶対にグレてやる!!

「説教中に考え事とはいい度胸だな」

現実逃避した思考を低い声が呼びもどす。
ハッとして視線をあげると深々と眉間に皺を寄せたノクトと目があった。

げっ!!拳骨かな?拳骨だよね?1回だけだったらいいな。
兄様の前で叱られるなんて一生の不覚……!!

なんて思いながらセイラが遠い目をしながら数秒後に襲ってくる衝撃に耐える準備をしていると柔らかな声が睨み合うふたりの間に舞い落ちてきた。

「ごめんボス。俺が仕事中断させちゃったんだ」
「……」
「セイラ、あとちょっとなんだろう?仕上げておいで。
 その間にお茶の用意しておくから」
「兄様!」
「早くしないとボスも姉ちゃんも先にはじめちゃうよ?」
「すぐ!すぐ終わらせるから絶対待ってて!!」

セイラは自分を引っ掴んでいたノクトの手をパシッと振り払うと大急ぎで自分の部屋へと駆けだした。
その背を見送るノクトの顔は完全に呆れ果て、ルナとアルバは何かを諦めたように溜息を吐く。
ただリヒトだけが困ったような笑みを浮かべて「あんなに慌てなくても、本当に先にお茶したりしないのにね」なんて言っている。

リヒトは知らない。
今のセイラの頭を占めているのがボスである父に叱られたことでも、母と片割れの呆れた視線がグサグサと背中に突き刺さっていることでもなく、いかに長くリヒトの側にいるかだということを。
せっかくの兄様とのお茶会をあんなくだらない報告書ごときに邪魔されてたまるか。
私と兄様を邪魔しようだなんていくらパパでも許さないんだから!!
そんなことを思っている妹が本当に未だかつてないスピードと完成度で報告書を完成させてノクトに叩きつけた事を、リヒトは知らない。 

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