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第1章~平和な日常が戻ってきました~
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朝食の後からずっとくっついてくる気配にセイラは額に青筋を浮かべて振り返った。
「レディーの後ろをコソコソつけるなんてどういう神経してるの?
ステラが怖がってるでしょ!自分の顔を鏡で見て出直して来なさい!!」
「……ボスからのご命令ですので」
グサグサと突き刺さる言葉のナイフによろめきながら彼はなんとか耐えた。
セイラの背後でステラが本当に怯えた顔をしているのが余計に悲しい。
引き攣った顔をしながらもきちんと決まり文句が返ってきたことにセイラは内心フッと笑った。
流石パパが私の監視役に選んだだけあるわね。なかなか根性あるじゃない。
だけどいつまでも付きあってあげられないのよ。
じっと自分を見つめる瞳をギンと睨みつけてセイラはわざと大げさに怒って見せた。
「あの意地悪オヤジ!!いたいけな女の子にこんな監視を付けるなんて……!!」
「ちい姫様!?どちらへ!!?」
「自分の部屋よ!心配ならアンタも来なさい」
「それでは、」
「……来れたらの話だけどね」
ニッと口の端を釣り上げてステラの腕を引っ張って走り出したセイラを男はギョッとして追いかける。
しかしアルバから渡された隠し通路を駆使してセイラ達はあっさりと男を巻いた。
背後から聞こえる情けない声を鼻で笑う。
「フン。私を誰だと思ってるの。
さてと、そろそろ時間ね」
「セイラ様、どうかお気を付けて」
「えぇ。
ステラ、もしもパパに呼び出されるようなことがあれば私とアルバのせいになさいね。
貴女が叱られる必要はないわ」
「いいえ!私も自分でセイラ様のお手伝いしたんです!その時は一緒にお叱りを受けます!」
「……ばか。
アルバ。私が帰るまでステラを頼むわよ」
「大丈夫。俺がお見合いのことバラしたせいで父さんも母さんの機嫌取りで俺たちに構ってられないと思うから」
曲がり角からひょっこり顔をだしてしれっと言い放ったアルバにセイラとステラはヒクリと頬を引き攣らせた。
そのとき背後からすっと影が差す。
「あら、私のことは警戒されなくてもよろしいので?」
クスリと軽やかな笑みとともに零された馴染みのある声にセイラはギクリと肩を揺らせる。
振り返った先にあった意地悪な笑みにアルバが焦り、ステラが混乱するのを感じながらセイラはドキドキする胸を抑えてにっこりと微笑んだ。
「だってニナは面白いこと好きでしょう?」
しっかりと自分の目を見つめながら言外に邪魔したりしないわよね?と含ませたセイラに小さく溜息を零しながらニナは降参とばかりに両手をあげてさっと道を譲った。
「火の子が飛んでこない間は傍観してるって決めましたからね。
あぁ、捕獲されたらあの人に放って置いた分のご機嫌取り期待してますねって言っといてください」
「母様……」
「俺が言うのもあれだけどそれでいいの?」
拍子抜けしたようなステラとアルバの呆れた視線をニナは平然と受け止めて艶やかに微笑んだ。
「私もちぃ姫様と同じようにディアナ様の加護を願いましたから。
そのよしみで今回は見逃して差し上げますよ」
「!?」
「ディアナ様のご加護がありますように」
目を見開いて凝視してくるセイラに微苦笑を浮かべてニナはそっとその背を押してやった。
もう随分と昔、似たような想いを味わった同じ女として(巻き込まれるのはいやだけど)この小さな恋を応援してやりたいと思う。
「っ、行ってくるわ!!」
凛と顔をあげて力強く足を踏み出した姿をニナは眩しいものを見るように目を細めて見送った。
「レディーの後ろをコソコソつけるなんてどういう神経してるの?
ステラが怖がってるでしょ!自分の顔を鏡で見て出直して来なさい!!」
「……ボスからのご命令ですので」
グサグサと突き刺さる言葉のナイフによろめきながら彼はなんとか耐えた。
セイラの背後でステラが本当に怯えた顔をしているのが余計に悲しい。
引き攣った顔をしながらもきちんと決まり文句が返ってきたことにセイラは内心フッと笑った。
流石パパが私の監視役に選んだだけあるわね。なかなか根性あるじゃない。
だけどいつまでも付きあってあげられないのよ。
じっと自分を見つめる瞳をギンと睨みつけてセイラはわざと大げさに怒って見せた。
「あの意地悪オヤジ!!いたいけな女の子にこんな監視を付けるなんて……!!」
「ちい姫様!?どちらへ!!?」
「自分の部屋よ!心配ならアンタも来なさい」
「それでは、」
「……来れたらの話だけどね」
ニッと口の端を釣り上げてステラの腕を引っ張って走り出したセイラを男はギョッとして追いかける。
しかしアルバから渡された隠し通路を駆使してセイラ達はあっさりと男を巻いた。
背後から聞こえる情けない声を鼻で笑う。
「フン。私を誰だと思ってるの。
さてと、そろそろ時間ね」
「セイラ様、どうかお気を付けて」
「えぇ。
ステラ、もしもパパに呼び出されるようなことがあれば私とアルバのせいになさいね。
貴女が叱られる必要はないわ」
「いいえ!私も自分でセイラ様のお手伝いしたんです!その時は一緒にお叱りを受けます!」
「……ばか。
アルバ。私が帰るまでステラを頼むわよ」
「大丈夫。俺がお見合いのことバラしたせいで父さんも母さんの機嫌取りで俺たちに構ってられないと思うから」
曲がり角からひょっこり顔をだしてしれっと言い放ったアルバにセイラとステラはヒクリと頬を引き攣らせた。
そのとき背後からすっと影が差す。
「あら、私のことは警戒されなくてもよろしいので?」
クスリと軽やかな笑みとともに零された馴染みのある声にセイラはギクリと肩を揺らせる。
振り返った先にあった意地悪な笑みにアルバが焦り、ステラが混乱するのを感じながらセイラはドキドキする胸を抑えてにっこりと微笑んだ。
「だってニナは面白いこと好きでしょう?」
しっかりと自分の目を見つめながら言外に邪魔したりしないわよね?と含ませたセイラに小さく溜息を零しながらニナは降参とばかりに両手をあげてさっと道を譲った。
「火の子が飛んでこない間は傍観してるって決めましたからね。
あぁ、捕獲されたらあの人に放って置いた分のご機嫌取り期待してますねって言っといてください」
「母様……」
「俺が言うのもあれだけどそれでいいの?」
拍子抜けしたようなステラとアルバの呆れた視線をニナは平然と受け止めて艶やかに微笑んだ。
「私もちぃ姫様と同じようにディアナ様の加護を願いましたから。
そのよしみで今回は見逃して差し上げますよ」
「!?」
「ディアナ様のご加護がありますように」
目を見開いて凝視してくるセイラに微苦笑を浮かべてニナはそっとその背を押してやった。
もう随分と昔、似たような想いを味わった同じ女として(巻き込まれるのはいやだけど)この小さな恋を応援してやりたいと思う。
「っ、行ってくるわ!!」
凛と顔をあげて力強く足を踏み出した姿をニナは眩しいものを見るように目を細めて見送った。
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