完全幸福論

のどか

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第2章~守るために強くなると誓いました~

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リヒトが午前中の仕事を終えて出かける準備を始めるとセイラの表情が曇った。
泣くのを我慢するようにキュッと眉根を寄せて唇を一文字に引き結ぶ。
嬉しそうに出かける用意をするリヒトの後ろ姿をじっと見つめながらセイラはか細く震える声を小さく零した。

「、今日も、お出かけですか……?」

弱々しく今にも泣き出してしまいそうな声に慌てて振り向いてリヒトはハッと息を呑んだ。
もう長く見ていなかったセイラが泣くのを我慢する時の表情。
小さなころからいつだってリヒトのいない屋敷で一番お姉さんであるという妙な自覚とプライドからアルバほど素直にワガママを言わずに言いたいことも涙も呑みこんできたセイラ。
それにリヒトが気付いたのは随分と彼女が大きくなってしまってからだけれど、それでもずっとセイラはアルバの双子の姉で血は繋がらなくても両親が違っても、ステラの姉だった。 
“姉”であろうとたくさんの事を我慢して我慢して甘えられる場所を、泣ける場所を自分で少なくしてしまった不器用で可愛いリヒトの大切な妹。

「セイラ、」
「……兄さん、最近の休みずっとその人とばっかり会ってる」

小さく俯いたセイラの手をギュッと握ってアルバが拗ねたように呟く。

たまには俺たちにも構ってよ。

声のない声がそう言っているような気がした。
リヒトはくしゃりと顔を歪めて今にも泣き出しそうな妹と唇を尖らせて完全に拗ねている弟を力いっぱい抱きしめた。

「ごめん。ごめんね。俺、気付かなくて」

リヒトのためにならふたりが自分たちのワガママを呑みこんでくれる事を知っていたのに。
寄宿舎にいる時からずっと、一緒にいて。帰らないで。ずっとずっと側にいて。
ふたりが、ステラがそう言いたいのをぐっと呑みこんで下手クソな笑顔で「いってらっしゃい」と見送ってくれていたことに気付いていたのに、忘れていた。 
センパイと過ごす時間があまりに穏やかだから、あまりに楽しいから、あまりに気を抜ける時間だから。
可愛い弟妹はふたりを溺愛していると周りからからかわれるのと同じくらいにリヒトのことを慕っていてくれている事をちゃんと分かっていたはずなのに。 

「ごめんね。セイラ、アルバ。
 今日はもう約束しちゃったから無理だけど、今度の休みは一緒に過ごそうか」
「「…ぅん。」」

甘えるように額をすり寄せながらも小さく返事が返ってきた事にリヒトは少しだけ安心しながら大好きだという気持ちを込めてもう一度ふたりを柔らかく抱きしめた。 
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