64 / 145
第2章~守るために強くなると誓いました~
59
しおりを挟む『夜闇の侯爵』
その名前は表世界でも裏世界でも絶大な権力を持つ。
この国の建国にも携わった由緒ある貴族であり、国の危機を救った英雄であり、裏世界の秩序を守り、表と裏のバランスをとり続ける一族。
課せられた数多の責を果たす最終手段として王位継承権すらその手の中には握られている。
そんな彼の一族の者に寄り集まる者は媚びへつらいながら取り入って甘い蜜を吸おうとする者か、利用してのしあがろうとする者かに分かれる。
けれどリヒトとそう年の変わらない少女は対峙している人物が誰かというのをしっかりと理解した上でゆったりと笑みを浮かべてお決まりの挨拶を述べた。
「お会いできて光栄です。侯爵様」
「こちらこそ。息子が随分世話になっているようで」
「ふふ、やめましょう。こんなことしてたら夜が明けちゃいますわ」
「それはありがたい提案だ。俺もこういうのは好まない。
――――単刀直入にいう。テメ……貴女の目的はなんだ。
どうして件のことを知っている。」
「本当に単刀直入ですね。あと普段通りの言葉でいいですよ」
微苦笑を零した彼女はもう一度ドレスの裾をつまんで恭しく挨拶をして見せた。
リヒトの――――彼女以外誰も知らない名前で。
「改めてはじめまして夜の闇を守る方、
私はニンフィア=ノエル=ラヴァンシーと申します。」
突然の告白に眉ひとつ動かさずすぐに本意を探るように目を細めたノクトを流石だと思いながら残された僅かな時間でニンフィアはできるだけ多く彼らが、彼が答えに辿りつけるように情報を紡いだ。
「最後にひとつ、それで本当に後悔しねぇのか?
他に方法は、」
「ずっと目をそらして生きてきました。だけど、気付いてしまったから。
それに私は―――――――――――…」
強い意志を灯した瞳と諦観を携えた微笑みでそう告げた少女に苦々しく顔を歪める。
けれど彼女は微苦笑を零しただけでその瞳に宿る決意の色は揺らがなかった。
「私からも1つ、否2つかな。
よろしいですか?」
ノクトの無言を肯定ととったニンフィアはその瞳に悲しみの影をちらつかせながらゆっくりと唇を動かした。
その言葉にノクトはもう何度目かもわからないほど驚いた。
そして運命に翻弄されるのを受け入れた、否、真っ向から迎え入れた少女に敬意をこめて言葉を紡いだ。
「あんたが思うほどアイツは弱くねぇよ。誰のガキだとおもってやがる」
背中越しに「ありがとうございます」という小さな声を聞きながらノクトやりきれない思いを抱えてジオとリヒトの元に足を進めた。
久しぶりに長い夜になりそうだと溜息を零しながら。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる