完全幸福論

のどか

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第2章~守るために強くなると誓いました~

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『夜闇の侯爵』

その名前は表世界でも裏世界でも絶大な権力を持つ。
この国の建国にも携わった由緒ある貴族であり、国の危機を救った英雄であり、裏世界の秩序を守り、表と裏のバランスをとり続ける一族。
課せられた数多の責を果たす最終手段として王位継承権すらその手の中には握られている。
そんな彼の一族の者に寄り集まる者は媚びへつらいながら取り入って甘い蜜を吸おうとする者か、利用してのしあがろうとする者かに分かれる。
けれどリヒトとそう年の変わらない少女は対峙している人物が誰かというのをしっかりと理解した上でゆったりと笑みを浮かべてお決まりの挨拶を述べた。

「お会いできて光栄です。侯爵様」
「こちらこそ。息子が随分世話になっているようで」
「ふふ、やめましょう。こんなことしてたら夜が明けちゃいますわ」
「それはありがたい提案だ。俺もこういうのは好まない。
 ――――単刀直入にいう。テメ……貴女の目的はなんだ。
 どうして件のことを知っている。」
「本当に単刀直入ですね。あと普段通りの言葉でいいですよ」

微苦笑を零した彼女はもう一度ドレスの裾をつまんで恭しく挨拶をして見せた。
リヒトの――――彼女以外誰も知らない名前で。

「改めてはじめまして夜の闇を守る方、
 私はニンフィア=ノエル=ラヴァンシーと申します。」

突然の告白に眉ひとつ動かさずすぐに本意を探るように目を細めたノクトを流石だと思いながら残された僅かな時間でニンフィアはできるだけ多く彼らが、彼が答えに辿りつけるように情報を紡いだ。

「最後にひとつ、それで本当に後悔しねぇのか?
 他に方法は、」
「ずっと目をそらして生きてきました。だけど、気付いてしまったから。
 それに私は―――――――――――…」

強い意志を灯した瞳と諦観を携えた微笑みでそう告げた少女に苦々しく顔を歪める。
けれど彼女は微苦笑を零しただけでその瞳に宿る決意の色は揺らがなかった。

「私からも1つ、否2つかな。
 よろしいですか?」

ノクトの無言を肯定ととったニンフィアはその瞳に悲しみの影をちらつかせながらゆっくりと唇を動かした。
その言葉にノクトはもう何度目かもわからないほど驚いた。
そして運命に翻弄されるのを受け入れた、否、真っ向から迎え入れた少女に敬意をこめて言葉を紡いだ。

「あんたが思うほどアイツは弱くねぇよ。誰のガキだとおもってやがる」

背中越しに「ありがとうございます」という小さな声を聞きながらノクトやりきれない思いを抱えてジオとリヒトの元に足を進めた。
久しぶりに長い夜になりそうだと溜息を零しながら。


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