110 / 145
第3章~あなたの愛に完全幸福します~
104
しおりを挟む
部屋に戻ったリヒトは一緒に付いて来たジェロージアは睨みつける。
「どういうつもり?」
「別に」
睨まれているジェロージアは全く気にしたそぶりも見せずに平然とリヒトを見つめ返した。
「ジェロージア」
「……約束の1年が過ぎればお前は侯爵殿のところへ帰るんだろう?
でも王女の婿になればお前はここにいる。俺も騎士としてここにいる」
真剣な顔にけれどどこか熱に浮かされたようにそう言うジェロージアにリヒトは顔を歪めた。
「王女殿下の婚約者はお前だろう」
「どうでもいいよ。王女なんて。
俺が欲しいのはお前だって言ったはずだ」
目を見開くリヒトに触れられる距離まで近づいたジェロージアは甘く笑ってその頬に触れる。
リヒトはとっさにその手を払いのけて距離をとった。
「俺は、誰のものでもない。誰のものにもならない」
「嘘吐き」
「なにを、」
「気付いていないならいいさ。でもリヒト、逃がしてもらえると思うなよ。
お前と違って俺は目的の為なら何だって利用するし傷つけることも厭わない」
「お前の、望みはなに?」
「うーん、今のところはお前と共にいることかな」
そう言ってジェロージアは机の上に置いてあった未読の手紙を手に取る。
あ、とリヒトが手を伸ばすよりも先にビリっと音がして小さくなった紙切れたちが大空に流れて行く。
「なにするんだ!バカ!それ、ボスからのだろ!!」
「どうせ帰って来いとか書かれてるんだ。読ませないし帰さない」
リヒトの知らない顔で見つめ返して来るジェロージアにリヒトはどうすればいいのか分からなかった。
ただその要求に屈してはならない事だけはハッキリしているのでギロリとジェロージアを睨みつける。
ふっと息を吐いたジェロージアがいつもの表情に戻り降参とばかりに両手をあげる。
そのままクルリと背を向けてひらひらと手を振って去っていく。
小さくなる背に安心した自分を情けなく思いながらリヒトは大きく息を吐いた。
「ボス、ごめん。帰れそうにないや」
連絡がマトモに取れなくなりそうな事と、できる限り自分でなんとかしてみるから本当に困った時に手を貸してほしいということを手紙に書いてジェロージアに邪魔される前に出す。
約束は守るから心配しないでと書きはしたもののセイラが無茶をしないかが何よりも心配だった。
「どういうつもり?」
「別に」
睨まれているジェロージアは全く気にしたそぶりも見せずに平然とリヒトを見つめ返した。
「ジェロージア」
「……約束の1年が過ぎればお前は侯爵殿のところへ帰るんだろう?
でも王女の婿になればお前はここにいる。俺も騎士としてここにいる」
真剣な顔にけれどどこか熱に浮かされたようにそう言うジェロージアにリヒトは顔を歪めた。
「王女殿下の婚約者はお前だろう」
「どうでもいいよ。王女なんて。
俺が欲しいのはお前だって言ったはずだ」
目を見開くリヒトに触れられる距離まで近づいたジェロージアは甘く笑ってその頬に触れる。
リヒトはとっさにその手を払いのけて距離をとった。
「俺は、誰のものでもない。誰のものにもならない」
「嘘吐き」
「なにを、」
「気付いていないならいいさ。でもリヒト、逃がしてもらえると思うなよ。
お前と違って俺は目的の為なら何だって利用するし傷つけることも厭わない」
「お前の、望みはなに?」
「うーん、今のところはお前と共にいることかな」
そう言ってジェロージアは机の上に置いてあった未読の手紙を手に取る。
あ、とリヒトが手を伸ばすよりも先にビリっと音がして小さくなった紙切れたちが大空に流れて行く。
「なにするんだ!バカ!それ、ボスからのだろ!!」
「どうせ帰って来いとか書かれてるんだ。読ませないし帰さない」
リヒトの知らない顔で見つめ返して来るジェロージアにリヒトはどうすればいいのか分からなかった。
ただその要求に屈してはならない事だけはハッキリしているのでギロリとジェロージアを睨みつける。
ふっと息を吐いたジェロージアがいつもの表情に戻り降参とばかりに両手をあげる。
そのままクルリと背を向けてひらひらと手を振って去っていく。
小さくなる背に安心した自分を情けなく思いながらリヒトは大きく息を吐いた。
「ボス、ごめん。帰れそうにないや」
連絡がマトモに取れなくなりそうな事と、できる限り自分でなんとかしてみるから本当に困った時に手を貸してほしいということを手紙に書いてジェロージアに邪魔される前に出す。
約束は守るから心配しないでと書きはしたもののセイラが無茶をしないかが何よりも心配だった。
0
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
王冠の乙女
ボンボンP
恋愛
『王冠の乙女』と呼ばれる存在、彼女に愛された者は国の頂点に立つ。
インカラナータ王国の王子アーサーに囲われたフェリーチェは
何も知らないまま政治の道具として理不尽に生きることを強いられる。
しかしフェリーチェが全てを知ったとき彼女を利用した者たちは報いを受ける。
フェリーチェが幸せになるまでのお話。
※ 残酷な描写があります
※ Sideで少しだけBL表現があります
★誤字脱字は見つけ次第、修正していますので申し分ございません。
人物設定がぶれていましたので手直作業をしています。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる