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~番外編~
絶対に守ると決めた日
しおりを挟む「ママなんて私たちのことなんかキライなんだ!いらないんだ!!」
本心じゃないことなんか分かってた。
だけど、だけど、どうしても許せなかった。
カッと全身に怒りが昇り詰めて、気が付いたら小さな頬っぺたをぶってまだ小さな双子に怒鳴っていた。
「そんなこと言うな!」
「「ふぇっ、うわぁあああん」」
あ、と思った時には遅くって、俺はギュッと自分の手を握りしめてガックリと身体の力を抜いた。
そして火のついたみたいに泣き喚く双子をいつも姉ちゃんがしてくれてたみたいに抱きしめる。
さすがに俺にぶたれて怒鳴られた後だから双子はジタバタと抵抗したけれどそれを抑えつけて抱きしめた。
「ごめん。痛かったよな」
「「うぇっ、にーしゃまのばかーー!!きらいーーー!!」」
「うん、ごめん。
だけど俺も痛かったんだ。
セイラとアルバを産むとき姉ちゃんすっごく頑張ったんだ。
痛くて苦しくて死にそうな思いをして二人を産んだんだよ。
ふたりに会いたくてホントにすっごく頑張ったんだよ」
「「……!?」」
「姉ちゃんは勿論、ボスやジオたちだって、セイラとアルバが生まれた時すっごく嬉しかったんだ。
ふたりはみんなに望まれて、みんなが生まれて欲しくて生まれてきたんだよ」
「「……ほんと?」」
「うん。ふたりが生まれてくるのをずっとずっと楽しみにしてたんだ。
みんな、二人に会えるのをすっごく楽しみにしてたんだよ」
「「……」」
「だから、いらないなんて絶対に思わないで。
みんなセイラのこともアルバのことも大好きなんだよ。大事で可愛くて仕方ないんだよ」
「「……にーさまもおれ/わたしたちのことすき?」」
「もちろん。愛してるよ」
「パパとママより?」
「どっちも比べられないくらいに大好きで愛してる。
でもね、セイラとアルバは俺が絶対に守ろうと思った宝物なんだよ。
そのくらいに大事で可愛いと思ってる」
ボスと姉ちゃんの子どもになっていつも守られる側だった俺がはじめて守りたいと思った存在。
それがこの小さな二つの宝物だったんだ。
「「ヒック、うわぁああん。ごめんなさ~~い」」
「俺も叩いてごめんね。痛かったね」
俺はボスたちがこっそり覗いていることにも気付かずに小さな身体をぎゅうぎゅう抱きしめた。
「り、リヒトがチビちゃんたちに取られた……!!
私だって守ってあげるなんて、宝物なんて、言われたことないのに……!!!」
「姫、違うだろ」
「最近、俺たちにだって滅多に愛してるなんざ言いやがらねぇくせに」
「アンタも違ぇよ!!ココはリヒトの成長を喜ぶとこだろ!!
アイツが良い兄ちゃんやってることを褒めるとこだろ!?
なにガキにヤキモチ妬いてんだ!!」
「ジオ、煩い。氷持ってきて。腫れたら困る」
「んな!?」
「ボス、姉ちゃん、ごめん。俺こいつらのこと叩いちゃった」
「いや、お前が殴ってなきゃ俺が殴ってた」
「「……」」
シレっと真顔で言ったボスに双子はすぐさま俺の背中に隠れた。
俺はその様子に困ったように笑ってゆっくりと二人をボスと姉ちゃんの前に押し出す。
「ママ、」
「パパ、」
「「ごめんなさい」」
「ママも寂しい思いさせてごめんね」
「……」
ちゃんと言葉を紡いで抱きしめる姉ちゃんと無言で頭を撫でてやるボスの違いに俺は小さく笑った。
昔は俺もよくああして貰ってたっけ。
でも、ボスは俺にはちゃんと愛してるって言ってくれたかな?
いや、俺が大好きだとか愛してるだとか言い過ぎてて、俺もだ。って短く返って来ただけだっけ??
「リヒト?」
「なんでもないよ。ボス」
「……」
「そう言えば俺も留守番のあとよくボスと姉ちゃんにくっついてたなぁと思って」
くしゃりと大きな手が俺の頭をかき混ぜる。
「あんまり早くデカくなるなよ」
「……うん。俺もまだもうちょっとボスと姉ちゃんに甘えたいかな。」
俺は久しぶりに素直にボスと姉ちゃんに甘えた。
俺がボスと姉ちゃんにここぞとばかりに頭を撫でられたり抱き締められたりしている間、双子は何故か俺の両足にしがみつき恨めしげにボスと姉ちゃんを眺めていたらしい。
ジオはやっぱり微苦笑を浮かべてその様子を見ていた。
絶対に守ると決めた日
(ふたりはボスと姉ちゃんがくれた)
(はじめて俺が守らなきゃって思った宝物だから)
(だから、なにも心配しなくていいよ)
(兄様が守ってあげるから)
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