幸福論

のどか

文字の大きさ
3 / 45
~本編~

パパとママなんて恥ずかしくて呼べないけど、

しおりを挟む
目が覚めた。
だけど俺はぎゅうっと目を閉じたまま寝たふりをした。
だってボスが泣いてたから。
ボスが、声を殺して静かに泣いてたから。
だから、俺はぎゅうっと目を閉じて、息を殺してみないふりをしたんだ。

「お前は寝る時に息もしねぇのか」

だけどすぐに呆れた声が落ちて来て、優しく頭を撫でられて、ゆっくりと目を開けるとボスの困ったような顔が映った。

「ねぇ、ボス」
「どうした?」
「俺、俺、まだガキだし、できることなんて少ないかもしんないけど、何でも言ってね。
いっぱいいっぱいお手伝いするから!だから、はやく姉ちゃんを迎えに行こうね!」

ボスが大好きな姉ちゃんが帰って来ないのは、自分で帰ってこれないからでしょう?
だったら俺たちが姉ちゃんをお迎えに行けばいいんだ!
この間の雨降りの日に姉ちゃんと傘を持ってボスのお迎えに行ったみたいに!
そうしたら姉ちゃんも笑って帰ってくるよね?

「……リヒト」
「姉ちゃん、泣き虫だもん!こないだ、俺とホラー映画みてマジ泣きしてたんだぜ!」
「なんだ、まだアイツはあんなもんが怖いのか」
「うん。俺もちょっと怖かった」
「クク、それで俺たちんとこに来たのか?」
「だって、ホントに怖かったんだもん!!ボスも見たら絶対怖くなるよ!」
「ねぇな。俺まで怖がったらお前らを守ってやれねェだろ?」

ニヤリと意地悪く笑ったボスはもういつものボスで俺はそれにとっても安心したはずなのに、なんだかちょっとだけ不安にもなって、それを何とかしてほしくてボスを呼ぶ。

「ボス、」
「どうした?」
「ボス、」
「大丈夫だ。寝るまで側にいてやる」

ただ呼んだだけなのに、俺の上手く言葉にできない気持ちまで汲み取ってくれるみたいに大丈夫って言ってくれて、俺は姉ちゃんとボスが実は魔法使いなんじゃないかって話したことを思いだした。 
目を見るだけで、名前を呼ぶだけで、ボスは俺たちの言葉にならない気持ちまで見抜いたみたいに安心をくれるから。
俺にとっては姉ちゃんもそうだけど、姉ちゃんは時々ズレたことをするからやっぱりボスの方がすごいと思う。
ベッドの横に椅子を引っ張ってきてドカッと腰をおろしたボスに安心して俺は小さく笑った。

「姉ちゃん、絶対取り返そうね。俺、ママは姉ちゃんじゃなきゃいやだ」
「リヒト」
「もちろん、パパだってボスじゃなきゃ嫌だからね!!」
「あぁ、分かってる」

ちょっとだけまた泣きそうな顔をしたボスは俺の視界を塞ぐように大きな手で俺の目を覆っていつもは姉ちゃんがしてくれるみたいにお腹をリズムよく叩いてくれた。
どんどん重たくなる瞼に抗いながら手を伸ばしたら俺の目を覆っていた手をどけて優しく包んでくれる。
待っててね。姉ちゃん、すぐにボスと一緒に迎えに行くから。だから、あんまり泣いたらダメだよ。
うさぎの目になってたらボスと一緒に笑っちゃうからね。




パパとママなんて恥ずかしくて呼べないけど、
(だけど俺のパパとママはボスと姉ちゃんだけだから、)
(俺の居場所はボスと姉ちゃんの側だから、)
(だから、泣かずに待っててね!)
(絶対にボスと一緒に迎えに行くから)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...