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~後日談・番外編~
Buon Natale!!ー3ー
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メッセージカードと真剣な顔で睨めっこするリヒトを眺めながらニナは意識してキッチンから目をそむけた。
襲撃でもうけたのか!?と聞きたくなるようなそこはもうニナの目には戦場跡にしか見えなかった。
いや、実際彼女たちは闘った。
滅多に立つことのない領域に自ら踏み込んだのだ。同じくその場にはじめて立つであろう子どものおまけつきで。
そのおかげであちこちに零れている小麦粉を筆頭とする材料や混ぜ合わせた生地、散乱する調理器。
あぁ、頭痛い。これを片付けなければならないのか…。
面倒見のいいセンパイを召喚すれば元通りピカピカにしてくれるだろう。
あの人にできないことはないとニナは信じている(頭痛と胃痛で使い物にならないことにならない限り)。
ただ、その最終手段を使ってしまえばもれなく保護者の称号をほしいままにしているにふさわしいお小言が付いてくる。
なまじ自分より家事スキルがある相手なだけに下手に反論もできずに耐えるだけの時間は望んで味わいたいものではない。
自分に非があることを自覚していることならば余計に。
ふぅっと溜息がこぼれたのと同時にリヒトにじぃいいっと見つめられていたことに気がついた。
「リヒト様?」
「ニナは書かないの?」
「へ?」
「だって、ジオにあげるんでしょう?」
「……どうしてセンパイが出てくるんですか?」
「あげないの?」
「……ま、まぁ一応いつもお世話になってるし」
はたしてクリスマスとはそういう日だっただろうか。
誰かの降誕を祝う日じゃなかっただろうか。
「ジオ、きっと喜ぶよ!!」
なんとなく腑に落ちない部分もあったがリヒトに満面の笑みでそう言われてニナはなんだかどうでもよくなった。
リヒト様がそれで納得してくださるならいいか。
そんな軽い気持ちで自分用のラッピングを用意してありきたりな文句をカードに書き連ねる。
『Boun Natale!(クリスマスおめでとう!)』
うん。完璧。
あとは適当にイラストでも添えればいいか。
ニナもリヒトも黙々と手を動かした。
冷ましたクッキーたちから形のいいものを選び、ラッピングする作業は思ったより楽しいものだった。
特にリヒトの真剣な顔が微笑ましさを誘う。
形の崩れてしまったものはリヒトとふたりで美味しく頂いた。うん、悪くない。
「ボスと姉ちゃん喜んでくれるかな……?」
きゅっと唇を引き結んで不安そうな顔をするリヒトにニナは微苦笑を返した。
喜ぶなんてもんじゃないだろう。溺愛する息子からのクリスマスプレゼント。
素直な姫様なんて嬉しすぎて泣くんじゃないだろうかとさえ思う。
「大丈夫ですよ。おふたりともすごく喜ばれるに決まってます」
「うんっ!ありがとニナ!ニナもジオにちゃんと渡してね」
「へ?あぁ、はい」
だからどうしてセンパイが出てくるんだろう?そう思いながらもニナはとりあえず頷き、少しの不安とそれを上回る期待に瞳を輝かせて廊下に消えて行くリヒトを見送った。
リヒトと一緒に作ったジンジャークッキー。綺麗にラッピングされたそれを眺めながらニナは小さく息を吐く。
「もうお返しを作る余力がない。今年はミルクと市販のお菓子で勘弁してもらおう」
形の崩れたクッキーを出す訳にはいかないし、ラッピングしたものはセンパイにあげることになっている。
「というか、今年も来てくれるとは限らないしね」
サンタを信じるほど純粋でもなければ子どもでもない。
プレゼントを貰えるほどにいい子にしていたわけでもない。
それでも、ボスにお仕えするようになってこの屋敷に来てから毎年、成人した今でもニナのところにやってくるサンタクロース。
正体を知りたい気もするけれど、このままでいたい気もする。
そんな自分に微苦笑を零してニナは荒れ果てたキッチンの片付けに手を付けた。
彼女だけのサンタクロース
(毎年クリスマスの朝にドアの前に置かれたプレゼント)
(綺麗になくなっているミルクとクッキー)
(この小さな幸福は一体いつまで続くのかな)
襲撃でもうけたのか!?と聞きたくなるようなそこはもうニナの目には戦場跡にしか見えなかった。
いや、実際彼女たちは闘った。
滅多に立つことのない領域に自ら踏み込んだのだ。同じくその場にはじめて立つであろう子どものおまけつきで。
そのおかげであちこちに零れている小麦粉を筆頭とする材料や混ぜ合わせた生地、散乱する調理器。
あぁ、頭痛い。これを片付けなければならないのか…。
面倒見のいいセンパイを召喚すれば元通りピカピカにしてくれるだろう。
あの人にできないことはないとニナは信じている(頭痛と胃痛で使い物にならないことにならない限り)。
ただ、その最終手段を使ってしまえばもれなく保護者の称号をほしいままにしているにふさわしいお小言が付いてくる。
なまじ自分より家事スキルがある相手なだけに下手に反論もできずに耐えるだけの時間は望んで味わいたいものではない。
自分に非があることを自覚していることならば余計に。
ふぅっと溜息がこぼれたのと同時にリヒトにじぃいいっと見つめられていたことに気がついた。
「リヒト様?」
「ニナは書かないの?」
「へ?」
「だって、ジオにあげるんでしょう?」
「……どうしてセンパイが出てくるんですか?」
「あげないの?」
「……ま、まぁ一応いつもお世話になってるし」
はたしてクリスマスとはそういう日だっただろうか。
誰かの降誕を祝う日じゃなかっただろうか。
「ジオ、きっと喜ぶよ!!」
なんとなく腑に落ちない部分もあったがリヒトに満面の笑みでそう言われてニナはなんだかどうでもよくなった。
リヒト様がそれで納得してくださるならいいか。
そんな軽い気持ちで自分用のラッピングを用意してありきたりな文句をカードに書き連ねる。
『Boun Natale!(クリスマスおめでとう!)』
うん。完璧。
あとは適当にイラストでも添えればいいか。
ニナもリヒトも黙々と手を動かした。
冷ましたクッキーたちから形のいいものを選び、ラッピングする作業は思ったより楽しいものだった。
特にリヒトの真剣な顔が微笑ましさを誘う。
形の崩れてしまったものはリヒトとふたりで美味しく頂いた。うん、悪くない。
「ボスと姉ちゃん喜んでくれるかな……?」
きゅっと唇を引き結んで不安そうな顔をするリヒトにニナは微苦笑を返した。
喜ぶなんてもんじゃないだろう。溺愛する息子からのクリスマスプレゼント。
素直な姫様なんて嬉しすぎて泣くんじゃないだろうかとさえ思う。
「大丈夫ですよ。おふたりともすごく喜ばれるに決まってます」
「うんっ!ありがとニナ!ニナもジオにちゃんと渡してね」
「へ?あぁ、はい」
だからどうしてセンパイが出てくるんだろう?そう思いながらもニナはとりあえず頷き、少しの不安とそれを上回る期待に瞳を輝かせて廊下に消えて行くリヒトを見送った。
リヒトと一緒に作ったジンジャークッキー。綺麗にラッピングされたそれを眺めながらニナは小さく息を吐く。
「もうお返しを作る余力がない。今年はミルクと市販のお菓子で勘弁してもらおう」
形の崩れたクッキーを出す訳にはいかないし、ラッピングしたものはセンパイにあげることになっている。
「というか、今年も来てくれるとは限らないしね」
サンタを信じるほど純粋でもなければ子どもでもない。
プレゼントを貰えるほどにいい子にしていたわけでもない。
それでも、ボスにお仕えするようになってこの屋敷に来てから毎年、成人した今でもニナのところにやってくるサンタクロース。
正体を知りたい気もするけれど、このままでいたい気もする。
そんな自分に微苦笑を零してニナは荒れ果てたキッチンの片付けに手を付けた。
彼女だけのサンタクロース
(毎年クリスマスの朝にドアの前に置かれたプレゼント)
(綺麗になくなっているミルクとクッキー)
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