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【48】独り舞台 ① ー他の者を霞ませるー

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 三人はウェイターに誘われるまま、店の中央ステージでセットダンスにまざる。
 セットダンスとは、その昔、お祭りの時に踊られていた男女ペアダンスのことだ。

 ハープとフルートの柔らかな旋律に包まれ、バグパイプが力強く民族的に主旋律を響かせる。
 バグパイプはパレードの行進でもよく使われるので、国民的楽器といってもいい。

 テンポの速い快活な演奏に合わせてステップを踏み、左右の人と手をつないだり、男女で向き合ってワルツ・ホールドを組んだりと、様々なダンスがある。

 老若男女、その場にいる全ての人と分け隔てなく踊るのが礼儀で、ダニエルは白ひげを蓄えたお爺さんにホールドされながらスカートの裾をはためかせくるくる回り、若い男から流し目を送られつつスクエアにステップを踏んだ。


「はぁぁ!疲れたぁ!」
 三人はようやくダンスから解放され、元いたテーブルに戻れた。

「やばぁい、踊ったからお酒が回ってきちゃった」

 セレーナは赤くなった顔を、パタパタと手で扇ぐ。
 ウェイターが「ありがとう!これオゴリ」とワインが入ったジョッキを差し入れてくれ、三人は乾いた喉を、ワインで潤した。

 が、セレーナは机に突っ伏す。
 もともとお酒はあまり強くないのだ。

「あたし、もうダメ。先に馬車拾って帰っていい?」
「いいわよ。ダニーはまだいけるでしょ?」
「うん!もちろん」

 まだまだ踊り足りないアリとダニエルはセレーナを馬車に乗せ、走り去るまで見送り、別の酒場へとハシゴした。


 二人が入った酒場は若い男女が多く集まる、人気の店だった。
 店内は薄暗く、若干の怪しさが漂っている。

「ここは若い男が多いわね!」

 アリは深海を漂うサメの如く、人の波間を通っていく。
 その美貌と豊満な肉体に、男達はチラチラと視線を寄越しながら道を開けた。

 席に着くと、早速隣のテーブルの若い二人組みが声をかけてきた。
「君達も二人?よかったら一緒に飲まないか?」

 一人は肉体労働者っぽいがっちりした男、もう一人はアリが好きそうな、ヒョロッとした丸眼鏡の気難しそうな男。

 アリは彼のことが気に入ったのだろう。
 いい?と言いたげに目配せを受け、ダニエルは了承した。


 お互いに気がある者同士の恋は、燃え上がるのも早い。
 特に一にも二にも、身体の相性を確かめなければいけないと考えている超肉食女子アリは、普段、司法卿書記官をしている丸眼鏡のザック・ギルバートにグイグイ迫り、若干彼を怯えさせていた。

 そのやりとりがまた面白くて、ダニエルはニヤニヤしながらブランデーやウィスキーなど、強い酒を飲み干す。

「そろそろ出ましょ」
 アリの先導で、四人は席を立った。

 ダニエルは自分が飲んだ分の酒代の金貨をテーブルに置いたが、連れの男に断られてしまう。
「おごらせて」と言われ好意を受けたが、これは断っておいたほうが無難なパターン!?
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