上 下
79 / 102

【53】嫉妬 ー熱く闇いー

しおりを挟む
 突然、グン!と膣奥を押し上げられ、ダニエルは息が止まった。
 目の前にチカチカと星が飛ぶ、いや爆発したと言ってもいいかも。

 あまりの衝撃に下腹部からガクガクと痙攣が広がり、呼吸が乱れて、汗がブワッと吹き出した。

 突き出したサニーの肉棒と、引きつけられたダニエルの隘路が正面衝突を起こす。
 柔らかな筋肉の塊である膣は、滾る血液が詰まった肉棒に串刺しにされ、地面に落ちた果実の如くグニャリと形を変えた。


「さっきの男、誰デスか」

 サニーはまた膣奥を捏ね回す。
 さわさわと膣襞を撫で、甘やかすような動きだ。

 ……さっきの男?
 しまった!男と歩いてたのを見られたんだった。

 あれを見て、勘違いしたのかな。
 ダニエルは早口で「しら、ない!」と答えた。

「ん”んっ!、っん……」
 再度グン!と膣奥を強く押し上げられ、ダニエルは呻き声をだした。

 痛みはない、逆にすごくきもちがいい。
 快楽の衝撃が全身を貫き、脳まで痺れた。

「へぇ、知らない男に腰を抱かれるんだ?」

 サニーの声音に、初めて軽い女ビッチと侮蔑の色が浮かぶ。
 矛盾しているが、ダニエルの心がえぐられた。

 事実、アリャーリャ村では遊び慣れた軽い女だったし、後腐れない遊び人をバーで物色していた。
 いまさら誰とでもヤる女だと思われても、別に構わないはずだ。

 しかし、ダニエルは必死になって違うと訴えた。

「そんなんじゃない!あの人とは……酒場で話しただけっ!なにもないっ!!」

 別に誰だっていいでしょ。
 なんでアンタに責められなきゃいけないのよ。
 一回寝ただけで、彼氏ヅラしないで。

 今までの男なら、そう切り捨てられた。
 だがサニーにはそれができない。

 ダニエルの心が、誤解されたくないと叫んでいた。


「でも二人で歩いてたよね?どこへ行くつもりだったの?」

 サニーは飄々とした声のまま、しかし瞳はギラギラと冴えている。
 反面、肉棒はダニエルの膣奥を撫でるように優しく揺った。

「別の酒場に行こうって……」

 焦る感情とは裏腹に、ダニエルの理性が冷静に分析する。
 飴と鞭を交互にふるわれ、尋問されてるみたいだと。

 今夜の彼は、アリャーリャ村での彼とは何かが決定的に違った。
 ダニエルを見つめる眼差しが、より熱くよりくらい。
 彼の作り出した真っ暗な牢獄に、炎の鎖で縛られてるようだ。


「ホテルにいくつもりだったんじゃないの?」
「違う!少し飲んだら、解散するつもりだった!」

 どうしてこんなに言い訳しているんだろう。
 ダニエルは情けなくなり、ジワリと視界に涙が滲んだ。
 けれど、勝手に口が動くんだから仕方ない。

「……んゃぅ!」

 また腰を引かれ、膣奥を強く突かれる。
 襲ってくる衝撃に、視界が一瞬白く染まった。

「本当かなぁ?俺がいなきゃ、あの男のモノをくわえてたんじゃないの」
「……っ!!」

 堪らず、ダニエルの大きな瞳から涙が零れ落ちる。
 頬を伝う熱い涙に、堪忍袋の緒がブチっと切れた。


 石造りの建物アパルトマンに囲まれた路地裏に、バシッと鈍い音が響く。

 ダニエルは男の横っ面を思い切り張り手した。
 最初の猫パンチどころじゃない。
 怒りに任せ、力の限りぶん殴ってやった。

 殴られた衝撃で彼の顔がわずかに反れ、オールバックにしていた前髪が乱れ落ち、頬は赤くなっている。

「……っく、ひっく、うっ!」

 喉が震え、ダニエルはしゃくり上げた。
 頬の上を涙の粒がポロポロと落ちていく。

 こみ上げてくる怒りやら悔しさやらで、感情がグチャグチャだ。
 けれどダニエルを最も泣かせたのは、理解してもらえない悲しみだった。


 ダニエルは唇をへの字にして、サニーを睨む。
 ゆったりした仕草で、サニーは此方へ顔を向けた。
 冷静になったのか、さっきまでの闇さは消えている。

 ただただ熱い眼差しだけを注がれ、ダニエルの心と身体が熱く燃え上がる。

「…………」
「……っく、う、っ、っ」

 無言で視線を交わす。
 やがてサニーは負けマシタというように自身のひたいをダニエルのに合わせた。

「ディディ、俺のお姫様……意地悪してゴメンナサイ。嫉妬したんデス」

 青紫の瞳は優しさと愛情に満ちていて、わかってもらえたんだとホッとする。
 ホッとしたら今度は安心して、涙が止まらなくなってしまった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,876pt お気に入り:102

もふもふ好きトリマーの異世界旅~奴隷との絆で変身だ!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:883

真面目だと思っていた幼馴染は変態かもしれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:373

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:60,876pt お気に入り:3,754

兄のマネージャー(9歳年上)と恋愛する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:5

【BL-R18】敗北勇者への快楽調教

BL / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:178

処理中です...