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【63】できちゃった。 ー責任とってー
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コホンと咳払いをしたサニーは、改めてダニエルに向き直る。
お願い、余計なことは言わないで……。
眼差しでそう縋る。
きっと彼なら言いたい事をわかってくれると信じて。
そう思えるくらいの身体のお付き合いはあったはずだ。
しかし見下ろすサニーの目には、いつかみた闇い炎の影が射していて、ダニエルの胸に不協和音が鳴り響いた。
サニーはゆっくり……悪魔のように妖しく蠱惑的に微笑む。
そして真っ白な歯を輝かせ、言った。
「できちゃった。責任とって」
っで、できたって、何が!?
ダニエルは顔面蒼白になって愕然とした。
もしも男だったら、股間の金玉がヒュンと縮んだに違いない。
見守っていた者達も、サニーの謎発言に仰天している。
しかし女王陛下は事前に話を聞いていたのか、「まさか二人がそんな関係だったなんてねぇ」と、のんびりした口調で仰った。
関係なんてありません、私達、初対面です!……と今さら誤魔化せない。
先ほど、”サニー”と呼んでしまったし。
ダニエルは上官の顔色を窺った。
王子との関係を察しただろうか。
全員が恐ろしいほど厳しい表情をしており、リック分隊長はなんてことをしたんだと口をアワアワさせている。
心臓がバクバクと破裂しそうなほど強く鼓動し、水を浴びせられたかのように冷や汗が額、背中、掌に滲んだ。
ダニエルは自身の置かれたヤバい状況に頭をフル回転させ、少ない記憶領域から思い出せるだけ軍規を引っ張り出した。
帝国陸軍・軍規では、交遊関係を制限する条項はない。
しかし職務で知り得る情報を守るため、貴族と交際する場合は上司に届ける必要があったはず。
これは、今届けたことになるかしら!?
青くなるダニエルを尻目に、サニーは意気揚々と肩を抱く。
皆んなに見せびらかすみたいに。
その手を捻りたいのを、必死でこらえた。
それを見て、「二人は、どこで出会ったの?」と女王陛下が訊ねる。
「アリャーリャ村でバカンス中に出会ったんです。目が合った瞬間に恋が燃え上がり、真夏の太陽より激しく、ウフン!アハン!ズコズコ、バッコン!やりまくりましたよ…………いうなれば、私達は真実の愛に目覚めたんです」
ダニエルはギョッとしてサニーを見上げた。
女王陛下の尊いお耳に、下ネタをぶっこむなんて!
今度は羞恥で顔が真っ赤になる。
恥ずかしい、もう本当にやめてくれぇぇぇ。
だが他の者達はサニーの口から”恋”だの”愛”だの語られたので、殿下はご乱心か!?と、興味津々で耳をそばだてた。
ダニエルも呆れて開いた口が塞がらない。
博愛主義・享楽主義者の悪名高きヤリチン王子ののくせに!
さんざん女性と浮名を流してきて……今更愛とか恋とか信じられるわけないじゃない!
今朝だってホテルに置き去りにしてヤリ捨てたくせに、なにが愛よっ!!
「…………っ!」
ダウニー閣下と目が合い、身の置き場がなくてダニエルは俯いた。
あぁ、オソロシイ…これはなんの苦行ですか。
醜態を晒しただけでなく、異性関係も暴露されるなんて。
っていか、ダウニー閣下の目が猿みたいにヤリまくっただけじゃねぇかよって言ってたんだけどっ!
色欲に狂うなど言語道断って、お怒りみたいなんだけどっ!!
「まぁ、素敵ねぇ。若いっていいわねぇ」
「そういうわけで母上、ダニエルを私にください」
その一言に、ダニエルは頭が真っ白になる。
しかし次の瞬間には全身の血が逆流し、脳がキーンとするほど怒りで頭に血がのぼった。
くださいって、どういう意味?
まさか……近衛隊をクビって事!?
無理無理無理無理無理無理!
絶対いや、死んでもいや!
わざわざ女王陛下に紹介し上司の前で辱めたのは、軍を辞めさせるためだったのね!
全身が怒りと恐怖で恐慌をきたす。
唇がわなわなと震えた。
築き上げてきた足元が、音を立てて崩れ落ちていくようだ。
あの人と約束した夢が遠ざかっていく。
とはいえ、アル王子は実質軍のナンバーツーである。
ダニエルに拒否権はない。
絶望に打ちひしがれ、ダニエルはよろめきそうになった。
皮肉なことに、そんなダニエルを支えたのはサニーの逞しい腕だ。
得意気な顔は凱旋門をくぐる英雄が如く雄々しい。
きっと、誰もが喜んで愛妾になると疑ってないのだろう。
だがダニエルにとっては、将来を潰す悪魔である。
コイツまじで、なんなのよっ!!
もう一度その横っ面を叩けたら、どんなにいいか。
後腐れない軽そうな人だと思ったから、手を出したのに。
お互いに遊びと割り切った大人の関係だったはず。
それなのに、こそこそ身辺を調べ回って、監視して。
しまいには、仕事をやめて愛人になれって。
横暴すぎる……これってルール違反よ。
とんだメンヘラ地雷ストーカー野郎だわ。
お願い、余計なことは言わないで……。
眼差しでそう縋る。
きっと彼なら言いたい事をわかってくれると信じて。
そう思えるくらいの身体のお付き合いはあったはずだ。
しかし見下ろすサニーの目には、いつかみた闇い炎の影が射していて、ダニエルの胸に不協和音が鳴り響いた。
サニーはゆっくり……悪魔のように妖しく蠱惑的に微笑む。
そして真っ白な歯を輝かせ、言った。
「できちゃった。責任とって」
っで、できたって、何が!?
ダニエルは顔面蒼白になって愕然とした。
もしも男だったら、股間の金玉がヒュンと縮んだに違いない。
見守っていた者達も、サニーの謎発言に仰天している。
しかし女王陛下は事前に話を聞いていたのか、「まさか二人がそんな関係だったなんてねぇ」と、のんびりした口調で仰った。
関係なんてありません、私達、初対面です!……と今さら誤魔化せない。
先ほど、”サニー”と呼んでしまったし。
ダニエルは上官の顔色を窺った。
王子との関係を察しただろうか。
全員が恐ろしいほど厳しい表情をしており、リック分隊長はなんてことをしたんだと口をアワアワさせている。
心臓がバクバクと破裂しそうなほど強く鼓動し、水を浴びせられたかのように冷や汗が額、背中、掌に滲んだ。
ダニエルは自身の置かれたヤバい状況に頭をフル回転させ、少ない記憶領域から思い出せるだけ軍規を引っ張り出した。
帝国陸軍・軍規では、交遊関係を制限する条項はない。
しかし職務で知り得る情報を守るため、貴族と交際する場合は上司に届ける必要があったはず。
これは、今届けたことになるかしら!?
青くなるダニエルを尻目に、サニーは意気揚々と肩を抱く。
皆んなに見せびらかすみたいに。
その手を捻りたいのを、必死でこらえた。
それを見て、「二人は、どこで出会ったの?」と女王陛下が訊ねる。
「アリャーリャ村でバカンス中に出会ったんです。目が合った瞬間に恋が燃え上がり、真夏の太陽より激しく、ウフン!アハン!ズコズコ、バッコン!やりまくりましたよ…………いうなれば、私達は真実の愛に目覚めたんです」
ダニエルはギョッとしてサニーを見上げた。
女王陛下の尊いお耳に、下ネタをぶっこむなんて!
今度は羞恥で顔が真っ赤になる。
恥ずかしい、もう本当にやめてくれぇぇぇ。
だが他の者達はサニーの口から”恋”だの”愛”だの語られたので、殿下はご乱心か!?と、興味津々で耳をそばだてた。
ダニエルも呆れて開いた口が塞がらない。
博愛主義・享楽主義者の悪名高きヤリチン王子ののくせに!
さんざん女性と浮名を流してきて……今更愛とか恋とか信じられるわけないじゃない!
今朝だってホテルに置き去りにしてヤリ捨てたくせに、なにが愛よっ!!
「…………っ!」
ダウニー閣下と目が合い、身の置き場がなくてダニエルは俯いた。
あぁ、オソロシイ…これはなんの苦行ですか。
醜態を晒しただけでなく、異性関係も暴露されるなんて。
っていか、ダウニー閣下の目が猿みたいにヤリまくっただけじゃねぇかよって言ってたんだけどっ!
色欲に狂うなど言語道断って、お怒りみたいなんだけどっ!!
「まぁ、素敵ねぇ。若いっていいわねぇ」
「そういうわけで母上、ダニエルを私にください」
その一言に、ダニエルは頭が真っ白になる。
しかし次の瞬間には全身の血が逆流し、脳がキーンとするほど怒りで頭に血がのぼった。
くださいって、どういう意味?
まさか……近衛隊をクビって事!?
無理無理無理無理無理無理!
絶対いや、死んでもいや!
わざわざ女王陛下に紹介し上司の前で辱めたのは、軍を辞めさせるためだったのね!
全身が怒りと恐怖で恐慌をきたす。
唇がわなわなと震えた。
築き上げてきた足元が、音を立てて崩れ落ちていくようだ。
あの人と約束した夢が遠ざかっていく。
とはいえ、アル王子は実質軍のナンバーツーである。
ダニエルに拒否権はない。
絶望に打ちひしがれ、ダニエルはよろめきそうになった。
皮肉なことに、そんなダニエルを支えたのはサニーの逞しい腕だ。
得意気な顔は凱旋門をくぐる英雄が如く雄々しい。
きっと、誰もが喜んで愛妾になると疑ってないのだろう。
だがダニエルにとっては、将来を潰す悪魔である。
コイツまじで、なんなのよっ!!
もう一度その横っ面を叩けたら、どんなにいいか。
後腐れない軽そうな人だと思ったから、手を出したのに。
お互いに遊びと割り切った大人の関係だったはず。
それなのに、こそこそ身辺を調べ回って、監視して。
しまいには、仕事をやめて愛人になれって。
横暴すぎる……これってルール違反よ。
とんだメンヘラ地雷ストーカー野郎だわ。
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