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【68】出発 ① ー冒険が待っているー

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 抱き締めてくれる腕と身体が暖かい。
 チークを踊るように「よしよし」とあやされ、心地よさでダニエルの心が凪いでいく。

 ふと、こんな風に甘やかしてもらったのはいつぶりだろうと苦しくなる。

 ダニエルが寂しい時、手を握ってくれたのはだった。
 彼以外に、ダニエルに寄り添ってくれる人はいなかった。
 その事実に別の涙が滲んだ。


 頬を滑り落ちる涙を、サニーはペロっと舐めた。

「ん、しょっぱい。俺のお姫様、あまり泣くと俺の暴れん坊の息子が反応しちゃうんで…………っ痛でっ!!」

 ダニエルはブーツの踵でサニーの足の甲を踏んづける。

 コイツ、全然反省してないっ!
 ていうか、噂通りシモのことばかりなのね。
 女の敵!許すまじっ!!!

 続けざまに、ガシガシとすねを蹴っ飛ばす。
 クライン執務官にバレたら雷を落とされるだろうけど、もう知ったこっちゃねぇ。

「うわっ!!な、なに…痛ぇっ!」

 ダニエルは山猿のようにサニーに飛びついた。
 サニーは勢いで座席に尻餅をつき、後頭部を座席の縁にぶつける。

「た、タンマ……」

 座席に追い詰められた彼は、なんとかダニエルを落ち着かせようとした。
 しかしビーストモードに突入したダニエルは誰にも止められない。

 ダニエルは「うがぁぁぁ!」と雄叫びをあげ、サニーの頬っぺたに噛み付いた。


「……!!!…………っ、あのぉ」
「うゔさい、ふ”ぉゔぉふぉふぉあある(うるさい、こうしてヤる)!」

 別にどこだってよかった。
 頬が目についたので、怒りのまま噛み付いただけだ。

「……猟奇的デスね、ぐっときマス」

 だがしかし、それは彼を喜ばせただけだということに、ダニエルは気づかない。

 サニーはうっとり目を細めた。
 時々、本気で噛まれて皮膚がギリギリされるのが、胸の高鳴りと相まって気持ちイイ。

 うぅ~ん、これはなかなか……新しい扉が開けそう。
 ダニエルに睨まれ、感情を殺し殊勝しゅしょうな顔をしてみせる。

 が、オッパイは腕に当たるし、膝の上に乗られてムチムチの太腿を感じるしで、ドキドキして口元がニヤけてしまう。


「痛っ、今度は手デスか……」

 怒り故の行動が、実は彼の新しい性癖を開発してるだなんて露ほども思わないダニエルは、サニーの腕をとり手の甲にガジガジと噛み付いた。

「ディディ、怒って逆三角形になったお目々も可愛いね」

 サニーはダニエルの頭にチュッとキスをした。
 こめかみに、頬に、鼻先に。
 思いを込めて贈るキスは、確実にダニエルをほだしていく。
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