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【68】出発 ② ー冒険が待っているー
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心ゆくまで肌を噛み皮膚に歯型を残したダニエルは、唐突に飽きた。
一体自分は何をしているんだと我に返り、サニーの手をポイと投げ捨てる。
そして立ち上がろうと座席に膝をついたが、一歩先にサニーの腕が腰に回り押し留められた。
「もういいの?もっと噛んでいいよ?」
……なんで噛んでほしそうなのよ。
マゾっ気も持ち合わせてるなんて、変態の鏡ですな。
「んー、もういいや」
「それじゃあ、ご機嫌は直った?」
釈然としないけど、さっき迄の怒りはきれいさっぱり消えている。
「これで勘弁してあげるわ」
「…………」
ダニエルはいつもの調子でツンとした態度をとった後、彼がこの国の第三王子で上司で、護衛対象者であることを思い出した。
「げっ!あ……殿下、申し訳ありません」
またやっちまったと顔を強張らせるダニエルに、サニーは吹き出す。
「ふぁははは!いやぁ、やっっぱりディディは最高だよ。いいの、いいの!」
怒るどころか更に破顔して、サニーはダニエルの頬にムチュ、ムチュと唇を押し当てた。
そして甘えるように擦り擦りと頬を寄せてくる。
「二人きりの時は、そのままのディディでいてよ。俺のこともサニーって呼んで」
「しかし殿下……」
チュッと唇に柔らかな感触が訪れた。
「殿下って言ったら、キスするからネ」
「…………言わなくてもするんじゃないの?」
「ご名答、流石はディディだ。俺のことはなんでもお見通しだネ」
「……んッ」
しっとりと柔らかな感触を楽しむように、サニーは丹念に唇を合わせてくる。
欲望を刺激するものではなく、愛情を交わすようなキス。
あぁ、やっぱりサニーのキスは気持ちがいい。
胸がドキドキしふわふわ宙へ飛び立てそうな感覚に、ダニエルはうっとり酔いしれる。
彼の膝から立ち上がろうとしていたことも忘れて、夢中になってキスを交わした。
とその時、耳を劈く汽笛音が辺りに響いた。
「ーーー出発だ」
サニーの言葉に、ダニエルは不敵に微笑んだ。
どういう思惑で護衛をさせるのかは知らないけれど、踏み台にしてやるんだから、みてなさいよ!
一方のサニーも、その挑むような笑みを真正面から受け止め、唇の端をニヤリと引き上げた。
二人の間に激しい火花が散る。
あの夏の日に散らした情欲の火花は、ずっと燃え続けている。
それに野望と恋心が加わり、これから二人はどうなるのだろう。
ちょっぴり不安で、でもワクワクする冒険が待っているような気がする。
ダニエルが瞼を閉じ首を傾けると、すぐにサニーの唇の温もりが戻ってきた。
その温もりを感じながら、ガタンゴトンと列車に揺られる。
二人を乗せた蒸気機関車は、真っ黒な煙を秋空に吐き出しながら西へ西へと走り出したのだった。
【了】
一体自分は何をしているんだと我に返り、サニーの手をポイと投げ捨てる。
そして立ち上がろうと座席に膝をついたが、一歩先にサニーの腕が腰に回り押し留められた。
「もういいの?もっと噛んでいいよ?」
……なんで噛んでほしそうなのよ。
マゾっ気も持ち合わせてるなんて、変態の鏡ですな。
「んー、もういいや」
「それじゃあ、ご機嫌は直った?」
釈然としないけど、さっき迄の怒りはきれいさっぱり消えている。
「これで勘弁してあげるわ」
「…………」
ダニエルはいつもの調子でツンとした態度をとった後、彼がこの国の第三王子で上司で、護衛対象者であることを思い出した。
「げっ!あ……殿下、申し訳ありません」
またやっちまったと顔を強張らせるダニエルに、サニーは吹き出す。
「ふぁははは!いやぁ、やっっぱりディディは最高だよ。いいの、いいの!」
怒るどころか更に破顔して、サニーはダニエルの頬にムチュ、ムチュと唇を押し当てた。
そして甘えるように擦り擦りと頬を寄せてくる。
「二人きりの時は、そのままのディディでいてよ。俺のこともサニーって呼んで」
「しかし殿下……」
チュッと唇に柔らかな感触が訪れた。
「殿下って言ったら、キスするからネ」
「…………言わなくてもするんじゃないの?」
「ご名答、流石はディディだ。俺のことはなんでもお見通しだネ」
「……んッ」
しっとりと柔らかな感触を楽しむように、サニーは丹念に唇を合わせてくる。
欲望を刺激するものではなく、愛情を交わすようなキス。
あぁ、やっぱりサニーのキスは気持ちがいい。
胸がドキドキしふわふわ宙へ飛び立てそうな感覚に、ダニエルはうっとり酔いしれる。
彼の膝から立ち上がろうとしていたことも忘れて、夢中になってキスを交わした。
とその時、耳を劈く汽笛音が辺りに響いた。
「ーーー出発だ」
サニーの言葉に、ダニエルは不敵に微笑んだ。
どういう思惑で護衛をさせるのかは知らないけれど、踏み台にしてやるんだから、みてなさいよ!
一方のサニーも、その挑むような笑みを真正面から受け止め、唇の端をニヤリと引き上げた。
二人の間に激しい火花が散る。
あの夏の日に散らした情欲の火花は、ずっと燃え続けている。
それに野望と恋心が加わり、これから二人はどうなるのだろう。
ちょっぴり不安で、でもワクワクする冒険が待っているような気がする。
ダニエルが瞼を閉じ首を傾けると、すぐにサニーの唇の温もりが戻ってきた。
その温もりを感じながら、ガタンゴトンと列車に揺られる。
二人を乗せた蒸気機関車は、真っ黒な煙を秋空に吐き出しながら西へ西へと走り出したのだった。
【了】
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