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【40】教祖 〜若いのね〜
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「まず財政状況ですが、准尉やポーラ君の言うとおり、マッキニー男爵は商会や銀行より多額の借金をしていました。借金を借金で返す所謂自転車操業で、准尉の給与で利子を相殺してる現状です」
「借金はどれくらい膨れ上がっているんだ?」
サニーの問いに、「一〇〇フリンほど」とカイルが答える。
フリンはマッシリーニ大帝国の通貨単位で、一〇〇フリンはダニエルの三年分の年棒になる。
実家が抱える多額の負債に、ダニエルは目の前が真っ暗になった。
「使い道はなんでしょう?」
「不明です、クライン執務官。おそらくロンド教に流れているのではないかと。今ポーラ君が探ってます」
「写真は撮れましたか」
「えぇ、苦労しましたよ。隊員を新聞記者に変装させて男爵家へ送り込みましたが、マッキニー男爵は人間嫌いで顔を見せないし。教祖様はもっと顔をみせません。取材と称して少々強引に突撃してようやく撮れました」
カイルは応接室のローテーブルに白黒写真を並べた。
「まずはシシェック・マッキニー男爵、その妻のミランダ夫人」
写真の中の父はもみあげから繋がった髭を胸のあたりまで鬱蒼と生やし、目下の縮緬皺が暗い影をつくっていた。
頬は痩け、どこからどう見ても健康そうには見えない。
母も先日会った以来だが、白黒写真だと実物よりもずっと年老いてみえた。
「そして末妹のキャサリン・マッキニー」
少女は可憐で、白黒写真の中でも美しく輝いている。
「おぉ、美少女!!」
「マッキニー准尉とは似てませんね。ポーラ君に似てるかな」
嬉しそうなサニーの反応にイラッとしたが、ダニエルなんとか胸の内に押しとどめた。
妹が可愛いのなんか疾うの昔から知っていること。
今更ながらサニーの反応にヤキモチ焼くなんて我ながら子どもっぽい。
「で、男爵を意のままに操っているのがティアゴ・ダロッチャ。こいつがロンド教北西部を統括している教祖です」
全員が白黒写真を覗き込む。
「……若いのね」
白髭を蓄え聖書を手にした牧師のような人物を予想していたので、ダニエルは驚いた。
歳は四十代くらい、中肉中背で焦茶色の短髪。
掘りは少し深く、目つきは鋭いが、鼻と唇の形は悪くなく、第一印象はイケオジだった。
サニーやクライン執務官のようにたじろぐほどの美貌ではないし、街中では何処にでもいそうな男だけど、よくよく見れば悪くない顔をしている。
「マッキニー男爵領に現れる前の足取りは、現在調査中です」
「なるべく急いでネ」
「かしこまりました」
ユージンは主人の命に頷いた。
「借金はどれくらい膨れ上がっているんだ?」
サニーの問いに、「一〇〇フリンほど」とカイルが答える。
フリンはマッシリーニ大帝国の通貨単位で、一〇〇フリンはダニエルの三年分の年棒になる。
実家が抱える多額の負債に、ダニエルは目の前が真っ暗になった。
「使い道はなんでしょう?」
「不明です、クライン執務官。おそらくロンド教に流れているのではないかと。今ポーラ君が探ってます」
「写真は撮れましたか」
「えぇ、苦労しましたよ。隊員を新聞記者に変装させて男爵家へ送り込みましたが、マッキニー男爵は人間嫌いで顔を見せないし。教祖様はもっと顔をみせません。取材と称して少々強引に突撃してようやく撮れました」
カイルは応接室のローテーブルに白黒写真を並べた。
「まずはシシェック・マッキニー男爵、その妻のミランダ夫人」
写真の中の父はもみあげから繋がった髭を胸のあたりまで鬱蒼と生やし、目下の縮緬皺が暗い影をつくっていた。
頬は痩け、どこからどう見ても健康そうには見えない。
母も先日会った以来だが、白黒写真だと実物よりもずっと年老いてみえた。
「そして末妹のキャサリン・マッキニー」
少女は可憐で、白黒写真の中でも美しく輝いている。
「おぉ、美少女!!」
「マッキニー准尉とは似てませんね。ポーラ君に似てるかな」
嬉しそうなサニーの反応にイラッとしたが、ダニエルなんとか胸の内に押しとどめた。
妹が可愛いのなんか疾うの昔から知っていること。
今更ながらサニーの反応にヤキモチ焼くなんて我ながら子どもっぽい。
「で、男爵を意のままに操っているのがティアゴ・ダロッチャ。こいつがロンド教北西部を統括している教祖です」
全員が白黒写真を覗き込む。
「……若いのね」
白髭を蓄え聖書を手にした牧師のような人物を予想していたので、ダニエルは驚いた。
歳は四十代くらい、中肉中背で焦茶色の短髪。
掘りは少し深く、目つきは鋭いが、鼻と唇の形は悪くなく、第一印象はイケオジだった。
サニーやクライン執務官のようにたじろぐほどの美貌ではないし、街中では何処にでもいそうな男だけど、よくよく見れば悪くない顔をしている。
「マッキニー男爵領に現れる前の足取りは、現在調査中です」
「なるべく急いでネ」
「かしこまりました」
ユージンは主人の命に頷いた。
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