女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません！！〜

【39】闘犬 〜血気盛ん〜

今までのように殿下に近づく女豹は優秀な家令ユージンに排除されると思っていたが、二人の関係は着実に縮まっている。

「中佐からも窘めてください。殿下もマッキニー准尉も好きあらばイチャつくし。准尉は日増しに図々しさを増すし」

ユージンは苦虫を噛み潰したように悔しそうだ。


「そういえば、聞いたぞ……近衛隊員と喧嘩したんだってな」

カイルは咎めるような口調でダニエルに訊ねた。



「もぉ、誰よ！中佐にチクった奴！」

ダニエルは恥ずかしさで紅潮する。


「すごかったんですよ。お互い喧々囂々けんけんごうごうで怒鳴りあって。引き離されてもやめないし」

ユージンも呆れたような視線を寄越し、ダニエルは「だって……」と口ごもる。


冷たい視線、ヒソヒソ陰口。

嫌われてアタシ辛い……と静かに涙を流すようなダニエルではない。


「”伯爵のベッドに潜り込む娼婦”とか、”男好きのヤリマン、ブスが調子にのるな”とか言われたんですもん。それも面と向かって！！陰口なら無視したけど。直接きたんで、やってやろうじゃないってなりますよね！？」

「…………」


「意外に血気盛んなんですよ、マッキニー准尉は」

ユージンがカイルにコソッと耳打ちした。



「それで言ってやったんです。”悔しかったら、奪ってみろ！！”って」

「”殿下を勃起させられないくせに～！”とか、”魅力がないのをひがむな、バァカ！！”とか叫んでたらしいですよ」

「ぼっ、ぼっき…ウワァハハハハ！……ッヒッ！アハハハハハハ！！」


サニーはソファーの肘掛けに顔を突っ伏し爆笑する。

ダニエルは拳をプルプル震わせた。


はず、恥ずかしい！！

穴があったら入りたい、いや、隠れたい。

せっかく伏せて話したのに、ユージンに全部暴露されてしまった。


「その場に居合わせた者の話では、キャットファイトではなくピットブルが闘ってるようだったそうですよ」

「アハハハハハハ、ピッ！、ト！、ブル！！」

「闘犬種か、なかなかやるな。マッキニー准尉」


「と、うけん、しゅ！アハハハハハ！！」

「サニー！笑いすぎ！！」

ダニエルは下唇を突き出し、サニーの肩をビシバシと叩いた。


「ごめん、ごめん！」

不機嫌になられては困ると、サニーはダニエルの拳を受けながら腰を引き寄せる。

そして腕の中に大事そうに仕舞い込んだ。

ダニエルにとっては大男に羽交締めにされてる状況だが、傍目からは恋人同士がイチャついてるようにしか見えない。


「はい、そこっ！二人の世界に入らない。そろそろ中佐の報告を聞きましょう」

なかなか先に進まないので、仕方なくユージンはカイルに促した。