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【45】作戦 〜金の生る木〜
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「情報提供ありがとうございます」
「それで……今後の作戦はどうなるんですか?」
ダニエルが訊ねると、サニーとユージンは顔を見合わせた。
サニーの”話してやれ”という圧に負け、ユージンは渋々口を開く。
「背後関係と逃走ルートを特定した後、乗り込んで逮捕します」
「逮捕……罪名はなにになるんでしょうか?」
「薬物取締法違反で引っ張りたいですね」
「彼らが禁止薬物を使っている現場を押さえればいいのね!」
「麻薬を使ってるところが望ましいな。一発で牢屋行きだ」
「えぇ。今のところ一番危険で可能性があるのはポーラ君です」
「なっ!」
ユージンの提案にダニエルは驚愕した。
「彼らにとってポーラ君は目の上のたん瘤。マッキニー男爵を手中に収めたのに、嫡子にしゃしゃり出てこられたら、金を巻き上げられませんからね」
「仰る通りです、クライン執務官。彼を一人にせぬよう我々でカバーしていますが、ティアゴ・ダロッチャは事ある毎にポーラ君に接触をはかってきてます」
「ワトソン少尉にはどうだ?彼にも懐柔を試みてるか?」
「はい、少尉も男爵貴族を装ってますから。奴等にとっては手に入れたい金の生る木です。もっぱら信徒の女を寄越すという古典的な手を使ってくるので、あしらうのは容易いことですが」
「金の生る木……か」
サニーは何かを考え込んだ。
「それなら逆にその女達から情報を抜けそうですね」
「はい。ポーラ君には難しいかもしれませんが、ワトソン少尉なら内通者にできるでしょう。既に何名かは此方の味方にしております」
ダニエルは複雑な気持ちになった。
恋愛感情を利用して情報戦を制すのは常套手段だが、女として惚れた男に弱くなってしまう心理はよくわかる。
特に最近は……惚れたほうが負けって言葉を身に染みて感じる。
「よし、教祖ティアゴ・ダロッチャ、ナンバーツーのジョン・ダマー、ナンバースリーのベラ・ウェインの周囲から”金品搾取”の証言が取れた後、拘束に踏み切ろう」
「しかし殿下。拘束する際には裁判で逃げられるぬよう、確実な罪状がほしいです。やはり囮が必要でしょう」
”囮”という言葉に、ダニエルは息を呑む。
まさか……ポーラをその役に使うつもりだろうか。
「クライン執務官!ポーラを囮にするつもりですか!?あの子は民間人です。弟を囮にするくらいなら、あたしが……」
ダニエルはユージン・クラインに飛びかかる勢いだ。
なんとしても阻止してやるという気概が全身から満ちてる。
サニーはその肩を掴んでソファーの背もたれに引き戻した。
「まぁまぁ、ディディ。そんなに興奮しないで。ポーラ君より、もっとでっかい釣り針をたらせばいいんじゃない?」
「もっと……でっかい……釣り針?」
ダニエルの反復にサニーは不敵に笑い、なんだか嫌な予感がした。
「それで……今後の作戦はどうなるんですか?」
ダニエルが訊ねると、サニーとユージンは顔を見合わせた。
サニーの”話してやれ”という圧に負け、ユージンは渋々口を開く。
「背後関係と逃走ルートを特定した後、乗り込んで逮捕します」
「逮捕……罪名はなにになるんでしょうか?」
「薬物取締法違反で引っ張りたいですね」
「彼らが禁止薬物を使っている現場を押さえればいいのね!」
「麻薬を使ってるところが望ましいな。一発で牢屋行きだ」
「えぇ。今のところ一番危険で可能性があるのはポーラ君です」
「なっ!」
ユージンの提案にダニエルは驚愕した。
「彼らにとってポーラ君は目の上のたん瘤。マッキニー男爵を手中に収めたのに、嫡子にしゃしゃり出てこられたら、金を巻き上げられませんからね」
「仰る通りです、クライン執務官。彼を一人にせぬよう我々でカバーしていますが、ティアゴ・ダロッチャは事ある毎にポーラ君に接触をはかってきてます」
「ワトソン少尉にはどうだ?彼にも懐柔を試みてるか?」
「はい、少尉も男爵貴族を装ってますから。奴等にとっては手に入れたい金の生る木です。もっぱら信徒の女を寄越すという古典的な手を使ってくるので、あしらうのは容易いことですが」
「金の生る木……か」
サニーは何かを考え込んだ。
「それなら逆にその女達から情報を抜けそうですね」
「はい。ポーラ君には難しいかもしれませんが、ワトソン少尉なら内通者にできるでしょう。既に何名かは此方の味方にしております」
ダニエルは複雑な気持ちになった。
恋愛感情を利用して情報戦を制すのは常套手段だが、女として惚れた男に弱くなってしまう心理はよくわかる。
特に最近は……惚れたほうが負けって言葉を身に染みて感じる。
「よし、教祖ティアゴ・ダロッチャ、ナンバーツーのジョン・ダマー、ナンバースリーのベラ・ウェインの周囲から”金品搾取”の証言が取れた後、拘束に踏み切ろう」
「しかし殿下。拘束する際には裁判で逃げられるぬよう、確実な罪状がほしいです。やはり囮が必要でしょう」
”囮”という言葉に、ダニエルは息を呑む。
まさか……ポーラをその役に使うつもりだろうか。
「クライン執務官!ポーラを囮にするつもりですか!?あの子は民間人です。弟を囮にするくらいなら、あたしが……」
ダニエルはユージン・クラインに飛びかかる勢いだ。
なんとしても阻止してやるという気概が全身から満ちてる。
サニーはその肩を掴んでソファーの背もたれに引き戻した。
「まぁまぁ、ディディ。そんなに興奮しないで。ポーラ君より、もっとでっかい釣り針をたらせばいいんじゃない?」
「もっと……でっかい……釣り針?」
ダニエルの反復にサニーは不敵に笑い、なんだか嫌な予感がした。
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