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【81】後悔 〜絶対に絶対に許せない〜
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ふと、ラスティーの背後に雪にまみれたダスティンの姿が見えた気がした。
血の気がなく、唇も肌も灰色で、幽霊のようだ。
光を失った瞳が、じっとダニエルを見ている。
その瞳が、助けてと言っている。
ダスティンの隣には幼い頃の自分も居て、憎しみの篭った瞳でダニエルを睨みつけている。
真っ赤な唇が徐に開き、呪いの言葉を吐く。
元凶はおまえだ!
おまえがダスティンを殺したんだ!!
それなのに加害者のおまえが悲劇のヒロインみたいに涙を流すのか!!!
ダニエルは思わず視線を反らせた。
泣くのはダメだとわかっているが、感情がままならず、涙を止める事ができない。
「……狡いぞ、ダニー。泣かれたら、何も言えなくなる」
「……私がダスを死に追いやったのよ。私のせいでダスはあんな場所で……」
「ダニー、何度も言ってるだろ。あの事故は君のせいじゃない。俺も親父達も、誰も君のせいだなんて思っていない。いい加減、自分を許すべきだ。いつまでも兄貴に囚われるな」
「……無理よ」
どうしてあの日、「指輪を忘れた」と口にしたんだろう。
ダスティンの性格上、「取ってくる」と言い出すのは明白なのに。
そもそもどうして指輪を忘れてしまったんだろう。
“謝っても許されない事がある“という事実に直面したのが、どうして最愛の人の死なのか。
子どもだったから、とか。
若さ故に、なんて言葉じゃ片付けられない。
「ラス……私は自分を許す事はできない」
涙が焼けるように熱く、頬を流れていった。
「例え貴方達が許すと言っても……絶対に絶対に許せないわ」
”後悔“なんて言葉じゃ足りないくらい……悔やんでいる。
「ダスの姿が視えるの」
「視える?」
ダニエルは頷いた。
「寝ても覚めても……嬉しい時も楽しい時も。ふと気がつくと、ダスの姿が眼に浮かぶの。辛そうに私を視るの。助けてくれって言うのよ」
ダニエルは机に突っ伏して嗚咽を漏らした。
「ダニー」
さっきはダニエルの手を振り払ったのに、今度はラスティーの方からダニエルの手に手を重ねギュッと握ってくれた。
「ダニー、顔を上げて。俺の目を見て」
肩を揺すられ促され、ダニエルはラスティーの目を見た。
椛茶色の瞳は兄と一緒で、檜の幹のようだ。
見つめていると、森林の中にいるような心地良さと安心感がある。
かつてはダスティンも同じような目をしていた。
生命力と情熱に溢れ、夜空に煌めく星のような瞳をしていた。
またダニエルの瞳から涙が溢れ落ちた。
血の気がなく、唇も肌も灰色で、幽霊のようだ。
光を失った瞳が、じっとダニエルを見ている。
その瞳が、助けてと言っている。
ダスティンの隣には幼い頃の自分も居て、憎しみの篭った瞳でダニエルを睨みつけている。
真っ赤な唇が徐に開き、呪いの言葉を吐く。
元凶はおまえだ!
おまえがダスティンを殺したんだ!!
それなのに加害者のおまえが悲劇のヒロインみたいに涙を流すのか!!!
ダニエルは思わず視線を反らせた。
泣くのはダメだとわかっているが、感情がままならず、涙を止める事ができない。
「……狡いぞ、ダニー。泣かれたら、何も言えなくなる」
「……私がダスを死に追いやったのよ。私のせいでダスはあんな場所で……」
「ダニー、何度も言ってるだろ。あの事故は君のせいじゃない。俺も親父達も、誰も君のせいだなんて思っていない。いい加減、自分を許すべきだ。いつまでも兄貴に囚われるな」
「……無理よ」
どうしてあの日、「指輪を忘れた」と口にしたんだろう。
ダスティンの性格上、「取ってくる」と言い出すのは明白なのに。
そもそもどうして指輪を忘れてしまったんだろう。
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子どもだったから、とか。
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涙が焼けるように熱く、頬を流れていった。
「例え貴方達が許すと言っても……絶対に絶対に許せないわ」
”後悔“なんて言葉じゃ足りないくらい……悔やんでいる。
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「視える?」
ダニエルは頷いた。
「寝ても覚めても……嬉しい時も楽しい時も。ふと気がつくと、ダスの姿が眼に浮かぶの。辛そうに私を視るの。助けてくれって言うのよ」
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「ダニー」
さっきはダニエルの手を振り払ったのに、今度はラスティーの方からダニエルの手に手を重ねギュッと握ってくれた。
「ダニー、顔を上げて。俺の目を見て」
肩を揺すられ促され、ダニエルはラスティーの目を見た。
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見つめていると、森林の中にいるような心地良さと安心感がある。
かつてはダスティンも同じような目をしていた。
生命力と情熱に溢れ、夜空に煌めく星のような瞳をしていた。
またダニエルの瞳から涙が溢れ落ちた。
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